ヨーロッパの国の多くが加盟しているEU(ヨーロッパ連合)。それらの国に対してどんなイメージを持っているだろうか?ヨーロッパの国々といえば、社会や文化事情が似通っていると思う人もいるかもしれないが、実際にはそれぞれ特色があり、どの国の内部も多様。
2009年当時の欧州理事会の議長が「27の加盟国は、文学、芸術、言語のいずれも異なる。そして、それぞれの国に多様性がある。多様性は、私たちの財産、発展、力の源である。EUは寛容と尊厳の模範であり、また、そうでなければならない」(引用元:外務省)と述べているくらいで、連合として「多様性」は重要なのだ。だから加盟国は多様性に対する取り組みを、そのほかの地域に比べても行ってきたといえる。
そんなEUに加盟する28か国*1のうち25か国の作品が観られる「EUフィルムデーズ2018」が、5月26日から東京、京都、広島で順次に開催される。そこで本記事では29作のラインナップから、「多様性」や「若者」にフォーカスを当てた作品を紹介していく。
(*1)2013年にクロアチアが加盟し、現状では28か国が加盟している
アイルランド:『マッド・メアリー』
ナイトクラブで暴行事件を起こし半年間服役していたメアリーは出所後、友人の結婚式に招待され、同伴者の男性を探すがどの男性ともうまくいかない。同作では、はちゃめちゃな性格の彼女が自身の悪いところを変えようと奮闘しながら「真の自分」を見つけるまでの、友情と愛のストーリーがコメディタッチで描かれる。2017年にはアイルランド・アカデミー賞作品賞を受賞し、LGBTQをテーマとするレインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭でも上映された。
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フランス:『スワッガー』
「学校には生粋のフランス人はいない」「(生粋のフランス人を)パリで見たけど、僕たちと同じ普通の人だよ」と話す子どもたち。“最も劣悪な環境”とされ、移民が多く住むパリ北東郊外の街を舞台に、11人の子どもたちを撮ったのが同ドキュメンタリー作品だ。ドキュメンタリーといえども、ミュージカルやSF映画を思わせる演出を織り交ぜながら描いているのが特徴。彼らの視点から見た地域の現実、そしてそこで彼らが抱く夢はどんなものだろうか?
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オーストリア:『世界でいちばんの幸せ』
ヘロイン中毒の母親と暮らすいう、一見「不幸な家庭環境」にいた7歳の少年アドリアン。だがそこには冒険が溢れていて、献身的に愛情を注いでくれる母親との生活はとても幸せだった。また母親もヘロインを使い続けてしまうものの、いい母親であれるよう努力していた。しかしある日警察が彼らのところにやってきて、ソーシャルワーカーに母親のヘロイン中毒を知られてしまう…。人にとって「幸福」とは何なのかを考えさせられる同作は、1991年生まれの監督が実体験をもとに撮った長編デビュー作で、日本での公開は今回が初となる。
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EUフィルムデーズではさまざまなテーマを扱った多ジャンルの作品が上映されるが、ヨーロッパ諸国のあまり描かれることのない面をも芸術を通して見せてくれる。日本の映画館で観られる外国映画はアメリカのものが多いが今回はヨーロッパで撮られた映画を一度に鑑賞できるチャンスだ。
EUフィルムデーズ2018予告編
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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。