UNIADによると、世界のツイッターの利用者は3億2000万人、フェイスブックは16億5000万人、インスタグラムは5億人を突破した。発展途上国でのSNS利用者数も増加傾向にあり、SNSは多くの人が使えて自分の考えを発信できる手段として広く使われるようになってきている。
そんななかで、若い世代を中心にインターネット上で「ムーブメント」が作られることがある。それは一体どんなものなのだろうか?
「丼」じゃないよ、「#」だよ。ハッシュタグ・アクティビズム
ウィキペディアにも載っている、“ハッシュタグ・アクティビズム”という言葉。ツイッターをはじめとするSNS上で「#(ハッシュタグ)」をつけて、意見を主張したり人々に議論をするよう呼びかけたりすることを指している。
ハッシュタグ・アクティビズムはマイノリティの差別問題や権利向上に関するものが特に多いが、政治や社会問題、チャリティのためなどさまざまな分野で行われている。
多数起きているハッシュタグ・アクティビズムのなかでも有名なのは、白人警官に武器を持たない黒人少年が銃殺された事件を発端にした#BlackLivesMatterではないだろうか?
#BlackLivesMatter co-founders @aliciagarza, @opalayo & @osope named to the 2015 #POLITICO50 https://t.co/pMrpKWSiCb pic.twitter.com/GNz3IAlcDY
— Victoria Brownworth ☣ #StayHomeSaveLives (@VABVOX) November 13, 2015
「黒人の命も大切だ」という意味で、アメリカで根強いアフリカ系アメリカ人に対する人種差別への抗議活動をリードするものとして役割を果たした。ここでは今までにBe inspired!で取り上げたハッシュタグ・アクティビズムを、いくつかピックアップして紹介する。
#Ableism
アンディ・ウォーホルが創刊した雑誌「インタビュー」の表紙に、健常者であるモデルが「車椅子」に座りポーズをとった写真が使われたことに対する抗議で使われ、ツイッターを炎上させたハッシュタグ「#Ableism(エイブリズム)」。
このハッシュタグを使うことで「健常者至上主義」へ疑問を投げかけ「障害者に対する差別」が訴えられた。そのなかでも、自らを身体障害者アクティビストと称するオフェリア・ブラウン氏のツイートは3万リツイート以上を記録している。
@KylieJenner wow being in a wheelchair is so fun and fashionable! #Ableism is the ultimate fashion statement! pic.twitter.com/lOScQnODhy
— moved to @opheliajcbrown (@bandaidknees) December 1, 2015
#JustATampon
これがSNS上で使用された目的は、「世界中の人々に『生理』についての知識を深めてもらうため」と、「『生理』というタブーを破るため」、そして「世界中の女性を支援するため」だった。生理用品が手に入れられる女性は世界に12%しかおらず、アフリカ諸国の1/10の少女が生理のせいで学校に行けないという事実を人々に伝えるだけではなく、チャリティで集めた資金で生理用品をアフリカに送るという活動も行われた。
#Justatampon support the effort to stop taxing a female necessity :Text Tampon to 70007 to donate £3 to @planUK pic.twitter.com/Q52zgd2BKe
— Jon Snow (@jonsnowC4) June 8, 2015
#FairTuesday
アメリカのサンクスギビング(感謝祭)の翌日の金曜日(11月の第4金曜)は、ブラックフライデーと呼ばれ大規模なバーゲンが国内中で行われることで知られている。この日は小売店が混雑するだけでなく、商品の取り合いや客が店員に暴行を加えるなど混乱が相次ぐ日でもあるのだ。その翌週の月曜日はサイバーマンデーというオンラインショッピングのセール開始日で、多くの人がオンライン上で「爆買い」するという。どちらも人々の「買い物に対する欲望」が露呈する日だといえるだろう。
そこで始まったのが#FairTuesdayだ。安い商品を爆買いするのではなく、フェアトレード商品や生産者や環境、健康に配慮した「フェアなもの」を選んで買おうという呼びかけで、人々に新しい価値観を提案している。
Cooking up a #fairtrade breakie & sharing fave ethical gifts: https://t.co/V9dyHN8gLM #fairtuesday @HilaryPearlson pic.twitter.com/UQQDRgXmMG
— Breakfast Criminals (@breakfastcrmnls) December 1, 2015
#BoycottStarWarsVII
肯定的なハッシュタグ・アクティビズムが多いなか、残念ながら否定的なものも実際にはある。#BoycottStarWarsVIIは、スターウォーズの新作映画の主役がアフリカ系アメリカ人だったことを気に入らなかった白人至上主義者たちが「スターウォーズを見に行くな」と呼びかけたときに使われたハッシュタグだ。彼らのツイートにはスターウォーズの批判だけでなくアフリカ系アメリカ人に対する差別発言が多数含まれていた。こういったネガティブなハッシュタグが使われているのは悲しいことだが、ハッシュタグ・アクティビズムを見ていくと世の中のあからさまな「負の部分」をも知ることができるのだ。
Racist idiots failed miserably with #BoycottStarWarsVII. Ps: do they not realize Darth Vader was a black man? pic.twitter.com/X64NSQAlDP
— Ish Morris (@TheNameIsIsh) December 19, 2015
このように、多くの人に声を届けられるSNSを使ったハッシュタグ・アクティビズムは大きいものから小さいものまで各地で起きており、これからも増えていくかもしれない。Be inspired!ではハッシュタグ・アクティビズムを毎週1つ取り上げ、それを使って現代社会を読み解く連載を始める。第1回目は、今も続く#FreeTheNippleのムーブメントについて紹介する予定だ。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。