「音楽が好きとも思っていなかった」。生まれながらのトラックメイカーSASUKE(15)に聞く、自分の“好き”の突き詰め方|草野絵美とスーパーティーンの「わかってくれない親の口説き方講座」#001

Text: Shiori Kirigaya

Photography: Kotetsu Nakazato unless otherwise stated.

2019.1.9

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現在6歳の息子の子育てをしているマルチメディア・アーティスト草野絵美(くさの えみ)が、多方面で頭角を現した2000年代生まれのティーンエイジャーに、「自分の好きなことをどう見つけて、それをどのようにして突き詰めたのか」のストーリーを聞いていく連載 草野絵美とスーパーティーンの「わかってくれない親の口説き方講座」が遂に始まる。第一回目の今回は、2003年生まれのSASUKEさん(15歳)と対談した。

SASUKEさんは2003年生まれの15歳で、Dancer/DJ/Beat maker/Composer/MC/Writer/Drummer。物心ついたときから音楽が大好きで、10歳にしてNYのアポロシアターでのパフォーマンスを経験。直近では、元SMAPメンバーの稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾からなる「新しい地図 join ミュージック」の新曲「#SINGING」の作詞・作曲を手がけた。原宿での路上ライブがSNSで話題となり、インスタグラムのフォロワーは現在一万九千人を超えている。

草野絵美さんは90年生まれ、80年代育ちで歌謡エレクトロユニット「Satelite Young(サテライトヤング)主宰・ボーカルで、現在2012年生まれの息子を子育て中。自身が10代の頃は、国内外で多様なカルチャーに触れ、ファッションフォトグラファーとして活動していた。
▶️彼女の10代の頃についてはこちら

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左からSASUKEさん、草野絵美さん

「音楽が好き」とも思っていなかったが、自然と音楽のほうに向かっていた

草野絵美(以下、絵美):「今も学校で浮いている」ってほかのインタビューでおっしゃっていたけど、小学校とか幼稚園の頃の自分を振り返ってみて、SASUKEさんはどんな子だったと思う?

SASUKE:自分の意見を押し通すみたいな、本当に自分のやりたいことをやっていたと思います。

絵美:そうだったんですね。今ってYouTubeとかNetflixとか、いろいろ見られるものが多いじゃないですか。コンテンツを作るよりも消費するほうが楽だと感じているのですが、そこでちゃんとコンテンツを作る側にまわれるのはすごいなって思いました。子どもの頃から作るのがやっぱり好きだったんですか?

SASUKE:そうですね。音楽が好きで、ダンスが好きで、その好きな音楽は自分で作れるから。本当に好きなものを作れるってなったらそっちにいってしまったんです。ずっと曲を作っていたら、出す側になっていました。

絵美:物心がついたときから機材を触っていたんだよね。

SASUKE:そうですね。最初は家でかかっている音楽を聴いて、踊り始めていて、それからお父さんが使っているパソコンを触っているときにガレージバンドっていうソフトを見つけて曲を作り始めたみたいなんですけど。

絵美:すごい、それって6歳とかからですよね?

SASUKE:そうですね。幼稚園の年長とか。

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絵美:まさにうちの子と同じくらいのときだね。ほかにも恐竜とか電車とか子どもが興味を持ちそうなものがあるなか、音楽が一番のパッションだってことを、本当に物心ついたときからわかっていたんですか?

SASUKE:ほかのものに興味を持たなかったんですよね。音楽が好きだとも思ってなかったというか。音楽が好きで、自然と音楽のほうにいっていた。結果的に今考えると好きだったなと思って、何も考えずに。

絵美:結構子どもの頃「〜になりたい」っていうのがありますよね。言っていたものにならない人とかいっぱいいるけど、それしか好きじゃないっていうのはすごく強いですよね。

SASUKE:そうかもしれないですね。

絵美:「何をやりたいのか」って大人になっても悩んでる人がいっぱいいると思ってて、「音楽好きだけど、この人ほど好きじゃないからやめよう」っていう人もいるし、好きってだけで終わらせちゃう人もいるって思うんですけど、その続けるモチベーションはどこからきてるんだろう?

