“地域課題”を考えることをストリートシーンに。傍楽(側にいる人を楽にする)マインドが作る、新たな原宿カルチャー|都会のローカルコミュニティ、「原宿キャットストリート CATs」の活動日誌 #003

Text: Genki Nakamura

Photography: Shiori Kirigaya unless otherwise stated.

2019.9.24

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こんにちは、CATs(キャッツ)の中村元気(なかむら げんき)です。
ここ3回ほど、CATsっていう、原宿の裏通りにある、個性的な店舗の立ち並ぶキャットストリートのお店の人を中心とする人たちと始めた地域コミュニティ活動の話をしてきました。ここで行っているそれぞれの活動の根底には「消費の中心地」といわれる原宿だからこそ「消費」について考え、都会だからこそ「困ったときに助け合えるような関係性」を作りたいという共通した思いがあります。

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左が中村元気
都会のローカルコミュニティ、「原宿キャットストリート CATs」の活動日誌 についてはこちら

CATsの新しいけど、新しくない活動

CATsに新しい活動が加わりました。その名も「CAT Street Circular Hack Project(キャットストリート サーキュラー ハック プロジェクト)」。「circular=循環」という意味で、地域で言えば、今あるものやいらなくなったものを再活用、つないでいくことを目指しています。「hack=DIY精神を持って既存の物事の解決を図る」というような意味で、地域で言えば新しく調達することなく、地域にある資源を活用することで、地域をよくする素晴らしいアイディアを考え、実行するという感じでしょうか。

私たちが特にこのプロジェクトで進めているのには、観光地としての原宿で多数発生している「ゴミ」の問題が大きく関わっています。それこそ月に一回開催しているゴミ拾いの活動「CATs Cleanup」に参加するみんなと、地域を考える階段を一段上ってみる、新しいようで新しくないプロジェクトです。

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コルクボードに貼られたCAT Street Circular Hack Projectに参加している店舗に配っているフライヤー
以下がフライヤーに書かれている内容

my BAG
my BENTOBOX
my CUP
no FOODLOSS

CAT Street Circular Hack Projectは
ローカルファースト&サステイナブル
な循環型まちづくりプロジェクトです。
働き、暮らし、訪れる私たちが気持ち
よく過ごせる街を目指し地域の環境課題
を遊び心とイノベーティブなアイデアで
解決していきます。

具体的には協力してくれている店舗のレジ前に、上記の写真にあるような取り組みを紹介するプレートやチラシを置いて、お客さんへの接客時のコミュニケーションツールにしてもらったり、スタッフの間で少しずつ意識を高めていったりするために使ってもらっています。幾つかのアクション項目をそれらに印刷していて、例えばマイカップやマイタンブラー、マイバッグ、マイ弁当箱を携帯することなんかもあります。キャットストリートのカフェでコーヒーを持参したカップに入れて持ち帰ったり、タンブラーに水をくませてもらったり、Shibuya CAST.前のキッチンカーなんかでお弁当箱にお惣菜やご飯を入れてもらったりするとかができるんです。まずは自分たちがやってみる、やりにくいところは直す、いいことは他のみんなにも提案するスタイルで少しずつ仲間を増やそうと思っています。

KEENだけど、自分的にはCATsのなりさん

CAT Street Circular Hack Projectに参加してくれているお店には、僕が日頃から親しくしてもらっているキャットストリートの仲間が働いていることも多いんです。今回紹介したいのは、そんなうちの一人でCATs Cleanupをきっかけに出会ったKEEN GARAGE 原宿店の成尾さん、通称なりさん。鹿児島の島出身で自然に囲まれて幼少期を過ごしていましたが、24歳で福岡から上京して、アパレル店員として働いていました。

30歳のとき東日本大震災が起こり、被災地の映像を見て、「仕事を辞めてでも行かなきゃ」となり、会社を辞めて無職のまま3ヶ月間ボランティアをしたことを機に自分のなかで価値観が大きく転換したそう。このままの消費や生活スタイルを続けていくことはできないと思うようになったと聞きました。その後、原宿店のオープニングスタッフとしてKEENに入社。本社は今全米でも多くのブランドがマーケティング、ブランディング部門を置くポートランドにある、DIY精神溢れるブランドです。生産における環境負荷の削減はもちろんのこと、西日本豪雨などの自然災害の被災地の支援なども行っています。

KEEN GARAGE 原宿店の成尾さん
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写真のKEENのスニーカー「UNEEK EVO」のうち、沖縄県八重山郡西表島にのみ生息するイリオモテヤマネコをモチーフにした商品を購入すると売り上げの10%が同地の豊かな自然や文化を継承していくことを目的とするプロジェクト『Us 4 IRIOMOTE(アス・フォー・イリオモテ)』で活用される。

CAT Street Circular Hack Projectへの参加を機に、今までも実はあった店内の誰でも使えるウォーターサーバーの存在をみんなに知ってもらえるように発信していく予定です。水をくめることによって減るのはたかがペットボトル一つですが、それをたかがペットボトルと考えずに積極的になれるのもKEEN、そしてなりさんなんだよなーと思っています。

自分が思う、なりさんのことをもう少しお話しします。CATs Cleanupにも初期から参加している一人で、何と言ってもヒゲの濃さのインパクトがすごい山男という言葉がぴったりの方です。キャットストリートでの活動をスタートさせた当初からいっぱい相談や話をして性格や考えていることもなんとなくわかっていて、一緒にいてもとっても居心地がいいし、もちろん絶対的な信頼を置いています。自分的にはストアマネージャーという肩書きよりも、CATsの仲間の方がしっくりきます。

