“企業の音”を使って作られる唯一無二の「サウンドロゴ」。アーティスト・SEKITOVAが「クシダ工業」の工場と現場を訪れ、生み出したもの<クシダ工業 × SEKITOVA × SOUNDS GOOD®︎ 鼎談>【Sponsored】

Text: Fumika Ogura

2022.8.23

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「音」は記憶と時間を繋ぐものだ。例えば、幼い頃に聞いていた音楽、いつも歩いている商店街で何気なく流れているメロディ、毎日使っている洗濯機や電子レンジから鳴る終了音。生活を送っていくうえでふと耳に入ってきた音は、違う場所や違うタイミングで聞いても、そのときの情景や出来事をつい思い出してしまうものである。
 昭和23年に創業し群馬高崎市に本社を置くインフラ企業・クシダ工業が、そんな「音」をベースに、コーポレートブランドである「エルスピーナ」のサウンドロゴを制作した。タッグを組んだのは、さまざまな音声コンテンツを手がけるSOUNDS GOOD®︎とアーティストのSEKITOVAだ。

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 クシダ工業は、群馬県高崎市を中心に「電気・空気・水」という暮らしに欠かすことができないインフラを創り・守る技術で地域を支えている会社で、「設備工事」と「配電盤・制御盤メーカー」、「通信設備」という3つの事業を融合させる数少ない企業の一つ。2017年にそれらの事業を総称した統一事業ブランド「エルスピーナ」を導入した。
 どうして、一見事業内容からはイメージしづらい「音」に着目し、新たな「音」を生み出そうとしたのだろうか。そして、その「サウンドロゴ」を使ってどのような展望を考えているのか。今回のプロジェクトの主なメンバーである、クシダ工業の社長を務める串田、SOUNDS GOOD®︎の安藤、アーティストのSEKITOVAの3人に話を聞いた。

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左からSOUNDS GOOD®︎の安藤、SEKITOVA、クシダ工業の串田社長

ーまず、「サウンドロゴ」を作ろうと思った経緯を教えてください。

クシダ工業・串田(以下、串田):コーポレートブランドである「エルスピーナ」をつくった際に、デザインやグラフィックなど視覚的な部分でブランドのイメージを伝えていました。今年でブランドが導入開始5周年という節目を迎え、若い世代やより多くの方々に届けいきたいと思い、人の感性に響くものを改めて考えたんです。そして、今回は会社の要素としても大切な部分である「音」にフォーカスをすることで、私たちの取り組みを面白く伝えていけるのではないかと思いました。

ーどうして今回のプロジェクトをSOUND GOOD®️さんにお願いしたのでしょうか。

串田:ご提案いただいた内容が、私たちの琴線に触れたのが一番の大きな理由です。感覚的なものになるので、言葉で説明するのが難しいのですが、私たちの知らない世界を見せてくれそうだなと思いました。

SOUNDS GOOD®︎ 安藤(以下、安藤):私たちは、「音 × ブランディング」という形での取り組みを2019年からスタートさせました。提案の内容として、企業の音を使って音楽を作る、ということが主なものではあったのですが、いつかサウンドロゴを作りたいなという構想があって。とはいえ、そんなに頻繁に作るものでもないし、アップデートするようなものでもないので、タイミングが合わないと難しいなと思っていたんですが、今回クシダ工業さんが反応してくださって、頭の中で今まで思い描いていたものを提案させていただきました。こうしてようやく実現できるタイミングがやってきて、とても嬉しかったです。

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SOUNDS GOOD®︎ 安藤

ーサウンドロゴの制作をSEKITOVAさんにオファーした理由を教えてください。

安藤:SEKITOVAさんとは、これまでも企業の案件でご一緒させていただいたことがあるのですが、クライアントの理念や展望などの話を熱心に聞いている姿がすごく印象的でした。制作した音楽がリリースされたあとも、音源とともに、ご自身の目線で企業のイメージや思いを言葉にしてTwitterなどに投稿しているのを拝見して、すごく深いところまで入り込んで取り組んでくださったんだなと思っていたんですよね。サウンドロゴって、音楽よりも残っていくものですし、象徴的なものだと思うので、きちんと向き合ってくれるアーティストさんがいいなと思って、真っ先に思い浮かんだのがSEKITOVAさんだったんです。

