渋谷PARCOの4Fフロアがリニューアルオープン! 変化をし続ける東京で、「場所」を作るために必要なもの。「SKWAT」中村圭佑 × haru. 対談【Sponsored】

Text: Fumika Ogura

Photography: Kotetsu Nakazato unless otherwise stated.

2022.12.20

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 2019年にリオープンした渋谷PARCO。オープン時から、古着を取り扱ったり、ギャラリーが充実していたり、これまでのショッピングモールとは一線を画す存在ではあったが、今年の2月より、デザイン・設計事務所「DAIKEI MILLS」を中心とした社会プロジェクト「SKWAT」、そしてグラフィックデザイナーの加瀬透とタッグを組み、これまでの商業施設のあり方を変えていくべく、持続可能な新しい売り場を目指していく「4202122」プロジェクトを立ち上げた。第一弾は、『Vintage Collection Mall (VCM)』による「VCM MARKET BOOTH」をオープンし、今年の11月にお披露目となった第二弾では、スペースを拡大。プロジェクトを「419202122」「41329-231」へと進化させ、ヴィンテージウェアやインテリア、古道具、Chim↑Pom from Smappa!Groupが手掛ける実験的なショップなど個性的なラインナップがそろった。
 “仮説的広場”をコンセプトとした内装は、共用通路とショップの境界線を仕切らない作りで、お店同士に壁は存在せず、加瀬透と作り上げたグラフィックデザインに包まれた単管パイプでフロアが構成されている、商業施設らしからぬ空間が特徴的。それぞれの店前にはショップの単管パイプとつながったベンチが置かれ、ショッピングモールなのに、どこか公園を彷彿とするようなリラックスしたムードが漂っている。
 今回はこのプロジェクトに携わった「SKWAT」代表の中村圭佑(なかむらけいすけ)と、東京を拠点としメディアを通してカルチャーを発信し続ける「HUG」の代表であり、『HIGH(er) magazine』の編集長を務めるharu.を招き、対談を行った。東京という街の性格について話しながら浮かびあがってきたのは、建築と雑誌制作の共通点や、場所を作ることの意義だった。

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常に変化をし続ける街・東京に合った商業施設の形

ーまずは「4202122」プロジェクトのコンセプトを教えてください

DAIKEI MILLS 中村(以下、中村):東京にある商業施設は、合理的すぎて建物の内側にいるとどれも同じ景色に見えると思うんです。施設側とテナント側で契約を結ぶうえで、新たなお店が入店する際は、いろいろなしがらみや制約があります。内装を作りこむことが一般的で、莫大なコストがかかる。これを回収するためには、3〜5年は継続してお店を出店し続けなければならず、新しくスタートしたブランドや、クリエイターが出店するには厳しい部分がありました。また、店が出店をし、内装を変えるたびに、廃棄物も出てしまいますし、サステナブルな環境をすすめる今の時代背景とマッチしないというところも課題としてあったんです。なので、まずは、その部分のハードルを下げ、気軽にテナントが入居できる枠組みを作ることが、これからの商業施設にあるべき姿ではないのかと考えました。そのためには、合理的である場所というイメージから少し外れた生々しい空間を作りあげたいと思ったんです。なので念頭には、契約形態の緩和と、商業施設という場所としてのあり方をどうしていくべきかという両軸から改革をすることが必要だと考えていました。こうしたことから、私たちとグラフィックデザイナーの加瀬透さんがタッグを組み、これまでの商業施設の概念を取っ払って、仮説的な空間を作り上げようと「仮説的広場」をコンセプトに、このプロジェクトがスタートしました。

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ー常に変化をし続ける街ですが、確かに同じようなビルが立つばかりですよね。お二人は「今」の東京の街にどんな印象を持っていますか?

haru.:私は小学校時代の2年半と高校時代をドイツで過ごしたのち、大学の入学で日本に戻ってきました。最初に東京へ来たときは渋谷のスクランブル交差点で過呼吸になりそうなレベルで慣れない街でした。これまで住む土地を転々としてきたこともあって、自分の考えでは、自分のいる場所が居場所になると思っています。特に東京に関してもそんなに思い入れがなくて、さまざまな場所から、仮住まいとして集まってきている土地だなと思いますね。

中村:私自身も出身は静岡で、ずっと山と湖に囲まれた場所で生活してきました。大学時代にヨーロッパに行ったのですが、東京に戻ってきたのは23歳の頃。それから今まで住み続けている街ではありますが、haru.さんと同じで、いまだに仮住まいのような感覚がすごく強いですね。長い時間を過ごしてきているのに、自身に根付いている感じがしないんです。決してネガティブな意味ではないですが、自分がこれからも東京で生きていくんだということよりも、いつ東京を離れるんだろうという感覚のほうが強いかもしれません。

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ーお二人は海外暮らしもされていますが、海外の街と東京の街で大きな違いはどういうところにあると感じますか?

