今回取り上げるのはアメリカの「セレブリティ」と呼ばれる人やモデルの間で話題のブランドで、イスラエルのテルアビブからアメリカのニューヨークに拠点を移した「Urban Sphistication」(アーバン・ソフィスティケーション)。彼らの商品で「ソーシャルメディアへの警告スマホケース」に焦点を当て、インタビューを行った。
ーUrban Sophisticationは、兄妹で作っていると聞いたけど、どうして二人で作ろうってなったの?
すごく自然な成り行きだったんだ。いきなりブランドを立ち上げようってなったんじゃなくて、いつだって互いにポップカルチャーとかファッションに対する情熱を持っていたから。3年前に自分たちのためにTシャツを作り始めたんだけど、よく人から「それどこの?」って聞かれてた。私たちにとって服はメッセージを発信するためのキャンバスだけど、服にはもっと広告的な特質があるから、それを使えば自分たちのビジョンをより多くの人に広めることができると思ってブランドを始めた。
ー「ソーシャルメディアを批判するコレクション」おもしろいね。そこで聞きたいのだけど、個人的にはソーシャルメディアに対してどう思ってる?
ありがとう☺︎ソーシャルメディアについて考えてみたとき、気が狂ったブーメランのような、強迫的に繰り返し跳ね返ってくるような特徴があるように思える。そのブーメランは私たちがインスタグラムを使用するときに繰り返してしまうルーティン(人の投稿のキャプションを分析しすぎてしまうこと、投稿したあと何時間も「いいね!」がついていないかをページを更新して見てしまうこと、人が何をしているか常にチェックしてしまうこと、#want(ほしい)と思わされたものをスクリーンショットしてしまうこと)のたとえ。
でも、インスタグラムにそうやって私たちの脳や日常生活をめちゃくちゃにしている面があることは否定できないけど、私たちのブランドのようなビジネスを発達させて、世界的なコミュニティを作ることにも貢献してるよね。
ーソーシャルメディアにはどんな否定的な側面があると思う?
FOMO(=fear of missing out、取り残されることに対する不安)
ーソーシャルメディアの問題に対する皮肉をファッションに込めた商品を作ろうと考えたのはなぜ?
ブランドでは自分たちの視点からソーシャルメディアでの行動に対する見解や解釈を入れた商品を作った。このプロジェクトで初めに作ったのが「メンタルヘルスへの警告スマホケース」で、スマホを見たときにソーシャルメディアにとりつかれず軽快な気分でいればいいって思わせてくれる。それを含めたこのコレクションはソーシャルメディア時代を生きるすべての人のポートレートだと思ってるんだ。
ー「Social media seriously affects your mental health(「ソーシャルメディアはあなたのメンタルヘルスに悪影響を及ぼします」)」って書かれたスマートフォンケースを売り出しているけど、そのメッセージは個人的な経験からきてるのかな?
もちろん、そう。スクリーンショットコレクションは全部ソーシャルメディアに関連した個人的な経験に基づいてる。私たちはブランドを始めるにあたって、ソーシャルメディアを使う習慣について互いに話したんだけど、ソーシャルメディアが映し出す現実は偽物で、フィルターがかかっているし #ad(広告)も多いけど、それでもソーシャルメディアで見るものは現実社会の何か確かなものとして存在しているように思えるよね。それぞれの商品のデザインは、そんなインスタグラムが現実に影響をもたらすリアルな瞬間をとらえてるんだ。たとえば、プロダクト・リプレイスメント*1スウェットは、ソーシャルメディアの広告能力を可視化させたもの。広告をロゴがつけられるような大きさのスペースに限定するんじゃなくて、あえてスウェット全体をいくつかの広告スペースにわけてる。
(*1)映画やテレビドラマなどの作品に、広告主の商品を登場させる広告手法
ー「ソーシャルメディアを批判するコレクション」が、ソーシャルメディア上で人気なキム・カーダーシアンとかジジ・ハディードのような「セレブリティ」っていわれている子たちにも人気な理由はなぜだと思う?
彼らはソーシャルメディアで批判され続けているから、私のメッセージに共感してくれたのかもしれない。
ーソーシャルメディアを批判することをテーマにしながらもブランド自体がソーシャルメディアでアクティブなのはなぜ?それも皮肉なの?
皮肉でもある。ソーシャルメディアにネガティブな面があるのに気づいていても、その一部であり続けることを選んでるってことなんだ。
ー今の時代にソーシャルメディアから離れるのは簡単ではないと思うけど、ソーシャルメディアとはどう付き合っていけばいいと考えてる?
楽しみながらも、それが映し出す“現実”を信じないように自分にリマインドし続けること。だから私は「メンタルヘルスへの警告スマホケース」を自分のために作ったんだ、リマインダーとなるように。
インスタグラムで人気の「セレブリティ」をはじめ、多くの人が何の問題もなくソーシャルメディアを使っているように見えるが、それらのメディアとの付き合い方には、多くの人が悩んでいるようだ。投稿は一瞬にしてすることができても、その投稿のために写真を何度も撮り直していたって、キャプションを考えるのに何時間かかっていたって何ら不思議はない。二人の考えているように、楽しみながらも少し引いた視点から投稿を見ていくことは、これからもソーシャルメディアを使い続けていくうえで重要ではないだろうか。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。