SEKITOVA:昔からサウンドロゴはやってみたいなと思っていました。なので、こうしてお話をいただいたときはすごく嬉しかったですし、以前SOUND GOODS®︎さんとご一緒させていただいてから、活動の幅がさらに広くなっているのを見ていて、またお仕事できたらなと思っていたので、相思相愛な感じがありましたね(笑)。

ー一見、「エルスピーナ」の事業内容と「音」が結びつくようなイメージがなかったのですが、クシダ工業さんにとって音とはどういう存在なのでしょうか。

串田:実は業務をするうえで、音って切り離せない存在なんです。機械を制御しているのが水や電気など目に見えないものなので、機械が正常に動いているかを音で判断することが多いんですよね。異常があるときは、いつもと違う音が聞こえてきたり、普段聞き慣れない変な音が流れたり。ある種、機械も生き物のような部分があるので、音の鳴り方でその日の調子を見ています。

安藤:「音」で良し悪しを判断をするって、すごく職人的ですよね。私たちもこれまでいろんな企業さんと取り組みをさせていただきましたが、串田さんがおっしゃっているように機械の異常は目よりも耳で判断するのが大事なんだとよくお伺いしていました。クシダ工業さんのように生活の安心・安全を提供する企業は、ある意味すごく音に敏感なんだなと、改めて勉強になった部分です。

串田:音の聞き分けは、熟練のノウハウの一つでもあります。やっぱり、どうしても感覚的なものになってくるので、培ってきた経験がないと難しいんです。音が分かるようになってくると、作業をしていくうえで、ステップが上がっていくようなイメージがありますね。今回、工場内のいろいろな音を録っていただいたのですが、一つ一つ聞いていくと「こんな音だったんだ」と、それぞれの音に表情を感じられて。新しい発見がたくさんありました。

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クシダ工業の串田社長

ーこうして音作りをお願いする際、クシダ工業さんはどんなことを意識して依頼をしましたか?

串田:私たちが知らない世界というのもあり、どういったものにフォーカスをしてお願いをするのかは難しい部分ではありましたね。ただ一つ思っていたのは、社内の共通言語となるようなものにできたらなということでした。誰もが聞いたときに「あ、あの音だよね」と、社内でも汎用的に反応できる音がベースになってくれるといいなって。サウンドロゴのような一つのものができることで、ある意味で仕事の集大成のような存在にしたいという思いをお伝えしました。

安藤:そういったイメージをクシダ工業さんからいただいていたので、音の方向性などはきちんと共有できていましたね。音ってやっぱり目に見えるものではないので、認識とかズレてしまう可能性が高いんですが、クシダ工業さんともSEKITOVAさんとも、目線を合わせながら進めていけたなと感じています。

SEKITOVA:コミュニケーション自体は、そんなに多く取れたわけではなかったのですが、根本的なものが共有できていたおかげで、よい方向に向かっていったなと思います。クシダ工業さんがやられている事業って、水や電気など人が生活をしていくうえでの要のような存在だと思いました。前面に出てくるわけではないけど、影でしっかりと生活を支えてくれていることが、安心感を与えてくれる証拠になっているなと感じたんです。なので、やっぱりそこの部分はしっかりと伝えていきたかったし、水や電気、空気などを扱っているので、それらの爽やかさみたいなものを形として出していきたいなっていうところが出発点でした。

安藤:今回、サウンドロゴで実際に使用した音は7音くらいなのですが、本当はそれの3-4倍の音を録っています。クシダ工業さんの工場にお伺いして、板金や塗装設備、制御盤から発せられる音を、浄水場では工程を経ながら変化する水の音などを録音しました。

SEKITOVA:学生の頃に工場見学には行ったことがありますが、そのときの感覚とは全く違うものでした。こうして歳を重ねてから仕事を通して訪れて、気になった音を自分のペースで録音していく作業は、新しい発見の連続でしたね。普段だったら、入れないような場所で音の響きを感じたり、機械の動きを見たりして、確かにこんな音になるよなという気付きがあったり。実際に工場に行ったことで、音と作業がリンクして、サウンドロゴを作るための絵作りができました。普段そこで仕事をしていないと得られない経験だと思うので、すごく面白かったですね。

