「おいしいと思う瞬間はみんな平等」5人のクリエイターが語る「みんなでご飯を食べること」の大切さ<Sponsored>

Text: Kotetsu Nakazato

Photography: Yurina Miya unless otherwise stated.

2023.2.28

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 街中に溢れるファストフード店、コロナ禍に更に注目を集め日常化したフードデリバリーサービス。私たちの食生活や食を通したコミュニケーションは近年大きく変化した。便利さは増していく一方で、みんなで料理を作り、食卓を囲み、たわいのない話や時事ニュース、相談事を共有する時間はどのくらいあるだろうか。

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 2022年の初夏に季節の食材や手作り料理をみんなで味わう不定期開催の集い「土フェス」は始まった。タトゥーシールブランド「opnner(オプナー)」のKaho Iwaya、映像監督・脚本家・写真家の枝優花、編集者・フォトグラファーの中里虎鉄、モデル・俳優の山本奈衣瑠、そして本誌NEUT Magazine編集長の平山潤など、ジャンルの垣根を越えたクリエイターが毎回テーマ(食材や国縛り、季節など)に合わせたご飯を一緒に作り、食べるために集まっている。2月に開催された6回目は、「ほんだし®」を使い調理し、食卓を囲んだ。
 私たちの食生活に寄り添い、忙しなく過ぎる日々にホッと一息温まる味と時間を与えてくれる「ほんだし®」を製造する「味の素株式会社」は、創業114年の歴史と実績を持つ老舗企業。114年という長い期間、研究・実践し続けているのは、商品開発や製造技術の向上だけではない。現在味の素株式会社ではフードロス問題に対し、これまで培ってきた技術やアイデアを活かし、限りある食資源を使い切ることを促進する「TOO GOOD TO WASTE 〜捨てたもんじゃない!〜™」という活動を行っている。

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 この「TOO GOOD TO WASTE 〜捨てたもんじゃない!〜™」では、企業として取り組むアクションとして「ほんだし®︎」を製造する過程で出るかつおの頭や内臓を発酵させ、魚醤や有機質飼料・肥料に加工し、中骨はカルシウム食品の原料として使用。また、かつおを煮出した煮汁も「ほんだし®」のうまみ成分として活用するなど、従来であれば廃棄されていたような部分までも活かし、本プロジェクトのタイトルにもあるように「捨てたもんじゃない」を取り入れている。また日本のフードロスの約半分は家庭内から出ていると言われている現状(参照:環境省 食品ロスポータルサイト)に対して、家庭でもフードロスを減らせるように、レシピの開発や調味料の研究を通して消費者とコミュニケーションをとっている。
 今回は「TOO GOOD TO WASTE ~捨てたもんじゃない!~™」のテーマに合わせて、手作りご飯を持ち寄ったり、調理をしたり、食卓を囲みながらみんなでご飯を食べること、フードロスや食材との向き合い方などについて「土フェス」の皆さんにメンバーである中里虎鉄が話を聞いていった。

食材について考えている時間が、その生命と繋がれる時間

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中里虎鉄:土フェスでは毎回、旬の食材や、手作り料理を持ち寄ってみんなで食べていますが、土フェスを通して食との向き合い方で変わったことってありますか?

Kaho Iwaya:このメンバーはすごく食べることを大事にしているなって思う。それはご飯を作る過程から一緒にやっているからっていうのもあるかもしれないけど、「おいしい」をしっかり感じる時間がいつもある。

枝優花:最初に30分くらいご飯を味わう時間があるよね。だから、いつになっても「あのときに食べたご飯おいしかったな」って思い出せるんだよね。

山本奈衣瑠:確かに、作る時間も長いから、ずっと待たされているしね(笑)。あといつも虎鉄が気仙沼の牡蠣や三重県のイカとか、地方の食材を持ってきてくれるけど、その食材を作っている人やその土地についても話してくれるから、ただ単に食材を食べているっていう感じじゃない。ストーリーも一緒に食べている感覚だから、一度食材や料理に向き合いたいっていうのがあるかも。

Kaho Iwaya:そういうストーリーを知ると、スーパーで食材を選ぶときも結構考えたりするな。安ければいいわけじゃないし、ただの食材じゃなくて、生命なんだって考えるけど、一番安いものを買うこともあれば、一番高いものを買うこともある。正直どれを選んだらいいか分からなくて、今は中間の値段のものを買ったりしてる。

山本奈衣瑠:でもそれが大事だと思う。スーパーで一瞬その手を止めて、買おうとしているものの生命のことを思うとか、値段に迷うとか、その食材について考えている時間が、それらと繋がれる時間だと思ってる。

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山本奈衣瑠

中里虎鉄:そう思うと、フードロスを減らしていくことも、その生命や食材のためだなと感じます。日本のフードロスの約半分は家庭から出ているって言われていますが、みなさんはフードロスに関して何かやっていることや意識していることはありますか?