中村:ヨーロッパは景観条例がとても厳しいこともあり、街として根本的な思想が違うと思います。東京は街のあらゆるところが広告で埋め尽くされていて、それが張り替えられるスピードも早いので、街の景色が常に変わっていますよね。街のスケールが大きい分、カルチャーもいろいろあるし、どこへ行っても人がいる。ヨーロッパにある小さな街は、スケール感もちょうど良くて、カルチャーもぎゅっとしているイメージです。中心街だとしても街の景色もあまり変わらないんですよね。

haru.:確かに、ドイツはいつ戻っても、自分の居場所が失われた感覚や、時間の流れをそんなに感じないかもしれません。小学生のときはドイツのマールブルクという街にいたんですが、とても田舎だったので、住んでいる人が集えるような場所はあまりないようなところでした。大人になってからそこに戻りたいとは思えなくて、自分の生活を想像するうえで、スケール感って大事ですよね。やっぱり東京は広いなっていまだに思います。

中村:東京は、アイデンティティクライシスになりやすい街かもしれないですよね。街によって色が違いますし、それが東京という枠のなかに密集している。それって、世界でも結構珍しいかもしれません。スピーディーなところはネガティブでもあるけど、逆に面白い部分になっているかもしれない。

haru.:どんどん張り替えられていくスクラップブックみたいですよね。

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「自分さえいれば、そこが居場所になる」

ーそれこそ、「4202122」プロジェクトで携われたパルコの4Fフロアも、景色が変わりやすい設計になっていますよね。

中村:仮設的であり非合理的であることが、今回のプロジェクトのコンセプトにおいて重要でした。すぐに景色を変えられるのが、ある意味で東京のこれからの商業施設のあり方だと思っています。変化していくことが前提なんです。なので、フロアは共用通路とショップの境界を仕切らず、加瀬透さんがグラフィックデザインを施した単菅パイプのみで構成しました。どんなお店やコンテンツが入ってきてもその空間にマッチしやすく、自由度も高い。そして、上書きがしやすい軽快さを大事にしました。

haru.:東京らしさがありますね。ただ、ものづくりをしていくうえでは、仕事で求められるスピード感と、自分のやりたいことのテンポが合ってないと感じるときもあって、そこのチューニングは課題です。自分はコツコツとやっていきたいので、アウトプットし続けることの難しさを感じています。

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中村:そのバランスは悩むところですよね。1週間や1ヶ月だけの時間内で作り上げなくてはいけないものだと難しいこともありますし、その限られたなかでどういうものを作るのかっていう向き合い方もあると思うんですが、それだと作りたいものと逆行してしまう場合もあるし、難しいですよね。

haru.:だからこそ、最初にお話しした「自分さえいれば、そこが居場所になる」ということが大事なのかなと思いました。場所自体はどんどん変わっていくけど、自分の信念は変わらずにそこにあり続けることが、一つの軸になるのかなと。

中村:私たちも、ものを作ることをある意味で諦めています。何かを作ることよりもそれに伴う思想を構築していくほうが重要だと思っていて、それがあるうえでデザインや建築が存在している感覚なんですよね。なので、今回の「4202122」プロジェクトでいうと、まずは施設とテナントの形態を変えていくことがポイントで、その後にどういう場所作りをしていくかという順序で提案していきました。目に見えないことではありますが、そういった軸があることで空間は成り立つと思います。

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haru.:次の『HIGH(er) magazine』のテーマは、「目には見えない」なんです。

中村:本当ですか。何事も軸となるのはその部分だと感じています。

haru.:雑誌も空間のようなプラットホームだと思います。自分たちで作ってきたものに真摯に向き合うのが雑誌だと思っていて、大きなものに巻き込まれずに作るためにも、『HIGH(er) magazine』は広告などを入れないできました。中村さんのお話を聞いて、それぞれでやっていることは違うけれど、空間などに対する考えに共感しました。

