持続可能性、サステイナブル、そういう単語にハードルを感じてしまうのは筆者だけだろうか?
それら単体でも高いハードルは、“未来”や“社会”なんて単語が付属することで、どうあがいても超えられなそうな壁に進化する。要するに、ささやかな日常を維持するのにヒィヒィ言いながら生きる筆者にとって、持続可能性は考えたくても考えられない贅沢品のような存在なのだ。
しかし、そんな持続可能性について、安価で手軽に考えられ、なんなら実行もできてしまう、素晴らしいプロダクトがあると知り、興味を持った。
そのプロダクトとは“鉛筆”だ。
使い終わったら植えられる、不思議な鉛筆
Sprout World(スプラウト・ワールド)は、欧米で展開しているデンマークの鉛筆メーカーだ。同社が展開するSprout鉛筆は、使い終えたら、末端部分を土に植えるだけで、野菜や、ハーブ、花などの植物が育てられるという。
そんなSprout鉛筆の仕組みについて簡単に説明しよう。
末端部分の水溶性の黒いカプセルに植物の種が入っている。そして、鉛筆が短くなって使えなくなった際には末端部分を土の中に埋め水をかけると、カプセルが溶け、種が土の中に露出する。その結果、植物が育つのだそう。
さらに、軸の部分も、鉛を使わず、炭に熱処理を加えることで生成され、炭素のみで構成された元素鉱物グラファイトを利用しており、軸を取り囲む持ち手の部分も天然の杉でできているため環境に優しい。
Sprout鉛筆は、2012年、MITの学生によって、クラウドファンディングプラットフォームのKickstarterで立ち上げられ、約400万円の資金調達に成功した。その後、2014年までに、百万本を売り上げ、Sprout鉛筆のヨーロッパでの拡大を担っていたSprout Worldが買収し、現在に至る。
小さな鉛筆に込められた強い思想と大きな夢
小さなSprout鉛筆だが、今年で創業6年目を迎える。アメリカ、カナダ、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス、フランスなど欧米各国で展開し、近年では、日本の企業とも取引があるそう。
そうした人気の秘密は、持続可能性に対する強い思想と、企業名や個人名を記名し、鉛筆をパーソナライズ化した商業的な戦略にある。
まず、前者について解説すると、Sprout鉛筆の開発者は、身近なプロダクトを介することで、日常生活のなかで持続可能性を実行してもらいたいという思想を持ち本製品を考案した。そして、鉛筆を使う子どもたちが植物を育てる楽しさを知ることは、持続可能性だけでなく、環境について考えるきっかけを作ることにつながるのではないか、というオリジナルの発想が多くの教育者や保護者の共感を集めることに成功。
さらに、鉛筆の側面に企業名や個人名を掘り入れることで、会社のグッズやプレゼントとしての利用など、幅広い用途で幅広い世代に認知を高めたそう。
世界には、より明るい未来へとつながりうる素晴らしいアイデアが沢山あふれている。そうしたアイデアをうまく市場にのせることができれば、持続可能性に対して感じている高いハードルが取り払われ、グッと身近なものになるだろう。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。