近年、日本では「ピンズ」と呼ばれるファッションアイテムが人気だ。デニムのジャケットにたくさん付ける人もいれば、バックパックなどにさりげなく付ける人も見かける。
そんなピンズはサイズこそ小さいが、それぞれのデザインに強いメッセージを込めたなら非常にパワフルになるのではないかと考えられる。そこで今回の「GOOD GOODS CATALOG」では、あるアーティストがキュレーションするオンラインショップで扱われているユニークかつ主張の強いピンズを紹介したい。
バイブレーターの形をしているこのピン。性的なことをポジティブにとらえていいというメッセージが垣間見られる
あなたは、買い物するときどんな基準で商品を選んでいるだろうか。もしあなたの気に入っている商品を販売する企業が、不正を働いたり環境に悪影響を及ぼす事業に資金提供したりしていたらどうするだろう。
企業や商品作りにおける考え方に賛同できない場合、その企業やブランドの商品を「ボイコット(不買運動)」するという方法がある。これは買い物が「投票」に例えられるように、消費者の力で信頼や賛同のできない企業の商品にお金を出すのをやめ(票を入れるのをやめ)、企業の経営を成り立たなくさせ社会をより良くする(より良い企業に投票する)というもの。
そこであなたがボイコットしたいとき、またはボイコットとは関係なく単純に人や環境に良い商品が欲しいときに、参考となる商品カタログをBe inspired!が作成することを決意。その名も「GOOD GOODS CATALOG(グッド グッズ カタログ)」。
マイノリティの権利や、生理をポジティブに語るピンズ
フェミニスト・アクティビストでアーティストのWhitney Bell(ホイットニー・ベル)がキュレーションを担当するオンラインショップ「Kidd Bell」。同ショップでは、マイノリティの権利を主張したり、自分の体に対してポジティブであることをテーマとしたりしているアイテムが揃う。
自分の人生のなかで自認するジェンダーが変わっても何ら不思議でない
どんなジェンダーでもセクシュアリティでもポジティブで
どんな人種でも平等な権利を享受できる世界に
PMS(月経前症候群)をネガティブに考えなくていい
管理職に男性が多く、女性が意思決定に参加できない世の中を変えるべき
商品の売り上げの一部を、マイノリティの権利や性の健康を守る活動を行うNGO団体に寄付しているのも同ショップの特徴だ。ピンズ以外に取り扱われているのは、ジェンダーニュートラルな服やワッペン、コンドームなど。
「白人女性」のアーティストによる、オンラインショップ
Kidd Bellのキュレーションをするアーティストのホイットニー・ベルは、知名度のあるイベントプロデューサー、そして10代向けのファッションマガジンのライターとしてマイノリティの権利を訴える活動を行っている。
彼女のインスタグラムは、約4万人のフォロワーがいる公式アカウントだ。それを利用し、ジェンダーや人種の問題、セックスやメンタルヘルスに対する問題提起を常に行っている彼女のやり方は、SNSの発達した現代らしい。
彼女がまず問題意識を抱いたのが、女性に向けられたセクハラやレイプなどに表れている、女性が男性より立場が低く見られるという社会の構造。だが女性が経験する問題にとどまらず、白人の異性愛者の女性である自分自身よりも差別の対象になりやすい、セクシャルマイノリティや人種的マイノリティの権利にも目を向けるようになった。そんな彼女がアーティストとしての審美眼を使ってキュレーションしたアイテムの売り上げの一部を、サポート団体に寄付するという活動が、Kidd Bellの事業。(参照元:Inc.)販売しているアイテム自体も、人々を勇気づけたり、連帯させたり、伝えにくい自分の意思を表明したりできるものとして意味を持っているという点が非常に重要だ。
声高々に主張することだけが、主張じゃない
言うまでもなく、声高々に自分の考えや思っていることを主張することだけが、主張の方法ではないだろう。自分の思想をさりげなく発信したい人には、洋服やカバンにそっとつけることのできるピンズのようなアイテムがある。このようにメッセージの込められたユニークなアイテムを持ち歩くことも、立派な主張の一つだと考えていい。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。