ーお二人は、自分たちが発信をするうえで大切にしていることや、意識していることってありますか。

haru.:ずっと変わらずに持ち続けているのは、自分たちに正直でいること。『HIGH(er) magazine』は、いろいろなテーマを取り扱っていますが、ちょっと違和感を覚えたことや、自分たちのなかでまだ考えをまとめられてないものを、取り繕ってまで出さないようにしています。それよりも、その過程にあるものが大事なので、例えアウトプットが完璧でなくても、みんなが考えられる余白のようなものがあることで、次につながっていくと思うんです。

中村:私も同じような考えを持っていて、不完全であり仮設的であることが大切なのかなと思っています。今の東京の街には、ある意味「このくらいでいいや」という諦めのようなものが必要だと思っていて。高度経済成長期を経て面白い街になったけど、それが今飽和していて、一度立ち止まらなければならないタイミングになっていると思います。その一方で再開発はどんどん続けられているし、この状況を回避することはできない。だからこそ、私たちは一度立ち止まって、身の回りを確認して、クリエイティブへ感覚を戻していくことが必要だと思うんです。なので、ものづくりをする側の責任として、完全にするのではなく、不完全であることで、みんなが参加しやすくなるようにすることが大事だと思っています。そうすることで、転用も利きますし、インタラクションも生まれるし、多くの人と交わることで、コミュニティも作られていくと思います。

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ーお二人がそれぞれ作り出すプラットフォームに、人が集まることの意味はどこにあると思いますか?

haru.:公園に行く理由って、わざわざ聞かないですよね。そこへ訪れた人たちが、それぞれ好きなことを自由にしていい場所だと思うんですが、私がマガジンを作ることはそれと近いかもしれません。公園で私がピクニックをしているとしたら、自分が敷いたシートに、友人が集まってきて居心地良さそうにしてくれるのが好きで、お互いにそこの空間があることで自分の居場所を確認できる。人間誰しもが、生きていれば常にいろいろなことがあって、ちょっとしたきっかけで人生が変わったりする。それこそ、コミュニティ自体に入っていけないこともあると思います。けど、私たちが存在することで誰かがほっとする空間にもなっているのであれば、それをずっと続けていきたいなと思っています。正直、みんながそこに集まることで、一緒に何かをアウトプットしてほしいとは思っていなくて、マガジンを通して新しい見え方ができたとか、そういった小さな種を撒き続けていきたいです。コミュニティを頑張ってつくるのではなくて、マガジンが存在することで、私たちが考える軸を各々で咀嚼してもらい、伝えていきたい芯の部分が広がっていくのが理想だなと思います。

中村:私も同じ考えですね。物作りをするうえで、気付きを与えていきたいというのがあって、そこは思想に繋がる部分だと感じています。それを与えた先にコミュニティが自然と生まれていくと思うんですよね。なので、そこに集まることでコミュニティをつくるというよりも、自分たちが作った空間のなかで、誰かに一つでも気付きを生むことができて、どこかのタイミングで、その人のきっかけ作りができていたらいいなと思います。

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haru.:好きな作家であるヨーゼフ・ボイスが提唱した概念である「社会彫刻」に私は影響を受けていて、普段どんな言葉を使うかや、どういうことを選んでいくかなど、そういった一つ一つのことが自分を形成していくと思うし、これからを作っていくと思っています。一人一人がその役割を担っていると思うので、自分たちが自分たちの居場所を作っていくことが広まっていったらいいですよね。

中村:私もヨーゼフ・ボイスに影響を受けてきました。空間でいうと、その人によって合う椅子の硬さも違うし、寝っ転がっていたい人もいる。東京だとそれがなかなか許される場所が少ないですけど、ものづくりをするうえで、それぞれが選択できる余白を作ることが、これからはさらに必要になってくるのではないかと思いますね。

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中村圭佑(SKWAT)

Instagram

2011年に設計事務所 DAIKEI MILLS(ダイケイ・ミルズ)を設立。
商業空間や公共施設などの様々なプロジェクトに取り組んできた中村は、人と空間の在り方について一貫してデザインの実践を通して考え続けてきた。
既存の空間と将来の用途に対して真摯に向き合い、彫刻的な造形と単純な平面を緩やかに結びつけ、卓越した素材使いを以ってして、その場でしか生まれ得ないサイトスペシフィックな空間を生み出す。
2020年より、都市に存在するVOID(遊休施設や社会的隙間)を時限的に占有し、一般へ解放する運動「SKWAT」を始動。

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haru.