SASUKE:モチベーションという前に多分すごく好きなんだと思います。時間を忘れるくらい、誰かに止められるくらいやってしまうので、偶然自分に合うものを見つけたのかなと思います。

絵美:なるほど、それは本当に幸せなことですよね。

SASUKEさんの父親の話

彼の音楽に対する生半可ではない熱意を知って、「音楽をやっているときは止めない」というルールを作りました。彼はそれを真に受けて、時間を忘れて朝まで作っていることもあります。ですが、こちらもそう言ったからにはっていうのがあるから、互いに意地の張り合いになっていて大変です(笑)。

親を説得することを無意識にやっていた

絵美:自分の好きなことを早い段階でわかっている人ってクラスメイトと話が合わないことも少なくないだろうし、小中学校が一番同調圧力が強いっていうのが自分の経験であって。友だちと合わないなって思うこととか、流されちゃうなって思ったこととかってありましたか?

SASUKE:まあ、ないんですけど(笑)。

絵美:なんでそんなに落ち着いているんだろう(笑)。

SASUKE:人と違うことに対しておもしろいと思っているというか、人と違うほうがかっこいいなと思っていて。その価値観がすごく重要な気がします。

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絵美:そうなんだね。なんか人目が気になっていたけれど「みんなと違うほうがかっこいい」っていう価値観が見つかったときにやっと自分を解放できるような人とかもいて、その価値観が子どものころからあるのってすごく強いかもしれない。それがあればどんな環境でも、自分の好きなことを突き詰めていけるのかな。逆にSASUKEくんの影響を受けて音楽を始めたりする友だちとかもいますか?

SASUKE:すごくたまにいますね。でも、すぐ諦めるみたいな。「できない」って言って。

絵美:えーっ、あきらめるんだ。

SASUKE:影響されて、本格的に始めた人はいないですね。「楽曲を作れるアプリをとってみたよ」とかっていう話をしてくれたりはするんですけど。

絵美:そこにある差はなんだと思いますか?

SASUKE:どうなんでしょうね。本気度とか。

絵美:好き度というか?

SASUKE:好きなことが、のちのち夢になっているのか。それとも夢になっているから、やってみようとしているのか。夢だったら親にも「夢だから」と言って協力してもらえるじゃないですか。

絵美:そこがそうじゃない家庭もあるからね(笑)。でも本気だったら説得する。

SASUKE:夢だったらいずれにせよそうするんですけど、「やってみよう」となっている状態だとそれが仕事になるかわからないし、それに対して機材を増やしても無駄になっちゃうんじゃないかって考えるのかも。

SASUKEさんの父親の話

最初はやらせるつもりはありませんでした。今ある機材も高価なので、6歳とかの子に買うつもりはなかったんです。ですが、自分で機材をダンボールで作ったりするような行動に出て、全力でアピールしてくるので、こちらが影響されて与えないといけないと思わされた意識はあるかもしれません。

絵美:家庭ではどんなふうに育てられたんですか?自由にさせてもらってたって感じ?

SASUKE:好きなことに対しては理解してくれて、「機材がほしい」と言って、誕生日に買ってもらいました。

絵美:そっかあ。お父さんのお話によると、なんか親を説得させることも、無意識にやっていたんだね。でも確かにそういう片鱗が見えると「ここで私がチャンスを与えなかったら、あの子の将来がもったいないことになったらどうしよう」とかって思うだろうな。

良くも悪くも「嫌なことはやらない。好きなことはやりまくる」

絵美:なんか年齢とともに作家性とかって変わってきたりしているんですか?

SASUKE:そうですね。自分のやりたいをやるというところから、そのなかに、曲に意味を持たせようとしているところが楽しい。曲によりますが、例えば嫌だったことの共有みたいなのを曲に込めるようになって、聞いた人がどのような影響を受けるのかというのも気にするようになりました。

絵美:やっぱりすごいな。あとは不安とかはありますか?好きなことを続けていくうえで、それで将来のことを考えたりしますか?

SASUKE:しない。しないんですよ、なぜか。

絵美:楽観的なの?

SASUKE:先のことを考えてないんですよね、良くも悪くも、「嫌なことはやらない。好きなことはやりまくる」という意識で動いているので。成功とか失敗の概念がないという感じで、好きだからやっています。

絵美:でも、その好きなことをやり続けることに不安になっていないのは、親御さんが好きなことをかなり応援していたからだなって、今思いました。

SASUKE: 僕が何か言ったらめんどくさいので、ほったらかされてるだけです(笑)。

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「自分が何かじゃなくて、オリジナルでいたいんですよね」

絵美:ちょっと気になることを聞いてもいいですか?SASUKEくんがこれまで一番インスピレーションを受けたこととかものとか何なのかなと思って。この文化とか人からすごく影響を受けた経験ってありますか?

