今やK-POPは韓国国内だけでなく、世界を巻き込み、ブームの次のステージに進んでいるように思う。米Billboardのグローバルチャートに韓国アーティストがチャートインすることは珍しくなくなり、そのなかでもチャート1位にランクインするアーティストも出てきている。これは世界の音楽界にとってK-POPがなくてはならない存在になっている証拠だ。
そんななか、自分たちを「多国籍オルタナティブK-POPバンド」と称し、これまでのK-POP、そして韓国のみならずアジアに対するイメージを再構築するアーティストクルーBalming Tiger(バーミングタイガー)が、今K-POP界に新たな風を吹き込んでいる。
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韓国ソウルを拠点に現在11人のメンバーで構成されるBalming Tiger。他のK-POPグループとの大きな違いは、メンバー全員が歌うわけではなく、音楽プロデューサーやクリエイティブディレクター、映像監督やマーケターなどが所属していることだろう。かれらは音楽やビジュアルを自分たちで作り上げるだけでなく、届けるところまでを含めて一貫してチームで行なっている。そんな自由な体制で2018年にキャリアをスタートさせたBalming Tigerは昨年9月にBTSのリーダーRMをフィーチャリングに迎えた「SEXY NUKIM」が世界中で大ヒットし、リリース翌日にはiTunesのワールドワイド・ソングチャートで1位を記録した。この曲をきっかけにBalming Tigerを知った人も少なくないだろう。
そんなBalming Tigerが今年7月に開催されたFUJI ROCK FESTIVAL’23に出演し、会場を熱狂させた。かれらの音楽はジャンルにも縛られず、一曲ごと独自の世界観を演出し、ライブを見ているのにも関わらず、演劇を鑑賞しているかのような気分にもなる。メンバーのSan Yawn(サン・ヤン)、Omega Sapien(オメガ・サピエン)、Mudd the student(マッド・ザ・スチューデント)、sogumm(ソグム)、bj wnjn(ビージェー・ウォンジン)、Hong Chanhee(ホン・チャニ)がアニメタッチの顔が描かれた箱を頭に被りステージ上に現れ、2022年にリリースされた「Kolo Kolo」を披露し、Balming Tigerワールドへの幕が開けた。
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シングルカットされた「Almadillo」「SEXY NUKIM」「JUST FUN!」「Trust Yourself」はもちろん、メンバーのソロ楽曲、そして未発表曲を8曲もパフォーマンスした。未発表曲が多かったのにも関わらず、覚えやすいフレーズでのコールアンドレスポンスやサビ前で大きく作り上げるモッシュピットなど、知らない楽曲でも誰もが楽しめるように、かれらは最大限に観客との距離を縮めていった。Balming Tigerのエネルギーに観客が応え、観客のエネルギーにBalming Tigerが応える。そんなエネルギーのぶつかり合いのような空間に圧倒され、あっという間に1時間のライブを終えた。今回はそんなライブを終えた直後のBalming TigerからSan Yawn、Omega Sapien、Mudd the student、sogumm、bj wnjn、Hong Chanhee、Henson Hwangがインタビューに応えてくれた。
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大切な友達と成長していけることが全て
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ー今日はお疲れ様でした!FUJI ROCK FESTIVAL ’23への初出演はどうでしたか?
Omega Sapien:フジロックは僕たちにとって夢のステージだったので、準備もたくさんしていました。その結果をいい形で出せて嬉しかったです。
Hong Chanhee : ミスは何回かあったけど(笑)。でもうまくできたね。山に囲まれた土地なので、自然のパワーも感じていました。
Mudd the student : Omegaが話してくれたように、僕もずっとフジロックに出たいと思っていたし、いろんなロックスターたちが立ったステージに自分たちも立てたことが嬉しかったです。
Hong Chanhee : 100 gecsはすごく好きなので、同じ日にステージに立てて嬉しいです!このインタビューがあって見に行けないんだけど(笑)。
ーすみません(笑)。結成から5年が経ったと思いますが、改めてBalming Tigerが結成された経緯について教えてください。
San Yawn : きっかけがあったわけではなくて、自然にできていったんですよね。一緒に変なことをやりたくて、僕が一人一人集めていきました。
ー音楽を作る際に、多くの場合は外注でプロデューサーに楽曲制作の依頼をすることがあると思うのですが、Balming Tigerの場合はメンバー内で制作からPRまで行なっています。そうした体制を取りながら活動することでよかったと感じることはありますか?
