収入によって食事の値段が変わる。「差別」で「平等」を生む革命的なレストラン

Text: Noemi Minami

2017.4.7

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米国、カリフォルニアにはチェーン店にも関わらず、店舗の場所によって食事の値段が異なるレストランが存在する。一見、不平等だと感じるのではないだろうか。しかし実はこのチェーン店、どこよりも「平等」な革命的なビジネスモデルを実現したのである。

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貧困のために立ち上がったウォール街のエリート

カリフォルニアで着実に店舗数を増やしているレストラン、Everytable。フレッシュな野菜や果物をふんだんに使用し、米国でもトップクラスのシェフによって考案されたクオリティの高い料理が売りだ。

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しかし、最大の特徴は地域の平均収入に合わせた値段設定だと言えるだろう。同じ州の中でも富裕層が集まる西カルフォルニアの繁華街では、一食900円近くで売っているが、比較的貧困地域の南カルフォルニアでは約450円で安く提供している。これは、全ての人が同じ栄養価の高い食事を取れるようにするため。

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Everytableの創設者、サム・ポルク氏はウォール街でヘッジファンド関係の仕事をしていた超エリートだったが、不道徳なことが日常的に行われるウォール街にうんざりし、多額のボーナスを断って2013年にGroceryshipsという非営利団体をはじめた。これは、貧困に苦しむ家庭に「奨学金」として栄養価の高い食材を寄付し、栄養価の高い料理のレッスンを提供する団体だ。

Grooceryshipを始動してすぐに、もともと投資銀行で働いていたデイビッド・フォースター氏が参加。彼も金融関係の仕事に疑問を感じ、助けを必要としている人のために働きたいと思い続けていたので二人はすぐに意気投合。共同で、Everytableを起業する。

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真ん中がポルク氏、一番右がフォースター氏

包括的な資本主義

Everytableは、貧困層が健康的な食事を得られていない米国の社会問題を象徴する「フードアパルトヘイト」や「食の砂漠」の解決策としてポルク氏とフォースター氏が考案した新しいビジネスモデルである。

フードアパルトヘイト
新鮮で体に良い食べ物の値段がファーストフードや加工食品より高いため、経済的に恵まれていない人は体に悪いものしか食べられない状況。(参照元:The Washington Post

食の砂漠
スーパーやマーケットが少なく、新鮮な野菜や果物を手に入れるのが難しい地域を指す。(参照元:American Nutrition Association)また、ファーストフード店が比較的に貧困層の多いエリアに集中すること。事実、富裕層が集まる西カリフォルニアにはファーストフード店が16%なのに対し、貧困に苦しむ南カリフォルニアではその数は45%にまでのぼる。(参照元:The Washington Post

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彼らのビジネススタイルは既存の経済的な格差を利用し、「包括的な資本主義」に基づいているといえるだろう。(参照元:GOOD)富裕層が多い地域の店舗で値段設定を高くし、そこで得た利益を貧困地域に利用する。そうすることで、すべての階級の人が美味しい食を楽しみながら経済的不平等を理由とする食生活の格差の改善に貢献できるのだ。格差を少しでもなくすためには、資本を持った人々が先頭にたち、アクションを起こすことが必要とされる。

平等の意味とは?

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単純に考えれば、すべての人に対して「同じ値段」で商品を提供するのが平等のように聞こえる。しかし、人々の経済的状況は当然異なっている。手元に1万円ある人と1000円しかない人にとって「900円」は“同じ値段ではない”ことは予想できるだろう。

そういった意味では、Everytableはある意味富裕層を“差別”することで、より平等なシステムを確立させたと言えるのではないだろうか。

※ちなみに、裕福な家庭の人がわざわざ安い店舗に出向くのも、ポルク氏は大歓迎だそうです。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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