山本奈衣瑠:なるべく捨てるものを減らしたいなって思ってる。そういうときにきんぴらってめっちゃいいよね。ごま油で炒めたら全部おいしいし。この間、八百屋さんに行ったら桜大根を貰ったんだけど、余った漬け汁にキャベツの芯の部分を入れて浅漬けみたいにしてもう一回食べてみたんだけど、そうやって繰り返し使えるものは使いたい。

Kaho Iwaya:簡単にできるのっていいよね。私も出汁をとった後の昆布や鰹節をみじん切りにして佃煮にしたりする。それと、去年の夏に食材を大量に買って冷蔵庫に入れてたら、冷蔵庫が古かったのもあるんだけど、たくさん腐らせちゃって。それがすごいショックだったから、最近は食べる分しか買わないようにしてる。

山本奈衣瑠:外食するときもそうだけど、自分がどのくらいの量を日常的に食べれるかっていうのを把握しておくのって大事だよね。おいしそうだからついついたくさん頼んじゃうんだけど、注文するのを一旦ストップするっていうことを覚えた(笑)。

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Kaho Iwaya

「うまい」は土と水、そして人から生まれている

中里虎鉄:味の素株式会社は企業としてもフードロスを減らす取り組みをしていたり、「ほんだし®」の原料になる鰹節を作る工程は全て熟練の職人さんによる手作業であったりと、スーパーに並んでる景色やCMからでは知れないことがあるけど、それらを知ってどう思いましたか?

Kaho Iwaya:今まではそこに人がいるって想像しづらかったな。工場で機械が作っていると思っていたから、「ほんだし®」を使ったら手抜きなんじゃないかって思っていたけど、職人さんがそこにいるのを知れるのは安心するね。実際に美味しいし。

山本奈衣瑠:私は普段そこまで料理をしないから、「ほんだし®」は本当に最高なのよ。これを入れれば誰もが知ってる心が休まる味になるから。正直仕事や家事、勉強が忙しい人たちは、わざわざ味の素の取り組みを検索しないじゃない。だからその人たちに何かを考えてもらうためには、情報も大事だけど、「うまい」っていう体験が絶対に必要。しかもその「うまい」が地球から生まれたものを誰かの手作業で作られてるっていうのがやばい。

平山潤:今回の「ほんだし🄬」のプロジェクトの担当者さんも言っていたけど、全てのものは土と海からできていて、それを自分たちが食べてまた土に還っていく。この流れを長期的に続けていくために、企業が環境問題に意識を向けることは必要なことだし、それがサステナブルだからね。

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平山潤

おいしいで繋がり、おいしいで落着する

中里虎鉄:簡単においしいを体験できて、「ほんだし®」を使うことで結果として環境問題への取り組みに自分も参加できているのはありがたいですよね。特に土フェスのメンバーはそれぞれのお仕事や活動が忙しくて、全ての問題に意識を持って取り組むことって難しいときもあると思うし。

平山潤:そもそも食べるっていう行為自体がすごく他者理解に繋がっているし、社会的な活動だと思うんだよね。しかも都市で一人で暮らしていると友達や仲間が作ったご飯を食べることってなかなかないと思うけど、この時間って相手を知る時間でもある。例えば全然政治的思想が違くても、「おいしい」が共通で繋がれて、「おいしい」で一旦落着できる。それぞれが考えていることや、大切にしていることは違うけど、どんな社会課題でも対話が大事。同じ釜の飯を囲むことが、その対話のきっかけを作っているんじゃないかな。

山本奈衣瑠:満月の日にも似たようなことを感じる。みんなイライラしながら街を歩いていても、「あ、満月綺麗だな」って一瞬思うじゃん。あの瞬間ってみんな平等だなって思うんだよね。どんな状況でも、みんな満月が綺麗と思えるあの感じ。今日もみんなでお鍋おいしそうって見てる時間がすごく平等だなって感じた。

枝優花:土フェスのメンバーはその瞬間がいっぱいあるよね。Kahoちゃんが出し巻き卵を作っているときに、綺麗にひっくり返せたら、みんなでワー!って盛り上がったり、もっとおいしく食べられるアレンジ方法見つけたときに褒めて真似したり。

