第2回目の連載。多くの人々の行き交う渋谷で、この文章を書いている。
友人との待ち合わせをハチ公でしている女の子。
いやらしい気持ちを持ってその女の子に声をかける、流行りの服を身に纏った36歳くらいの男性。
それを見て、少しだけ怪訝な顔をしながらも、その周りにいる人間たちは見ないふりをして、三秒もしたら他の場所に目が映る。
その後友人と会った彼女の顔は、さほどその男と会った時と変わらないようにも見えた。
その男に見せた、片方の口角しか上がっていないあの顔に。
ふと周りを見渡すと、ここが情報の塊であることを実感する。
渋谷を照らす、あまりにも多すぎる広告看板は、空の全てを埋め尽くしてしまいそうで。
自然界に存在する月の光を食い荒らしている。
まあ、この「視界には入るが、見ない」というような意味のあまりない看板から発せられる光が素敵だなんてとても思えないけれど。
かよわく当たる自然の明かりの方が、よっぽど男女ないし、人間というものの「ムード」が出るものだ。
さて、今回は「恋愛と人間関係」について書きたいと思う。
恋愛やビジネス、政治にも当てはまる人間模様
冒頭に書いた渋谷を始め、人間が集まるところには様々な人間模様が垣間見える。
その中でも恋愛というものは最も複雑なものだ。
会って、一瞬で恋に落ちることもあれば、10年以上ともにいた後に気づく「愛」も存在する。
もちろん、悲しいことにその恋が叶わないことも沢山ある。
僕も「恋愛の檻」にかかったことのある一人である。
最近でこそ、落ち着いて恋愛ができるようになったが(主観的にみて)。
以前は盲目になることも多かったかもしれない。そういうものなのだろうか。
学びが最も多いのも恋愛である。人間と人間の関わりあいを究極化させたものだと僕は思っている。
どこの繁華街にいるナンパ師だって、どうやったら相手を振り向かせることができるのかを模索しつつ突っ込むはずだ。
数を撃てば当たる方式も仕事には存在することもある。
好きな人ができたとき、相手が何を考えているのか想像しまくる。
自分のことをどう思っているのか、相手の機嫌はどうか、どんな気持ちなのか。
メールの返事の早さはどのくらいか、文面を読み、全力で感情を読み取り、こちらもまた、返事の早さと中身を計算する。
これは、ビジネスでも通用する話だ。
相手の用意した企画書を読み、どんな意図で相手の気持ちを「振り向かせよう」としているのかを判断し、こちらも計算をしながら話を進めていく。技量が非常に試される瞬間だ。
大きい社会においても、この「法則」は存在する。
日本は唯一の被爆国でありながら、国連での核兵器禁止条約交渉に関する投票において、参加せず、反対に投じている。
あんなに悲しい出来事を国民単位で味わっている国でありながら、反対。
それは、とある国が反対を表明しているからだ。原爆をいまだに所有しているアメリカが。
「近くの国さん」とも板挟みになり、行き場のない日本さん。
日本さんは「とある国さん」「近くの国さん」に嫌われたくないのだ。
好きでいてほしい。そう願っている。
そして、上手い具合の立ち位置で“事”を進めたいのだ。
そんなふうに、人間的な感情が最大限に発揮される恋愛は、どんなに大きなものにも当てはめられるのだ。
恋愛から人間としての営みを学んでいる
途中でネガティブな例えを出してしまったが、恋愛はいいものだ。
恵比寿寄りの渋谷のサイゼリヤで打ち合わせをしていたとき、
とある編集者は「恋愛って、軽く見られがちですよね、トピック的に」と言っていた。
そんなこと、ないのだ。
僕らは恋愛から人間としての営みを学ぶ。
関わりを通して人の痛みや喜び、悲しみや苦しみさえ覚えるのだ。その様々な感情を自らが受けるのか、相手が受けるのかはわからないけど。
時間が経てばわかることもあると知る。
ハリネズミがコミュニケーションを取るとき、互いの針が刺さらないように少しずつ距離感を理解しながら接する。
そんな風に、人間も、人との距離のはかり方を自らの心の“物さし”で計測するのだ。
その距離感というものを作れないことが多い。僕もその一人だ。きっと、これからもそうであろう。
他のコラムでも使った例えだが、みんな、物差しの長さが違うのだ。
たくさんの人と関わるうちに「絶対に人間を傷つけない」であろう、不確かな自分の中での距離感を覚えるのだ。無意識に。
でも、それも寂しい気もする。傷つくことから生まれるものも、セックスから生まれるものもあると信じている。(アセクシュアル などの無性愛者の方には申し訳ない話になってしまうが)
少なくとも、僕はそこから学んだことがたくさんある。
僕も実は今好きな人がいる。いろんな恋愛もあったが、その人は出会って運命的な感覚に襲われた。
会って6時間で告白して、5月からともに過ごす。まだ、付き合っていないけど。
彼から、たくさんのことを学んでる。
好きなこと、どんな関わり方をしているのか。彼の生き方、過ごし方。
まだ、出会ったばかりだからこそ吸収できている。ここから「愛」に変わるのは、時間の問題だな。と勝手に思ったりもするのだ。
惚気ました。僕は、情熱タイプだから。
きっと、僕もこの「距離感」で傷つくことも沢山、これから経験するかもしれない。今までより沢山。
だけど、思いや感覚、やり方を伝えずに傷つかないで生きるくらいなら、僕は死んだ方がマシだ。
自由に生きて、自由に泣いて、自由に笑って、自由に愛して。
その後、苦しいことを誰かと一緒に考えたらいい。僕の中の物差しが、計測してくれているはず。
もっともっと、この道は進めるって。
この、あの街のような眩いばかりのネオンだらけの人生に行き止まりなんかない。
またね。
清水文太
Bunta Shimizu(清水文太)
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19歳にして水曜日のカンパネラのツアー衣装を手がけ、モデルとしてdoubletやMIHARA YASUHIROのショーにも出演。その活動の他にも『装苑』やウェブマガジンでのコラム執筆の他、渋谷TSUTAYAでのデザインディレクション、ギャラリーでのアート展示などを開催。スチャダラパーBose・ファンタジスタさくらだ夫妻、千葉雄大などのスタイリングも。
88rising所属JojiとAirasiaのタイアップMVにも出演。
RedbullMusicFesでのDJ出演や、ライブ出演など音楽活動にも精力的に活動を始めている。
アーティストとして多岐にわたる活躍を見せている。