SASUKE:うーん。自分が何かじゃなくて、オリジナルでいたいんですよね。その何かになるんじゃなくて新しい何かを作りたいっていうのがあって、音楽もこのジャンルが好きだから作るんじゃなくて他のジャンルでも作るし、新しいジャンルを作りたいと思ってるので。でも、色々なものから影響を受けてます。あらゆる曲を聴いて、最近は嫌いな曲も聴いてそこから取り入れていって。他人の話を聞かない自分がいたんですけど、最近はそこから何かを取り入れてつなげられるようにって思うようにして、自分の身の回り全部から影響を受けるようにしています。

絵美:その憧れの人がいないってところを聞いてすごく本質的だなと思って。多くの人は「こういう人になりたい」と思って、将来の夢を決めることがあって、やりたいよりなりたいが先にきているから。「あのアーティストになりたい、かっこいいから」っていうモチベーションだと、多分演じることはできても多くの場合は続かないんですよ、職種によるかもしれないけど。SASUKEくんはなりたいよりもやりたいが先にきている感じですよね。

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自分の好きなことに自信を持つこと

絵美:何年までにこれをやるっていう細かいゴールがあるというより、もっと大きなものに向かっていってるのですか?

SASUKE:そうですね。世界のステージで自分の作った音楽を自分で演奏して歌って踊って演出もしてっていうのに向かうためにという意識でいろいろやろうとはするんですけど、結局やらなかったりしますね。ステージで踊るから筋トレをしないとと思いながら、曲をずっと作っているみたいなことが多いです。

絵美:そっか、そっかあ。その目標を達成するためにいろんなほかのスキルだとか、必要事項が出てくるけど、やっぱり曲を作っている時間が一番好きなんですね。でも何かものづくりをしていたりとか、本当は時間をこっちに割きたいけど金銭的なところで葛藤している人とか親が反対している人とか、なんかやりたいけどやりたいことできていない人とかにアドバイスするとしたらどんなことを言いますか?

SASUKE:そうですね、自分のやりたいことにまだ自信が持てていないのかなという感じがしますね。自信があったら、僕の場合は親が反対したとしても、勝手にやっているので、好きなら自信を持ってやり通したらいいんじゃないかなと思います。本当に好きなら金銭的なことも考えないと思います。僕も好きでやっていただけなので、継続していたら実力も自然とついて、気づいたら仕事になっていました。

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絵美:環境を言い訳にするなということかな?

SASUKE:その通りですね。

絵美:ですよね、それすごく大事ですね、今のでピシッと引っ叩かれた気分になる大人がね、画面の向こう側にいるかもしれないですよね。インスピレーションをありがとうございます。

ただの「好き」と、突き詰めたい「好き」

現在、中学3年生のSASUKEさん。放課後は宿題を終わらせたらすぐに自分の部屋に行き、作曲を行い、歌詞をつけたり、曲に満足したら踊ったりという生活を送っているという。彼の話からみえてきたのは、もし自分の好きなことを「わかってくれない親」や、それ以外に反対してくる人が周囲にいるなら、まず自分にとってそれがただの「好き」ではなく、どれだけ突き詰めたい「好き」なのかを証明することや、それを押しのけるような気持ちを持つことが必要だということ。また自分が他の何とも違うオリジナルでいたいなら、何かを排除することなく周囲の環境すべてをインスピレーション源にして、他人と差をつけるというのも一つのアイデアだ。次回の対談もお楽しみに!

SASUKE

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15歳(中学3年生)
Performance : Track Making/Compose/Finger Drumming/Dance/DJ/Drumming
5歳からダンスを習い始め、10歳でニューヨークにあるアポロ・シアターの「アマチュ アナイト」で優勝、14歳の時に原宿で披露した路上パフォーマンスをきっかけに様々なメディアに取り上げられる。先日発表された新しい地図 join ミュージックの新曲「#SINGING」の作詞、作曲を担当、日本中で新進気鋭のトラックメイカーとして注目される。ダンスパフォーマンスから楽曲制作までを熟しSNSを通じて国内だけでなく海外からも楽曲制作のオファー殺到中、いま一番フレッシュな15歳現役中学生。

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草野絵美(くさの えみ)

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90年生まれ、80年代育ち。アーティストで、歌謡エレクトロユニット「Satellite Young(サテライトヤング)」主宰・ボーカル。2012年生まれの息子の子育てをしながら、『SENSORS(BS日テレ)』のMCを務めたり『サンテPC』CMに出演したりと、多方面で活躍中。

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