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平山潤:その人のことや、その人の作品が好きとか嫌いとか、そういうの全く関係なく、同じ場所で同じタイミングで同じことを思っているっていうのが、他者理解においてすごく大事だよね。とてもアナログ的なことだなって思うけど、こういう時間は日常のなかにあってもいいなって思う。

Kaho Iwaya:そういう時間に助けられたこともあったな。家で妹と二人きりのときに喧嘩しちゃうことがよくあったんだけど、ご飯を一緒に食べることで「さっきはごめん」って泣きながら言えたりして。家っていう逃げれない環境だからこそ、ご飯のときにリセットする感じがあったのかも。

枝優花:映画やドラマの撮影現場でもそういうのある。私の現場ではなるべくご飯の時間は一斉にみんなでとるようにしていて。それは撮影を進めるなかで揉めたりすることってやっぱりあるんだけど、その状態で部署ごとに食べたり、食べれる人から食べてってなると、また殺伐として撮影が始まっちゃう。一回ぶった切ってとりあえずみんなで食べようってすると、次どうしようかって話を一旦冷静にできたり、食べる時間を共有することで、気持ちがまた繋がるんだよね。

平山潤:違っても共存できるって思えるよね。多様性って自分とは違うアイデンティティやバックグラウンド、価値観を一つにしていくことじゃない。違いがあることを前提に排除するんじゃなく、共存していくことなのかなと。その小さいバージョンを食卓でやっている感覚だよね。

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中里虎鉄

中里虎鉄:おいしいを共有することで共存を認識できるのは希望に感じますね。一人でご飯を食べたり、作ったりすることについてはどう思いますか?

Kaho Iwaya:上京したてのときに、一人でご飯を食べるのが初めてだったから、何を食べればいいのか分からないし、食べても味気なくて寂しいってすごい感じていたの。だけどそれを妹に話したら、「一人で食べれただけで偉いから、拍手しよう」って言ってくれて。その言葉にすごく励まされてからは、一人鍋とかするようになった。普段だったら遠慮しがちな豚肉を一人でたくさん食べたり、一人でじゃないとできない食べ方をして贅沢を味わったりしてる。

枝優花:お昼から一人でお酒飲みながらとかも最高だよね(笑)。私はあまり飲めないけれども…。一人で食べてる時間も好きなんだけど、私は一人でご飯を作る時間がすごく好き。仕事のときは常に頭を動かしているんだけど、常にその状態なのはやっぱり大変で。食材をひたすら薄く切ったり、ひたすら重ねたりする時間が一番無心になれる。手動してれば何かできるってすごくない?脚本書くときにただ手動してるだけじゃ最低みたいなのができあがっちゃうから(笑)。

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枝優花

みんな丸裸だからこそ、許し、平等になれる

中里虎鉄:みんなで食べることで得られる体験にはどんなものがあると思いますか?

Kaho Iwaya:一人でご飯を食べていてももちろんおいしいんだけど、味を覚えていられない。誰かとご飯を食べることは、その時間のバックアップを他にも取っている状態に近いかも。後になって覚えている方が、「あのときのご飯おいしかったね」ってリマインドしてくれることで、おいしかった記憶がちゃんと残る。

山本奈衣瑠:そう!おいしいとか、おいしくないとか、楽しいとかを自分だけじゃなくて、誰かと共有することで、思い出としてしっかり残るんだよね。自分も相手も、その味もしっかりそこにいたって感じられる。

枝優花:私、もともとご飯を食べている姿を見られることが、自分の恥部を見られているようで恥ずかしいと思っていたんだけど、今ではご飯を食べている時間に、その人が今までどういった人生を送ってきたかが垣間見えるのが面白いなって思ってる。この前友達と二人でご飯を食べているときに、その人がすごい勢いでご飯を食べてて。「落ち着いて!」って言ったら、その人は兄弟が多かったから、早く食べないとなくなっちゃう環境で育っていたことを話してくれたの。不意にその人が持つクセだったり、今までの生活なんかが見えるのって、誰かとご飯を食べているときくらいなんじゃないかな。

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山本奈衣瑠:おかずを先に取り分けたい人もいたり、丼みたいに白米の上におかずを乗せるのが嫌って人もいる。そこにはそう思う理由とか、エピソードってあるもんね。

