残業なんて時代遅れ。頑張らない「美学」

2016.10.18

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深夜でも煌々と光る蛍光灯のもとで、「一生懸命働く」姿がカッコいいとされていた、高度経済成長期。そして現代。上手に頑張らないことが人々の憧れとなっている。

社長があえて見せる、「OFFの姿」

有名人の私生活を垣間見ることができる、SNS。そこで、今話題となっている一人の男性がいる。それはとある企業の社長、イタリア出身のジャンルカ・ヴァッキである。彼が毎日のようにInstagramにアップしているのは、見るからに華やかな私生活。ウン千万はするであろう高級車にまたがったり、全身のタトゥーを見せびらかしながら美女たちと船の上で踊ったりしている様子である。

49歳になる彼であるが、若い奥様らとともに大いに人生を楽しむ様子は、多くの人々の注目を浴びる結果となった。彼の会社は薬やお茶などのパッケージを包む機械をつくる会社。ヨーロッパのみならず、近年ではアジアにも進出している大会社で、現在は3,000人を超える従業員を抱える。しかし彼は、社長だからといって仕事ばかりをして「頑張っています」アピールはしない。多くの人がしているようにONとOFFを使い分けているだけではなく、さらにそのOFFの姿も見せているのだ。だが、それに対する社内の批判は少ない。むしろ「楽しい暮らし」を見せる彼のことを憧れに思う社員が多いという。

プライベートのための早退「大歓迎」!

また、日本にもジャンルカを上回るような面白い社長がいる。『ロバート・ウォルターズ・ジャパン』のデイビッド・スワン社長だ。

オフィスで仕事をしていると、なんとなく「部下がまだ仕事をしているから帰りづらい」だったり、「上司より先に帰るのは気が引ける」という気遣いをしてしまう人は多いはず。しかし彼の会社ではそんなことはお構いなし。むしろ、社長であるデイビット自らが「娘の友達が遊びにくるから」、「今日は娘と花火をする約束をしているから」という理由で、どんなに仕事が残っていようともサクッと帰ってしまうのだ。

『ロバート・ウォルターズ・ジャパン』には家庭を大切にする仕組みが備わっている。例えば、子育てが大変な女性は社にいなくても仕事ができるシステムがあり、自宅で仕事をすることができる。もちろんこの制度は「名ばかり」ではなく、2016年上半期のトップセールスが昨年4月に育休から復帰した女性社員が獲得したというほど機能している。また、男性社員には、子どもが産まれてから1週間の休みをとれる「パタニティ休暇」を導入し、100パーセントの取得率を達成している。

デイビッドは「楽しく仕事をしている人たちが良い結果を生み出す」を信念とし、仕事のためにプライベートを我慢することを「悪」としている。その意識が社員にも根付き、「罪悪感がなく、いつでも誰でも休める状態」が出来上がっているのだ。

「頑張ったアピール」もうやめない?

社長というとその企業のトップである。他の社員の目も考えて、仕事をして頑張っている姿を見せることをする人が多いのではないだろうか。社長に関わらず一社員も同じである。無意識のうちに「仕事が忙しい」や「昨日は徹夜だった」という言葉を発し、楽をしていることより自分が仕事を頑張っているところを見せようとしてはいないだろうか。しかし、本来ならば時間内に仕事を終わらせることのほうが素晴らしい。余計な視点からの評価より「その仕事の目的はなにか」「そして自分はどう行動するか」をベースに置き、仕事を進めていくことが評価されるべきである。そして、そのほうが無駄のない良い仕事ができるのではないだろうか。

古くから、「背中で教える」という言葉があるように、一生懸命な姿を見せ、そしてその姿に憧れを抱かせることも一つのやり方かもしれない。しかし今は、頑張っている姿を見せられるより、自分の時間も楽しめる人のほうが憧れの存在になり得るのかもしれない。先日『ヤフー株式会社』でも週休3日を取り入れるという動きが報じられた。もはや、休まずに働くことは、なんの評価の対象にもなり得ない時代が来ているのだ。遊んでいる姿やチャラい姿を見せることができるのは、それだけ「自分の仕事に自信を持っている」ということだ。そのことに多くの人が気づき始めている。仕事の充実がプライベートに活きてくるより、プライベートの充実が仕事に活きる生活が今後は求められてくるであろう。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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