便利至上主義の日本人が思い出すべき「不便」の贅沢さ。

2017.4.28

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近年、人工知能(AI)の進歩が目まぐるしい。第三次AIブームと叫ばれ、ニュースではほぼ毎日人工知能関連の話題が流れる。人工知能が将棋で勝った、囲碁で勝った。AI搭載の自動運転の実験が本格化する。人工知能が人間の仕事を奪う、等々。その活躍ぶりは、もはやSFのフィクション映画ではない。とはいえ、筆者含め人工知能とは何かと問われても曖昧な答えしか出ないので、まずは定義を確認しておこう。

学習・推論・判断といった人間の知能のもつ機能を備えたコンピューターシステム。(Weblioより)

平たく言えば、人間ような知性や計算能力を持つ機械やロボットが私たちの生活をより便利に、合理的にしているのだ。

そんな中、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授が2013年に出したある論文が世界中で注目を集めた。「雇用の未来 コンピューター化によって仕事は失われるのか」だ。この論文は今後10から20年後に消えるだろう職業を挙げたもので、現在の仕事の約半数がコンピューターに奪われると主張している。この記事ではこの論文を受け、「便利さ」について考えると同時に「人工知能ができることをなんで人間がやっちゃだめなの?」という疑問を投げかけたい。

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Photo by Harald Johnsen

人間の仕事の約半分が機械に奪われる!

“今後10~20年で47%の仕事が機械に取って代わられる高いリスクがある”

マイケル・オズボーン准教授の論文「雇用の未来 コンピューター化によって仕事は失われるのか」の言葉だ。なんと、今後人工知能やロボットがいまの仕事の約半分を奪うという研究結果が出たのだ。

無人の自動運転車の出現によってトラックやタクシードライバーは仕事を失い、膨大なデータを処理するコンピューターの働きによって弁護士や警察といった専門職も消えるかもしれないという。他にも銀行窓口係や経理事務、スーパーの店員やビル清掃員など702もの職業を“消える職業”、“なくなる職業”にリストアップしている。

これを聞いてあなたは「将来働かなくて済むようになる」「便利な世の中になった」といった感想を持つかもしれない。しかし、本当にこれはよいことなのだろうか。

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Photo byBarn Images

人工知能は、わたしたちの仕事を奪えない。

科学技術の躍進が効率化・合理化を促し、わたしたちの生活はますます便利になる。そして同時に仕事の時間が大幅に減る。たしかに、それにより企業全体の生産性は右肩上がりになり、経営コストは人件費とともに減少する。人間の“”労働”というものを経営の効率化という観点からのみ見れば、よいことのようにも思える。しかし、ちょっと待てよ、と思う。

論文に従えば、例えば10年後には経理事務や瓶詰め工場の従業員は職を失う。しかし、経理という仕事が好きな人や工場勤務に愛を注ぐ人が存在すること、それぞれの仕事に生き甲斐を感じている人がいることを忘れてはいけない。

人間が勝手に作り出した人工知能は、個人の自由を奪う権利をもたない。“やりたいこと”は人間がやればいいのだ(もちろん、やりたくないことに関しては科学技術を頼ればいい)。自動運転技術が発達しても運転したい人はすればよい。「人工知能も人間も両方できること」があったとして、なぜそれを人間がやってはダメなのだろうか。

自由な“選択”のための人工知能であるべきだと思う。やるかやらないかは人間の選択の自由。科学技術は人間の選択の幅を広げるため、つまり、より自由になるための手段にすぎないからだ。それが逆転し、人間が合理化の奴隷となってしまった現代社会を、自由で幸福な社会とは呼べないだろう。

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Photo by Jeff Sheldon

便利って本当にいいことなの?

人工知能含め、現代の科学技術研究は「便利なほうがよりよい」「単純作業は人間がやるべきではない」という一定の価値観に基づいている。しかし「人間らしさ」は決して「便利さ」には回収できない。便利さの追求が人間の選択肢を狭めるとしたら、科学技術の“便利さ”は本当に“よい”ことなのか?一回立ち止まって考えたい。
 
多様な“働き方”を受容する社会の実現を目指すためにも、不便でも直接お金にならないことでもやりたいことをする、やりたいように働くという、“便利さ”や“合理性”から離れた広い視点で世界を観ることが、いまだからこそ必要なのではないだろうか。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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