枝優花:そういう部分って仕事でのコミュニケーションでは見えないから、その人の素の一部を知れる感じなのかもしれない。人間が丸裸みたいになっている状態を共有しているっていうのも、さっき話していた相手を許せたり、一度平等になれたりする理由なのかも。

平山潤:コロナもあって同じ鍋を囲むっていうこともハードルが高くなっていたと思う。だからこそこうやってご飯を一緒に食べる時間を共有することで、親密になったり、警戒心を一つ下げられるのかな。そうやってコミュニティを形成することもあるもんね。

山本奈衣瑠:それを繰り返して、より仲良くなったのが土フェスだもんね。

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 冒頭でも記述しているが、日本のフードロスの約半分が家庭から出ていることを考えると、企業の取り組みだけで解決できる問題だとは思えない。各家庭任せにせず企業としてできることを取り組み続ける企業がいると知れたなら、私たちも企業任せにせず自分たちにできることから始めてみたい。環境負荷を減らすため、フードロスについて考えることは、こうして友達や家族、仲間と過ごす「大切な日常をどう守っていくのか」ということなのではないだろうか。
 そしてご飯をおいしいと感じることには、どんな上下関係も、バックグラウンドも関係なく、ご飯の前では誰しもが平等になるのかもしれない。コロナパンデミックを経験した私たちは、こうしてみんなで集まってご飯を囲むことに少しばかりか抵抗が生まれてしまったようにも思うが、一つの空間で「おいしい」を共有することは、いろいろなストーリーを持った人が共存していることを再認識するきっかけにもなりうる。それぞれが持つ出汁が集まり、よりおいしい、より温かな鍋となるように。

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食のここ、あそこ、うらっかわ|味の素

Website

大切な人と、食卓を囲みながら、いつもの食事のことや、口にする食べ物の背景を想像してみる。「食のここ、あそこ、うらっかわ」を知る。そんな機会をつくってみました。
この記事で紹介した5人のクリエイターたちの食事会の様子を収めた映像や、その食事会でも使った、「ほんだし®」をつくる工場を、クリエイティブスタジオHUGのメンバーが取材した映像などを公開。この記事を読んだ方は、ぜひこちらもチェックしてみてください。

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Kaho Iwaya(opnner)

Website / Instagram

ポートランドのタトゥー文化に影響をうけ、日本でのタトゥー文化を拓くため2015年に〈opnner〉を立ち上げる。タトゥーシールを制作販売する他、タトゥーの図案も担当する。
「タトゥーというのは、体が変わろうとも人生を共存できる最高の励ましであって、永遠のジュエリー。」
そのことを伝えるため、タトゥーのイメージを変える、そんな入り口になれるようにopnner を続けている。考えを表現する媒体として文筆や、イラストの仕事も行っている。

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枝優花

Twitter / Instagram

映画監督/写真家。1994年生まれ。群馬県出身。2017年、初長編作品『少女邂逅』を監督。主演に穂志もえかとモトーラ世理奈を迎え、MOOSICLAB2017では観客賞を受賞、劇場公開し高い評価を得る。香港国際映画祭、上海国際映画祭正式招待、バルセロナアジア映画祭にて最優秀監督賞を受賞。2019年日本映画批評家大賞の新人監督賞受賞。また写真家として、さまざまなアーティスト写真や広告を担当している。

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山本奈衣瑠

Twitter / Instagram

モデル、俳優。2022年3月に公開し主演を務めた映画「猫は逃げた」(今泉力哉 監督)がU-NEXTで現在配信中。
さらに今後、映画「ココでのはなし」(こささりょうま 監督)、「走れない人の走り方」(蘇鈺淳 監督)とそれぞれ主演を務めた2作の長編映画の公開を控える。
おいしいものを食べるのが好き。
最近は腹八分目がどこなのかを模索中。

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中里虎鉄

Twitter / Instagram

1996年、東京都生まれ。編集者・フォトグラファー・ライターと肩書きに捉われず多岐にわたり活動している。雑誌『IWAKAN』を創刊し、独立後あらゆるメディアのコンテンツ制作に携わりながら、ノンバイナリーであることをオープンにし、LGBTQ+関連のコンテンツ監修なども行う。

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平山潤

Twitter / Instagram

1992年、神奈川県相模原市生まれ。成蹊大学経済学部を経て、新卒で「HEAPS.株式会社」に入社。入社後すぐに、同社が運営するウェブメディア『Be inspired!』の副編集長となり、1年後には編集長に。2018年10月より『NEUT Magazine』創刊編集長を務め、現在はNEUT MEDIA株式会社の代表も務める。

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