イギリス、ロンドンに【デブ・アクティビスト】が存在する。彼女の名前はステーシー・ビアス。アーティストでもあり、イラストレーターでもある彼女は、様々な体型を受け入れられるような受容的な社会づくりのために、アートを通してメッセージを発信している。
Animation sneakpeek screenshot. What it feels like to not fit in a plane seat. #flyingwhilefat pic.twitter.com/aiM9kbK4Yu
— Stacy Bias (@fatfeistyfemme) 2016年10月12日
そして、ビアスが今月のはじめに投稿した動画が“肥満の人が向き合う問題を上手に表した”と話題を呼び、多くのメディアに取り上げられた。この動画は彼女がアメリカからロンドンに向かうまでの飛行機旅の実体験を元にしたものである。ビアス以外にも、色々な“肥満”の人の声がつまったアニメーション・ドキュメンタリーである。
※動画が見られない方はこちら
動画の中の声は現実に“肥満”の人たちが受けた心無い言葉たちだ。
席変えなさないよ!あんたの隣になんか座らないわよ!
スペースの取りすぎ
ある女性は飛行機旅をする時の心境を次のように説明する。
神経がすり減るようです。すべての肥満の人に共通していると思いますが、飛行機で席を探している時の他の乗客の表情…。みんなにジロジロ見られるんです。まるで息を止めて、じっと私が彼らの横に座らないことを天に祈っているかのよう
そして席をしきる肘掛を攻撃的に降ろされた経験はほとんどの“肥満”の人に共通しているそう。中には肘掛が体にねじ込み痛い思いをしても、やめてくれなかった人がいるそうだ。残念にも、彼女たちにとって飛行機は「安全を感じれないスペース」ということなのである。
こんな非人道的なことが許されるのだろうか?
アメリカ、アイオワシティでは21歳の学生、ジョーダン・ラモスが大学のバーで「デブ」を理由にダンスすることを禁止されたそうだ。バーのスタッフは「どう見ても妊娠中だし、かわいくないから」と彼女に面と向かって言ったという。ラモスはすぐにイリノイシティの人権擁護委員会に報告をしたが現在の法律では何もできないと言われたそうだ。(参照元:abcNEWS)
すべての人に与えられるべき権利を「デブ」を理由に奪われたラモス。これは立派な人権侵害であるにもかかわらず、どうすることもできないのが現状だ。
「デブ差別」は「人種差別」や「性差別」と同様、深刻に受け止めるべきではないだろうか?
「デブ差別」が真剣に取り扱われないのにはひとつ理由が考えられる。それは社会の「デブはすべて本人の選択」という勘違いだ。これは差別者たちが同性愛者への嫌悪を正当化する時によく使う「同性愛は本人の意志」と重なる。
昨年、アメリカの人気ユーチューバーが投稿した動画が大問題となったが、彼女の主張は「デブ差別者」の意見を凝縮していると言えるだろう。
※動画が見られない方はこちら
彼女は“デブ”の人を散々コケ降ろし、それを押し付けがましく「あんたたちの健康のために言ってるんだよ」「食べなきゃいいじゃん」「いっぱい責めて、気づかせて、痩せさせてあげるんだよ」と主張する。
もしたとえそれが目的だったとしても、彼女は間違っている。なぜなら“肥満”の人に「デブだ」「痩せろ」と言うと結果的に彼らは精神的ストレスでさらに食べてしまうことが研究で判明しているからだ。(参照元:Telegraph)“肥満”の原因には身体的な原因があったり、精神的原因があったり、本人のコントロール外なことも多い。また、そもそも彼らの選択で“デブ”だったとしても、彼女に何も言う権利は明らかにない。なぜ他人にどうのこうの言われなければならないのか。
社会がこの事実に気づき、一刻もはやくこういった犯罪を減らしていくことが必須であることは言うまでもないだろう。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。