一口食べればハッピーに?“幸せ多め”の「非加熱チョコレート」とは!?

Text: Jun Hirayama

Photography: Kohei Kawashima unless otherwise stated.

2016.2.14

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「チョコレート」を食べた時、幸せだなぁと感じたことはないだろうか?
 
実はそれ、チョコに含まれる、幸福感や高揚感をもたらす「アナンダマイド」という物質のおかげだったのをご存知だろうか?しかし、通常のチョコレートは、カカオをロースト(加熱)して製造することで、アナンダマイドや他の栄養素の多くは破壊されてしまっているという。“幸せが減った”チョコレートをいつも我々は口にしているというわけだ。そこで最近注目されているのが、栄養素を破壊せずに製造された「非加熱チョコ」。通称「ローチョコレート(Raw Chocolate)」。「非加熱」とか「ロー」とか言われても、ほとんどの人がピンとこないと思うが、普通のチョコレートと比にならないくらい、ハッピーでヘルシーな「チョコレート」なのだとか?

生チョコではない、「非加熱チョコ」

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ローチョコレート(Raw Chocolate)とは、カカオなどの原材料を加熱せずに65℃以下の低温で製造するチョコレートのこと。“ロー(Raw)”とは英語で「非加熱、未調理、生の」という意味だ。つまりローストしないカカオから作られたチョコレート。なぜ65℃以下なのか?それは、65℃以上で加熱すると、カカオ本来の栄養素が失ってしまうから。低温製法で作り上げることで、若返り効果があるポリフェノールや抗酸化物質、心臓を健康に保つフラボノイドやビタミン、それに先述した「幸せ物質」のアナンダマイドなどのカカオの栄養素を破壊せずに製造できるというのだ。通常のチョコレートより、人に「健康」と「幸せ」をもたらすスーパーフードの「ローチョコレート」。クラフトチョコレートブームに火をつけた街、ニューヨークに「ローチョコレートは人を幸せにする」と信じ、強いこだわりをもってローチョコレートを作る男が存在する。

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ダニエルとチョコレート工場

ローチョコレート専門店「FINE AND RAW(ファインアンドロー)」。
 
2008年、ニューヨークはブルックリン。第一のヒップスターエリアといわれているウィリアムズバーグのアーティストロフトの一室で、一人の男の手によって始められた。彼の名は、ダニエル・スクラー(Daniel Sklaar)。現在は、ブルックリンの第二のヒップスターエリア・ブシュイックに立派なチョコレート工場兼ショップ兼カフェのストアを構えている。

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20歳まで南アフリカで育ち、その後単身でアメリカ、ニューヨークへ渡ったという彼。なぜローチョコレートのビジネスを始めようと思ったのか聞いてみると「小さい頃からチョコレートは生活の一部だったし、とにかくチョコレートが大好きだったから。あと、もともとローフードのシェフだったからさ。」と誇らしそうにそう答えた。ローフードとは、その名の通り「生、非加熱の食べ物」のこと。酵素や栄養素が多く含んだ状態の「生、非加熱の食べ物」の方が、「加熱した食べ物」よりも体に良い効果があるという考えに基づいている。そんなローフードを扱うシェフとして働いているうちに、自然とオーガニックなどのこだわった食材を選んだり、健康を気にしたり、環境を配慮することに興味をもったというダニエル。
 
「ローチョコレートを作るのは、普通のチョコレートを作るよりも難しい。でも難しいほうがとてもクリエイティブだ。だから難しいほうを選んだのさ!高いマシーンに頼るのではなく、職人の技で勝負しているよ!」と彼の挑戦精神、クラフトマンシップがたっぷり詰まったFINE AND RAWのチョコレート。実は、中身のチョコレートだけでなく、外見のパッケージにも隠されたこだわりが存在する。