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SEKITOVAが音を採取している様子

安藤:金属をプレスする大きな機械があるんですが、プレスされて抜かれた小さい金属片が落ちていく音にSEKITOVAさんは結構反応してましたよね。

SEKITOVA:その音は実際にサウンドロゴにも使用しましたが、キラキラとした綺麗な音ですごくいいなと思いました。しかも、その抜かれた金属片は、最終的には再利用されるらしく、そういった裏側のエピソードも大事かなと思っていたので、ストーリーとしてもぴったりだなと思いましたね。あと、浄水場の音も好きでした。ただ水が流れている音なんですが、1/fのゆらぎはありながらも人の手が加わっているので、音の流れがとても均一的なんです。音の面から仕事としての美しさや素晴らしさを感じられました。基本的には、シンプルにいい音だなって感じるものをベースにしていますが、作業してる方や社員の方が音を聞いてピンとくるようなものを選んでいきました。

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ーサウンドロゴができあがったとき、それぞれどんなことを思いましたか?

串田:単純な言葉で申し訳ないのですが、聞いた瞬間「すごいな」と思いました。自分が想像していないものに遭遇したときに「はっ」とすることってあると思うんですが、そういった感覚を味わいましたね。集音していただいた音って、私たちも日常的に聞いているものでもあるのに、人の手が加わって別の角度から作り込まれていくことで、まるで違うものに感じました。こうしてできたものが社外の人にも伝わってほしい気持ちはもちろんありますが、何よりも社内のみんなに感じてほしいというのがあって、愛着を持ってもらえるように、完成するまでの経緯をきちんと説明していきたいなと思っています。

安藤:これまでも、企業さんと一緒に取り組んできましたが、クシダ工業さんのように自分たちからしか生まれない音の面白さみたいなものを感じてくれる方が多いです。会社のアイデンティティの一つとして、その音を聞いて、社員の方が説明できたり、イメージとして思い浮かべられたりすると、それが会社の誇りにも繋がっていくんですよね。実は今回、3つくらい音を提案させていただいていて。どれも素晴らしいものではあったのですが、なかでもイチオシのものがあったんです。フラットに聞いてもらいたかったので、クシダ工業さん側にはそれを特にお伝えはしていなかったのですが、最終的にその推していた音が選ばれて。そもそもで、SEKITOVAさんとクシダ工業さんの考えがシンクロしていたのかなと思いましたね。改めて、相性がいいタッグだったんだなと感じています。

SEKITOVA:楽曲制作と違って、サウンドロゴは短い音のなかにメッセージを込めなくてはならないのが難しかったです。企業のブランディングと音の抽象性をどうやって両立させていくかがポイントでしたね。なので、ロゴ自体は何回聞いてもいいように、とことんシンプルなものを目指しながら、クシダ工業さんが大事にしているものに沿って、クリーンさやなめらかさにピントを当てていきました。このサウンドロゴに興味を持った人に対して、音の裏に隠れている作業背景や意味を知られていくようなものになれたらなと思っています。

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SEKITOVA

串田:やっぱり音って無意識的に感じられる部分ってたくさんあると思うんです。視覚的にブランドロゴだけ出しても、目に留めようと思わなければ意識せずに終わってしまうかと思うんですが、音はふと耳に入ってきたときに印象に残る可能性がすごく高いと思うんですよね。SEKITOVAさんがおっしゃってくださっているように、音っていう切り口からブランドに共感してもらったり、興味を持ってもらったり。サウンドロゴは、そういった入り口のような役割になってもらうことを期待しています。

SEKITOVA:現代社会って、動画一つ見るにも広告が必ずあるし、街中にも広告が溢れていて。ある種、広告が持つ暴力的な面を感じることがあると思うんです。情報を詰め込みすぎな世の中に対して、余白を入れてあげることが大事だなと常日頃から思っていて、音にはその力があるのかなと思っています。余白を入れることで、新しい発想や考えも思い浮かんでくると思うので。企業のサウンドロゴを作りましたって話以上に、私個人にとってもすごい意味のある案件でした。

串田:こうしてサウンドロゴを制作いただいて、エルスピーナがまた動き出したなと思っています。音としてイメージを共有していくことで、もっとこのブランドで何かできるのではないかって想起させるような印象があって、こうしてさまざまな表現が積み重なっていくことで、ブランドに深みを持たせると同時に新しい事業を生み出していけるような可能性を感じていますね。

SEKITOVA:まさにそういう部分を意識して作っていたので、感じとっていただけて嬉しいです。

ー今後このサウンドロゴを使ってどのようなことをしていきたいと思っていますか?