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今回の活動を始めたことで、楽しいことから、環境問題のような話までなんでも話せる成さんのような地域の仲間がだんだんと増えていて、飲み会ではかなり深い話になることもしばしば。みんなブランドを背負っているのに、背負っていないかのような軽やかさで活動に協力してくれ、そしてこういう方法なら協力できるという提案をしてくれるところや、自分の信念を貫いて意見をくれるところなど、つまりは街のことが自分ごとになっている人たちなんだろうなと思っています。

この、「自分ごと」という言葉はめちゃくちゃ気になっているワードでもあります。みんなが当たり前のように使っていて、簡単に達成できそうなことのように聞こえますが、これが何より難しい。自分以外のことも自分のことのようにするということですから簡単なわけないんです。他人を気遣う、地域を気遣う、街を愛するということをひっくるめて「自分ごと」ということだと思っています。「働く」というよりも、「傍楽」(側にいる人を楽にする)マインドが、本当の意味で地域を盛り上げることにつながる気がしています。

地域で循環って例えば?

地域の循環って言ってもどういうことなのか理解しづらい人もいると思うので少し説明します。今までの記事でも紹介していますが、地域のなかでいろいろな循環を生み出すプロジェクトといえば、例えば「CATs Urban Compost Club」のコンポストでしょうか。表参道の落ち葉と三代続くお米屋さんの小池精米店から出る米ぬかを混ぜ合わせて作っています。もちろん運搬方法も手や台車、自転車に乗っけて運んでいます。

作るだけじゃ真の意味で循環じゃないよね?と言う人もいるので、その先のストーリーも少し紹介しますね。できた堆肥はさまざまな人に使ってもらうのですが、例えば地域のガーデニングが好きなおばさんやベランダ菜園をしている友達、少し離れたところで貸し農園を借りて畑をやっている人、あとは何と言ってもキャットストリートの花壇でしょうか。花壇に植わっているりんごの木の栄養に変わり、最後はみんなで楽しめるシードルになって帰ってきます。

落ち葉と米ぬかで堆肥を作り、その堆肥を使ってりんごの木を育て、そのりんごでシードルを作り、自分たちやみんなで飲むという大きな循環の輪ができているのです。シードル作りこそ長野で行われているものの、ほとんどの部分はキャットストリートという非常に小さな地域内で行われていることです。ほんの直径数十メートルの内側で、土作りから食べられるものを作る過程全てが完結しているんです。こういった活動が小さなコミュニティのなかで行われていること自体が、また原宿という場所に対して多くの方が抱く消費地のイメージと大きなギャップのある活動であることが、楽しい理由なんじゃないかなと思っています。

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全員参加の地域コミュニティ

「CATs Cleanup」もそうですが、この「CAT street circular hack project」もストリートの地域活動にいつも関わってくれている皆さんが参加する活動なんです。普段から通っていたり、暮らしていたりする場所だからこそ、大事にしたいという気持ちがあるんです。そういう気持ちが人をつないで、つながりの輪ができてきて、その輪が生み出すものこそ、地域の循環なのかなーと思っていたりします。

なので、キャットストリートに関わるみんなにとって、ここで起こること全てが、関係ないことは一つもないと思っています。全員が当事者として街に向き合うことで、街を好きになり、リスペクトや愛が生まれると信じています。

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巡り巡って

そんな場所へのリスペクトや愛が持てるということは、ゴミを捨てるという行為を未然に防ぐことになると思っています。日本人的な体験かもしれませんが、小中高って自分で学校を掃除しますよね。あとは、場所を借りるときだったら「使う前よりきれいにして返そう」とかいうことを言われたり、運動部がグラウンドに一礼をしてから入ったりなんてのもありますよね。必要のない習慣だという人もいるかもしれませんが、必要か必要じゃないかというよりは、精神的な意味があるのかなと思っています。

気持ちが巡って、アクションに結びついて、仲間ができて、ムーブメントになり、みんなの当たり前ができていく、そんな大きな物語の始まり小さな体験をキャットストリートで作っているんです。

今回の連載で紹介した、原宿キャットストリートで出会った人
KEEN GARAGE 原宿マネージャー 成尾さん

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中村元気(Genki Nakamura)

Instagram

1992年、埼玉県生まれ。 原宿のキャットストリートという通り沿いで地域活動 CATsを始める。地域に関わる様々なレイヤーの人達と居心地のいい街を作るために日々活動中。消費の中心地だからこそ、クリーンアップなどお金では手に入らない人間関係を作る活動や、表参道の落ち葉を使ったコンポストなど生産側になりゼロから価値を生み出すアクションを実験的に行う。それ以外の活動には都市型屋上農業や、地域のみんなで行うキャンプや山登りなどがある。また、2018年には地域のゴミ問題の根本解決を目指すために「0 waste=ゴミ・無駄のない」ライフスタイルの提案を行う530weekという活動を立ち上げ、5/30にイベントを開催した。

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CATs

Facebook

東京の中心で昔ながらの商店街のような空気感を持つ、CAT street で働く人たちがメインのコミュニティ。商いをする人たちが、商い以外の活動を通して繋がっている。”ACT DIFFERENT” というコンセプトを掲げていて、消費の中心地、原宿で日常的に消費について考え、行動できる仕組みを作ったりもしている。

目的:
*都市の真ん中で、地域に関わる個人や店舗が有機的につながること
*地域に関わる人が、当たり前の日常に少し変化を起こすこと
*地域に関わる人が、生活に必要な物だけを選ぶライフスタイルが浸透すること

活動:
*Cleanup
*Compost
*CAFE SHIBUYAGAWA
*CAMP CLUB
*Meetup

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