先日1月19日にHEAPS.株式会社が運営する本メディアBe inspired!主催で「ゲリラシネマ3」が行われた。「映画館“以外”の場所で、社会問題を知って、考えて、行動する」がコンセプトの映画上映イベントだ。テーマは日本でも深刻な社会問題の「フードウェイスト / 食品廃棄」。当日は、現在渋谷アップリンクで公開されている『0円キッチン』を上映。
毎日大量に売れ残り捨てられてしまう食材を救うためにスーパーのゴミ箱にダイブしたり、いきなり一般家庭の冷蔵庫を抜き打ちチェックしたり、未来の大人たちと昆虫食を食べ比べたり…。各地で食材の無駄をなくすために、ユニークでおいしく楽しい取り組みをしている人々に出会い、「食」について、「環境」について考える内容となっている。
上映後は、日本で食に関する社会問題に対して取り組むゲスト4人を招きトークショーも開催。豪華なことに『0円キッチン』の主人公であり、監督のダーヴィド・グロス氏もスペシャルゲストとして参加した。
欧州5カ国を5週間、ほぼ廃棄食材しか食べずに旅をした様子をドキュメントしたロード・ムービーを制作した彼が、本イベントで参加者100人に伝えたかったこととは一体なんなのだろうか。
映画は「フードウェイスト」のための解決策
トークショーで、まずダーヴィド氏は映画『0円キッチン』を制作した背景についてこう述べた。
故郷であるオーストリア中北部の都市ザルツブルクのスーパーのゴミ箱で、まだ食べれられる新鮮な野菜や果物、パンなどを発見したことが最初のきっかけだ。
自分一人では食べきれないほどの大量の食品廃棄をゴミ箱で見つけた僕は、友達を誘ってみんなでシェアして食べたり、クッキングパーティを開催して人を集めた。次第に食品廃棄を食べる活動をウェブで公開するようになり、徐々に人々の注目が集まった。
この活動は内輪だけではなく、もっと多くの人が知っていたほうがいい重大な社会問題だと思い、解決策を模索していく中で、この映画の制作に至った。ここ日本で公開できることをとても嬉しく思う。
エンタメ性と政治的メッセージ性の巧みなバランス感覚
会場でもそうだったが、映画の中のダーヴィド氏はいつも笑顔で楽しそうに食品廃棄で料理をしている姿が印象的だ。そんな彼は「食品廃棄」を映画というエンタメの中で伝える際に、忘れてはいけないポイントがあるとトークショーで強調した。
エンタメ性も人に伝える時に重要であるが、忘れてはいけないのはぼくらの活動はカラオケビジネスではないということ。つまり、食品廃棄に対してのアクションは、真面目で政治的な社会問題を考えるきっかけを作る活動なのだ。確かに少しのエンタメ要素は必要ではあるが、ショーやパーティーが本当の目的ではない。世界では飢餓で苦み、死んでしまう人々が多く存在する中で、食糧の1/3を捨てている衝撃的な真実が存在することを多くの人に知ってほしい。
『0円キッチン』で日本人に伝えたかったこと
ダーヴィド氏が、誰でも楽しく観賞できる映画『0円キッチン』を制作し、日本人に伝えたかったこと。それは先進国の人々が多くの食品を棄てている現状の裏では、飢餓で苦しむ人々が多く存在しているという事実、そして彼らを救いたいという強い思いだった。
実際に、世界では「9人に1人」が、健康で活動的な生活を送るために必要かつ十分な食糧を得られていないのだ。(参照元:WFP)
日本には「もったいない」という言葉、「食べ物を粗末にしない」という禅仏教の精神が根付いている。もっと日本人から食品廃棄を減らす楽しい活動を世界に発信していけるのではないか。
最後にダーヴィド氏は微笑ましい彼自身が体験した小さなストーリーを会場で共有してくれた。
数年前にオーストリアの首都ウィーンのスーパーのゴミ箱を漁っていたところ、ゴミ箱の中に女の子がいた。そして、その子とぼくは恋に落ち3年間も付き合ったんだ。そう、食品廃棄の解決策を模索することは、素敵な恋人を模索していることでもあるのだ。
ゲリラシネマを手がける本メディアBe inspired!も、ダーヴィド氏の『0円キッチン』のように多くの人が“楽しく”社会問題を考えるきっかけを作る存在でありたいと改めて実感させられたイベントだった。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。