Website / Instagram

1995年生まれ。東京藝術大学在学中に、同世代のアーティスト達とインディペンデント雑誌HIGH(er)magazineを編集長として創刊。
多様なブランドとのタイアップコンテンツ制作を行ったのち、2019年6月に株式会社HUGを設立。
代表取締役としてコンテンツプロデュースとアーティストマネジメントの事業を展開し、新しい価値を届けるというミッションに取り組む。

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「419202122」「41329-231」

今年11月に渋谷PARCOの4階を「SKWAT」、グラフィックデザイナーの加瀬透とともに大規模リニューアル。今回のリニューアルでは、「4202122」が新しい区画「419」を吸収し「419202122」に成長。また、4Fの東側には「41329-231」が誕生した。リニューアル第一弾のコンセプトである「上書きのしやすい軽快さ」と、どんなコンテンツが入っても色を自由に足せる柔軟性はそのままに、展開するエリア・ブランドを拡大。「共用部と占有部の境界(リースライン)を可視化することで、逆説的に内外の関係性を曖昧、逆転させる」とともに、「購入目的(消費活動)以外での公園(レストスペース、待ち合わせ場所)としての機能を付加するため、「ベンチ」という装置を延長、拡散させていく」を新たなコンセプトとして採用。売場内にとどまらず、館内の共用スペースにも「ベンチ」を設置し、より多様な目的で利用してもらえる場作りに取り組んでいる。単管をベースに作られたブースには、「金三昧」「Archives」「GMKR」「PART OF PART OF NATURE」「NatureLab Store」「tay(POP UP)」「VCM GALLERY」の7店舗がオープン中。

ショップ紹介

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金三昧(アートグッズ)

アーティスト・コレクティブChim↑Pom from Smappa!Groupが幅広いアーティストのオリジナ ルグッズを開発し、実験的な「商品」を販売するショップです。

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Archives (インテリア雑貨)

<CIRCUS Inc.>を主宰する鈴木善雄と引田舞による膨大なストックの一部と思考回路を覗くようなアーカイヴが積み上げられたショップ。博物館のバックヤードをイメージした什器に木、土、金属、 紙、石などのマテリアルによって区分されたものを保存・販売します。

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GMKR(インテリア)

廃棄家具を分解し、芸術(文学・音楽etc.)と神様(偶然性・神秘) の力により再構築をするUneven Structure Furnitureです。圴一(even)、大量生産 (mass production)の対極、そして分類(categorize)できない不均一(uneven)で あることを意味します。

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PART OF NATURE(フラワーベース)

アメリカやヨーロッパから直接買い付けた、現地の空気感を纏う唯一無二のヴィンテージ花瓶や雑 貨。なかでも花瓶のラインナップはとても多く、Life with Flower shopとしてお花も一緒にお選びいただけるお店です。

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Nature Lab Store(コスメ)

「NatureLab Store」はネイチャーラボ初となる実店舗。ヘアケア・スキンケアなどのビュー ティーブランドやくつろぎのあるライフスタイルに寄り添うホームケアブランドを取り揃え、ブランド の鮮やかな世界観、贅沢な空間を演出しております。季節に合わせたイベントや商品展開、 EC限定商品などリアル店舗ならではの演出を展開します。

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POP UP SHOP:tay(インテリア雑貨・アクセサリー)

第1弾には、ヴィンテージショップ「tay」が登場。「手から手へ、手を取り合って、受け継がれる」。 東南アジアを中心に出会ったさまざまなヴィンテージの民芸品や古道具、山岳民族のヴィンテージ ジュエリーやテキスタイル、民族衣裳などが揃います。
期間:11月3日(木祝)~12月26日(月)

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VCM GALLERY.(ギャラリースペース)

ヴィンテージプラットフォームVCM(Vintage Collection Mall)が運営するギャラリー スペース「VCM GALLERY」。ヴィンテージの企画はもちろんのこと、VCMがセレクトする、ヴィンテージの概念と親和性のあるブランドやアーティスト作品などを、定期的に展開していくクリエイティブなスペース。

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