Omega Sapien : 自分の好きな友達と一緒に働けることです。
sogumm : 自分の大切な友達と一緒に成長できることが全てだと思ってます。
メンバーそれぞれの思いがあるからこそ、ジャンルレスになれる
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ー個人的にBalming Tigerの楽曲やMVはアジアに対するステレオタイプを、自由な方法でクールにリプレゼンテーションしているように感じています。みなさんは音楽やパフォーマンスを通してアジアに対するステレオタイプをどのように変えていきたいと思っていますか?
Omega Sapien : アジア人もみんな、西洋の文化や音楽ばかりを聞いてきて、そこをなぞるような表現をするけど、僕たちはアジア人であることを自慢できるような表現がしたいと思っています。
sogumm : 自分がアジア人として表現することも大切なんですけど、それと同じように愛する自分を表現したいんです。私はアジア人なので、私自身を表現するということは、アジア人であることの表現にも繋がっていると思いますしね。
ー自分自身を表現することが何よりも大切なんですね。Balming Tigerの楽曲はジャンルレスで、一曲一曲に個性があると思っています。毎回違う雰囲気を持つ楽曲たちに共通している思いなどはありますか?
sogumm : 実はメンバーそれぞれが思っていることや伝えたいことはバラバラなんです。それが一曲一曲違う雰囲気や違う表現になる理由かなと思っています。メンバーがそれぞれ聞いている音楽も違うんですよ。だけど、それぞれが持つメッセージが集まって、いろんな意見が溢れる「今の時代」を表現することができていると思っていて。私たちの表現はどれも「今の時代」を映し出しているんです。
Hong Chanhee : むしろ一緒じゃないからこそ、いろんな表現ができています。
音楽が持つ究極的な価値
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ー多様な考えがあるからこそ、新しいものが生み出せるんですね。考えやセンスがバラバラのなかで、Balming Tigerの音楽はどのようなプロセスで作られているのでしょうか?
Henson Hwang : 好みはそれぞれ違いますが、みんなお互いの好みを尊重しているし、新しいサウンドに興味を持っているんです。なので、普段から一緒に演奏したり、時間をかけて曲を作っています。具体的なプロセスとしては、誰か一人がプロジェクトを引っ張り、全体の方向性を決めていきます。そこに他のメンバーがそれぞれの色やエネルギーを加えて、プロジェクトに重みを加えていく。そうして曲が徐々に完成していくにつれて、みんなでフィードバックを出し合いアレンジや修正が行われていくという感じですね。
ーやはり、メンバー全員の意見やカラーは全ての楽曲に取り込まれているんですね。BTSのRMを迎えた「SEXY NUKIM」は世界中が注目し、双方にとってもいい結果を残したと思います。Balming Tigerとしていつかコラボレーションしてみたい人は誰ですか?
San Yawn : いつかパク・チャヌク監督(代表作に『オールド・ボーイ』や『サイボーグでも大丈夫』)と仕事がしたいです!彼の映画を見て育ち、Balming Tigerの芸術観に大きな影響を与えているんです。それに彼は誰もが着目してこなかった素材や表現で、多くの人々に大きなインスピレーションを与えてきたアーティストなので、いつかコラボレーションしてみたいですね。
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ー皆さんがパク・チャヌク監督の作品によって影響を受けたように、自分たちの音楽が人々や文化に良い影響を与える力があると思いますか?
San Yawn : それが音楽、さらには芸術が持つ究極的な価値だと思っています。私たちはアルバムやステージを通して、毎回音楽が持つ力の意味を観客に伝えていると思います。芸術には人の心を動かす力があるという信念がなければ、アーティスト自体存在していなかったかもしれませんね。
文章ー最後にBalming Tigerの現在の目標を教えてください。
San Yawn : 一歩一歩枠を広げていくことです。とりあえず、今度のアルバムとその後の活動を通して、人々にいい刺激を与えていくことが直近の目標です。
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Balming Tiger
韓国で2018年に突如現れたオルタナティブKPOPバンド。11名のメンバーで楽曲制作、MV撮影、パフォーマンス、PRなど、全てのプロセスを自分たちで行なっている。デビューシングル「I’m Sick」で注目を集め、2019年にリリースされた「Armadillo」では韓国HipHopアワードにてMusic Video Of The Yearを受賞し着実に韓国国内の音楽シーンに影響を与えたいった。そして2022年にはBTSのリーダーRMを迎えた「Sexy NUKIM」をリリースし、世界中に新たなK-POP現象の風を吹き込んだ。