近頃、ニューヨークやロンドンで、スタイリッシュな若者たちがこぞって始めているのは都心で農作業を営む、アーバン・ファーミング(都市の農園)。その中でも最先端なのが都市型農業「ヴァーティカル・ファーミング(垂直農法)」なのではないだろうか。LEDライトをコントロールすることで、狭い空間でも室内で農業を営むことを実現させたテクノロジーの進化には驚かされずにはいられない。
しかし、今回紹介したいのは、ヴァーティカル・ファーミングより更に先を一歩行く、大都会ニューヨークのブルックリンの屋上で見つけた“ある農園”である。
ニューヨークのブルックリンに位置するある建物の屋上に存在する農園とは、Edenworks(エデンワークス)。フレッシュで美味しい野菜をニューヨークのシェフへと届ける今注目の農園である。
設計から建設まで全てDIYで作り上げたというこの農園はヴァーティカル・ファーミングを取り入れているため、土は使わず水耕栽培。作物は水に浮いた状態で、コントロールされたLEDライトの光に当てられている。この点は他のヴァーティカル・ファーミングとなんら変わらない。しかし作物の成長を助ける養液を入れる必要があった従来のヴァーティカル・ファーミングに比べEdenworksは、最も地球に優しい農業とも言われているアクアポニックスを取り入れたのだ。
アクアポニックスとは、魚の飼育と水を使った作物の栽培を融合させたユニークな農業方法である。(参照元:Aquaponics)飼育している魚の廃棄物(糞尿)が水中でアンモニアへと分解され、バクテリアがアンモニアを硝酸イオンへと変える。作物は水中からその硝酸イオンを栄養として吸収し成長する。このプロセスは自然界のどこにでも存在するナチュラルなプロセスであり、そうすることで水は綺麗になり魚にとって良い環境が保たれるため、魚の養殖と作物の栽培を自然と循環させることができるのだ。
この手法を用いれば、既存の農業と比べて95%も水分とエネルギーをカットダウンできるため、地球に優しい。
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この最も地球に優しい農業を都会で行う裏には、Edenworksの設立者であり、社長でもあるJason Green(ジェイソン・グリーン)氏の、「ニューヨークのみんなに美味しくて栄養価の高い野菜を食べてもらいたい」という熱い思いがある。
Edenworksが現在の段階で主に栽培しているのが、アメリカでマイクログリーンと種類分けされる栄養価が非常に高い幼葉野菜。日常生活の中で一般人が食べるレタスなどの野菜の40倍栄養があるにも関わらず、値段が高いため高級レストランなどでしか目にできないのがこれまでのニューヨークだった。
そこでグリーン氏は、ニューヨーク内で野菜を栽培することで、輸送コストを大幅に削減。それに加えて、優れたエコシステムを利用した農業スタイルのおかげで、生産費も比較的安いためこれまでにはありえなかった安い値段でマイクログリーンが人々の食卓に並ぶことが可能になったのだ。3年以内にさらに安くできることを見込んでいるそう。屋上の農園はプロットタイプの役割もなしていて、規模的には近い将来、40%の拡大を予定している。
さらに、殺虫剤、遺伝子組み換え種、化学製品など人体に悪影響があるリスクのあるものは一切使用していないため、食の安全性も保証している。徹底的なモニタリングを駆使し、自然の栄養をたっぷり吸収して育つ野菜は他とは比べものにならないほど豊かな味わいになるそう。
美味しい野菜にはドレッシングなんていらないのです。
そう豪語する彼らの野菜をぜひ食べてみたくなってしまう。コンビニやファーストフードなど簡単に食事が手に入る都市の生活だが、どれだけの人が栄養価のある食事にありつけているのだろうか。健康に、つまりは人生に関わる食のこと。忙しいシティライフを過ごしていても、一度立ち止まって考えてみる必要があるのかもしれない。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。