インスタグラムも見破れない。“男性の乳首”と“女性の乳首”の違い

Text: Shiori Kirigaya

Cover photography: Jared Polin

2017.2.1

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インスタグラムやフェイスブックなどのSNSは、現代社会を生きる私たちにとって欠かせない表現や言論の場だ。そのなかで、“ヌード”の投稿をめぐる問題が起きている。

インスタグラムとフェイスブックの“NG画像”

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Photography: Jared Polin

上記の2枚の写真はインスタグラムやフェイスブックに投稿しても大丈夫だろうか。左の写真はOKだが、右の写真は「女性の乳首」が露出しているためNGだ。このようなルールにより、女性の乳首が露わになった画像は削除されてきているという。(参照元:The Guardian

それぞれのSNSには、投稿する画像に関するルールが設定されている。インスタグラムの場合、禁止事項に「女性の乳首の写真も含まれますが、乳房切除術後の瘢痕はんこんや授乳をしている女性の写真は許可されます。ヌードの絵画や彫刻の写真も許可されています」(引用元:Instagramヘルプセンター)と書かれており、アートの表現だとしても生身の女性の乳首の露出は許可されていない。(参照元:Instagramヘルプセンター

インスタグラムを傘下に持つフェイスブックのルールも同様で、女性の乳首が見えている画像への制限があるが、「教育、ユーモア、風刺を目的に投稿される場合はこの限りではありません」としており表現として許される場合もあるようだ。どちらも多様な出身文化や年齢を考慮したうえでのルールだという。(参照元:Instagramヘルプセンター, Facebook)このように、どちらのSNSも「女性の乳首」は一部の利用者には適さないと考えている。しかし、なぜ男性の乳首は許可されて、女性の乳首が規制の対象となるのか。

#FreeTheNippleと「乳首」

「フリー・ザ・ニップル」を合言葉にしたキャンペーンをご存知だろうか。直訳すると「乳首を解放せよ」という意味だが、単に女性が自分の乳首を見せて歩きたいからということではない。「男性の乳首」は公共の場で見せることが許されているのに、なぜ女性には「乳首を出す権利」がないのかという疑問を社会に問いかけるものだ。つまり、女性にも乳首を出す自由を認めるべきと主張する運動である。

フリー・ザ・ニップルキャンペーンには多数の有名人が参加しているが、アメリカのスーパーモデルのナオミ・キャンベルが、インスタグラム(既にインスタグラム側により削除済み)とツイッターにトップレス写真を投稿したことが特に有名だ。実際のところ、社会的にNGでも米ニューヨーク州やカリフォルニア州のベニスビーチなどでは法律的に女性の乳首の露出が認められている。(参照元:TIME.com, NBC Southern California)だが、依然として社会的に女性の乳首は「タブー視」されており、主に女性たちが抗議を続けている。

「フリー・ザ・ニップル」についてもっと知りたい方はこちら

“教育”か“ポルノ”かそれとも

女性の乳首の写真がSNSから消され続けているが、注目したいのが「教育やユーモアや風刺なら」というルール。このルールに従えば「乳首」を出した画像を投稿していいというのだ。では、「露骨な性表現」かそうでないかはどうやって判断するのだろうか。インスタグラムもフェイスブックも、ユーザーからの報告を受けてから手作業で判断していくという。(参照元:東洋経済オンライン, TechCrunch)だが、彼らの判断にはやり過ぎに思えるものも目立つ。

例えばフェイスブックに投稿されたベトナム戦争中に裸で逃げ惑う子どもたちの写真が、歴史的に重要なのにもかかわらず全裸であることを理由に「児童ポルノ」と判断されて問題となった。(参照元:THE HUFFINGTON POST)さらには、規制の対象となっていないはずのイラストまで非表示にされたことがある。ニューヨーカー誌がフェイスブックページに掲載した、イラストの女性の乳房にわずかな点(乳首)が描かれていたことが原因だった。このように、厳しすぎるフェイスブックの判断が物議を醸している。(参照元:GIZMODO, The New Yorker

「乳首」をインスタにアップするキャンペーン

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Photography: Genderless Nipples

フリー・ザ・ニップル運動とは異なる新しい形で、女性の権利を訴えるのは「Genderless Nipples」(性別のない乳首)と名付けられたインスタグラムのアカウント。こちらはSNSという現代的な表現のプラットフォームで「男性の乳首」は削除されないのに、なぜ「女性の乳首」を投稿すると消されてしまうのかという疑問をもとに作られた。ねらいは、性別によって乳首に大きな違いはないと証明し、性差別的なルールを変えさせることである。現に男女の乳首が似ているため、男性の乳首が削除されたこともあり、ジェンダーレス・ニップルズの作戦も半ば成功しているようだ。

ニュース:さっき男性の乳首の1つが削除された。インスタグラムよ、男女の乳首を見分けることなんてできないでしょ、誰ができるの!?それなのにどうして女性を規制し続けるの?

乳首のクローズアップ写真のみを投稿している、本アカウント。性別による乳首の見分けがつかないことだけでなく、人はそれぞれ異なった肌の色や、乳首の形など多様な身体的特徴を持っていることがわかる。なかにはピアスを付けている人も、手術の痕が残っている人もいる。「男性の乳首は社会的にOKだけど、女性のはNG」という考えの不平等さ以上に、この世界に溢れる人々の「多様性」まで考えさせられるようだ。

今では問題のない男性の乳首を見せることも、以前は「タブー」とされていた。それを考えると、女性の乳首もいつかは「公共の場で見せてもいい権利」を持てるようになるかもしれない。「男性の乳首は社会的にOKだけど、女性のはNG」という考え方を批判的に捉えずそのまま受け入れる人が減れば、この問題も前進したといえるだろう。

<ジェンダーレス・ニップルズへの参加方法>

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Photography: Genderless Nipples

ジェンダーレス・ニップルズへの参加には、
①まず18歳以上であること
②明るいところでカメラをコーラ缶1つ分ほど離して、乳首と乳輪だけが入るようにまっすぐ前から写真を撮る
※このとき注意すべきなのは、毛や手などを入れないようにすること。そうすれば、さらに識別が難しくなる。
③genderlessnipplesatgmail.comに、またはジェンダーレス・ニップルのアカウントのコンタクトボタンから写真を送る

写真はすべて名前を伏せてアップロードされるのでご安心を。(参照元:Genderless Nipples

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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