串田:ツールとしての使い方ですと、製品の中に取り込めていけたらいいなと考えています。スイッチを意識して作ってくださったということもお伺いしていたので、製品やシステムを立ち上げるときの音として活用できたらいいなと思っていますね。

安藤:それは私自身もぜひやってほしいことだなと思っています。サウンドロゴって、もちろん他のシーンでも使いやすい部分はあるかと思うんですが、エルスピーナらしい差が出るとしたら、製品の立ち上げや切るときの音として使用すると、現場を支えている感じが伝わるなと思いました。現場で仕事をされている方は、機械って毎日触れるものだと思うので、音を聞くことで、エルスピーナが支えてくれているんだっていうことを思い出すことができたら素敵ですよね。その気持ちが積み重なっていくと「エルスピーナっていいよね」と、次の世代や周りの人にもその良さが伝播していくのかなと思います。

串田:私たちも仕事をするうえで、社員全員に共通することがスイッチを入れることなんです。機械に電流を流す、設備を起動させる、システムを立ち上げる…。それぞれにとって大切な意味を持つ作業でもあるので、そういったメッセージも含めて、製品の意味を高めていきながら、ブランドに結びつくことができたらいいなと思っています。

安藤:今回こうしてサウンドロゴができましたが、併せてモーションロゴも製作中です。こういうブランディングをする企業さんって、あまりないのかなと思っていて。自分たちの音でサウンドロゴを作ることが、日本や世界でも稀なことだと思います。そういった面からもクシダ工業さんの先進的なイメージに繋がっていけたらいいですよね。

串田:この取り組みをしていくうえで、新しい発見はもちろんのこと、再認識できたこともありました。社内以外の第3者の方々のフィルターを通して、改めて自分たちを見直す作業もできて良かったです。

安藤:クシダ工業さんは今年で創業75周年ですよね。使用した音以外も、せっかくいい素材がいっぱいできたので、今後も節目のタイミングなどで、何か違う取り組みができたら嬉しいです。さっき、SEKITOVAさんがお話していたように、音の世界ってまだ余白がある部分だと思っていて。そのぶん、色付けがいくらでもできるのが面白いなと思っています。SOUNDS GOOD®︎的には、こうして音を軸として、これからもいろんな計画ができるといいなと感じていますね。

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クシダ工業

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昭和23年に創業、本社は群馬県高崎市。電気・空調・上下水道等の設備について設計から施工・メンテナンスまでを手がける設備工事業と、配電盤・制御盤の設計・製造・メンテナンスを行う盤メーカー、そしてそれらを融合させるためのエネルギー監視制御システムの開発を行う、全国でもめずらしいカタチの総合設備会社。2017年、それらの事業を総称した統一事業ブランド「エルスピーナ」を導入した。

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SEKITOVA

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大阪府出身。1995年生まれのDJ・プロデューサー。生まれる前からJoey BeltramやDave Angelを胎教に、さまざまなエレクトロニックミュージックに触れ合ってきた文字通りの第二世代。テクノ以外にもさまざまな音楽に影響を受け「テクノはジャンルではなくそれと向き合う姿勢の事」を胸に、時に細々としたジャンルの壁を越えていく事もいとわないストーリー重視のDJ。

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SOUNDS GOOD®︎

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そのブランドの音がある。その企業の音がある。その商品の音がある。企業の中に埋もれている個性的な音を多くの人が楽しめる音へと昇華し、さらに“音の資産“としても活用していく「ブランデッドオーディオレーベル」。2019年3月に設立。企業の個性や象徴とも呼べる事業を“音の資産”として残し、さまざまなクリエイターたちとのコラボレーションから未来に意味のある形で継承していく。

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