中も外も「型破り」なチョコレート

最近では、米国のクラフトブームの流れで、「Bean to Bar」と呼ばれる新ジャンルのクラフトチョコレートが登場したり、フェアトレードやシングルオリジンのカカオを使った自然環境や、労働環境に配慮したサスティナブルなチョコレートは珍しくなくなった。しかし、FINE AND RAWのチョコレートは、もちろんフェアトレードのカカオを使用したサスティナブルなチョコレートなのだが、外見であるパッケージまでもサスティナブルなのだとか。
 
ブルックリン・ウィリアムズバーグに住んでいた時に出会った同郷の女性アーティストに描いてもらったというチョコレートのパッケージ。「その当時(2008年)はオリジナルの”ヒップスター”がたくさんいて、タトゥーとか、悪そうなこととかそういうのが流行ってたのさ。だからこのデザインになったんだ」と懐かしそうに語るダニエル。

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盗賊のように大きな巾着を背負っていたり、ピストルを構えていたり、タバコを吸っていたり。描かれている女性は、見るからに悪そうで、Sっ気たっぷりのヒップなイラストだが、実は「彼らは環境には配慮している」と彼はいう。どういうことなのだろうか?「包み紙は再生紙」、「イラストのインクは無害な植物性のもの」を使用しているというのだ。中身だけでなく外見もサスティナブルに。ダニエルの徹底されたこだわりに圧倒されるばかりだ。

変幻自在!ギャラリーにも、クラブにもなるチョコレート工場

「elswhere(エルスウェアー)とぼくの間には共通の友達がいて、あのコラボレーションは実現したんだ。ぼくはelswhereをかっこいいと思っていたから、なにか面白いことをしたくて、声をかけたんだ。」

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そうダニエルが語る「elswhere」とはニューヨークのデザイン集団で、インタビューした昨年の8月には、FINE AND RAWの工場内でelswhereとコラボしたチョコレートを販売したり、elswhereの作品が店内に飾られていたり、展示の初日にはDJを入れたイベントまでも開催されていた。イベントの様子はこちら

世界一グリーンでヒップなチョコレート

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「最近はチョコレートだけでなく、ヌテラより100倍健康にいいチョコレートスプレッドも新しく作り始めたよ。あと今ココナッツオイルも製作中さ。どうやって作るかは企業秘密だけどね!」そう、お茶目に新製品について教えてくれたダニエル。ギャラリーやイベント、チョコレートスプレッドやココナッツオイルなどの新製品。ローチョコレート作りに対して「強いこだわり」を持っていながらも、次々と「新しい取り組み」を仕掛けていくダニエル。今では、ニューヨークのオーガニック食品を扱っているスーパーや売店にいけば、必ずと言っていいほど手に入れることができるFINE AND RAWのチョコレート。しかし、未だに店舗も工場もひとつのみ。

 

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拡大はしないのか?と尋ねてみると「もちろんしたいよ。ニューヨークにもう1店舗開きたい。でもぼくはバランスを一番重要視しているんだ。拡大もしたいけど『品質』が一番大事。『品質』が一番でなければ、意味がないからね」。大量生産が主流となった現代で、少しづつ人々は量より質を追求し始めていることを彼の言葉から感じ取ることができた。「ぼくのローチョコレートで世界を変えることはできない。でも、ぼくのチョコレートを食べてくれる人、買ってくれる人、気にしている人。少なくとも彼らのことはハッピーにさせることができると思う」。
 
チョコレートは人を幸せにする。そう彼が確信するのは、チョコレートに「幸せ物質」のアナンダマイドが入っているからだけではなく、彼が彼のチョコレートをこよなく愛し、強いこだわりをもってチョコレートを作ってるからではないだろうか。
 
インタビュー中、終始、チョコ好きが滲み出ていたダニエルは、最後に「いつか日本でもオープンしたいね」と言ってくれた。世界で押し寄せているクラフトチョコレートブームの中で、一風変わった非加熱のカカオで作られたローチョコレートで勝負するダニエル。「こだわり」と「アナンダマイド」という2つの“人を幸せにさせるエッセンス”がたっぷり詰まったFINE AND RAWのチョコレートが、日本に上陸してくれることを期待したい。

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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