「“エロってめっちゃ生命”。恥ずかしがることじゃない」モデル・Mayuriがグラビアをやり続ける理由

Text: Nagisa Nasu
Photography: Kaname
Hair & Make: Monmo
Illustration: Sakura
Edit: Fumika Ogura
Cooperation:SYOKU-YABO農園

2023.12.12

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「私にとってグラビアは通過点じゃない。私はグラビアをやりたいんです」
そう話すのは、グラビアという表現でファッションやカルチャーシーンでも活躍するモデルのMayuriだ。「見る人や撮る人の“期待”に応えるグラビア」に違和感をおぼえていた彼女が初めて自分に正直になれたのは、2021年の『少年イン・ザ・フッド』とのコラボ撮影。『週刊SPA!』の誌面で披露した、誰にも媚びない堂々としたヌード姿と真っ直ぐな視線に度肝を抜かれた人は少なくないはず。今まさに、既存のグラビアのイメージを塗り替え始めている彼女のこれまでと、母の反対を押し切ってまでグラビアをやると決めた理由、そして理想のグラビアについて話を聞いた。

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母の反対を押し切ってでもやりたかったグラビア

 長野県で生まれ、3歳のときに家族で愛知県に移住したMayuri。ブラジルにルーツを持つ母の影響もあって、昔からよく家族全員でBBQをしていたそうで、BBQをするために夏は週1で海に出かけていたという。海で水着を見ることや、自身でも着る機会が多かったため、水着は日常的なアイテムのひとつだった。
 高校生になってからは友達と海に遊びに出かけるようになり、水着を着ることも好きになったという彼女だが、中学3年生の頃までは自分の体型を受け入れられない日々が続いた。

「小学校高学年くらいから胸が大きくなり始めたんですけど、周りと比べて目立っていたので、『あの子、胸大きくない?』と、陰でコソコソ言われていて。それがすごく嫌で、ずっとさらしを巻いて胸をつぶして登校していました」

中学生になってからも自分の体型を受け入れられず、体育の時間は先生に許可を取って夏でも長袖のジャージを着て授業を受けていたほど。だがある日、そんな彼女の気持ちを変化させる出来事が訪れる。

「5個上のお姉ちゃんと、休みの日に肌を露出して出かけたことがあったんです。その日はさらしを巻いていなかったんですが、出かけた先で、人生で初めて『スタイルいいね』って褒められて。コンプレックスに感じていた部分を肯定してもらえた気がして、『なんだ、私ってスタイルいいのかもな』って、初めて思えたんです」

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 それを機に自分の体型を少しずつ受け入れられるようになり、さらしを巻くこともやめた。さらに、高校生になると自分のスタイルへの興味が増していき、友達と海に出かけてはお互いの水着姿を撮り合っていたそう。そして、高校2年生のときから、その写真をInstagramへ投稿し始めるようになった。

「肌を出す格好が好きになったので、私服でミニスカートや胸元が開いた服をよく着ていました。でも、ママにとても心配されて。『そんな格好で外に出るのは危ないからやめなさい』『水着の投稿もやめなさい』ってすごく怒られました。それでも私は自分のスタイルを貫きたくて、母親に反発して好きな格好をし続けていたんです。結果、母親と揉めることが多くなり、外出禁止やスマホを没収されてしまうこともありました」

 今では冗談みたいに人に話せるようになったが、当時は母親とぶつかったり、自分のやりたいことを止められたりするのが本当に辛かったという彼女は、高校卒業後、そんな環境を変えるべく一人暮らしを始めた。母親から開放される一方で、一人暮らしと引き換えに母からお願いされたのが、大学への進学。

「ママに『これが最後のお願いだから、大学を卒業して卒業証書をママに渡してほしい』と、言われました。私は大学に進学するつもりはなかったのですが、今まで反発してきた分、ママの願いを叶えようと思って、大学への進学を決意したのですが、入学して大学での時間を過ごしていくなかで、私はここにいて何をやりたいのかを自問自答するようになりました」

本当に自分がやりたいことはなにかと考えるなかで、自分が今進むべき道は大学へ行くことではないと思い、3ヶ月で退学を決めた。退学し、初めて何にも束縛されない環境に身を置いた彼女は、そこで本当にやりたいことに気づいたという。それが、「グラビア」だった。

「ひとりになってみたら、『今までママに何度止められても、“水着を着ること”を貫いてたんだ』って気づいたんです。当時は『グラビア』というジャンルを知らなかったのですが、知り合いが事務所を始めるタイミングで誘われて所属してから、私がやりたいことは『グラビア』なんだと知りました」

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“被写体が嫌な気持ちで撮られる”のは、本当のグラビアじゃない

 名古屋にある事務所に所属し、グラビアを始めた彼女。「一人暮らしは金銭的に大変だったけど、気持ちが楽になってメンタルが安定した」と話すが、今度は別の壁にぶつかることになる。

「当時、セーラー服を着て海で撮影する仕事があったんです。そこで、カメラマンの方に『こういうポーズして』って指示をされたんですが、それが全然良いと思えなくて。だから『そのポージングは違うと思います』と、撮影中に初めて自分の意見を言いました」

 伝えた直後は驚かれたというが、別のポージングを提案をすると興味を持ってもらえ、結果その写真が使用された。

「私は嫌だと思ったら顔に出ちゃうし、被写体が嫌な気持ちで撮られるのは、良いグラビアだと思えません。それは写真を見る側にも伝わって、『見ちゃいけないものを見ている』って気持ちにさせてしまうと思います」

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 そんなふうに “自分のやりたいグラビア”が明確になっていくにつれて、当時所属していた事務所と方向性が合わなくなり始めたという彼女。そんなとき、一つの転機が訪れる。それが2021年10月12日発売の『週刊SPA!』での『少年イン・ザ・フッド』とコラボして行われたグラビアの撮影だ。その撮影現場で「自分がやりたかったグラビア」を初めて実現でき、それを一緒に叶えてくれたスタッフたちにも大きな影響を受けたそう。

「その撮影現場で出会った人たちはやりたいことをやっている人たちで、そんなみんなに『本当にやりたいことがあるなら、自分で動かないとマジでできなくなるよ』って背中を押してもらって。そこで、自分で動かなきゃって決心がついて、上京を決意しました」

“ごまかせない”のがグラビアの魅力だし、好きなところ

 上京して事務所を変えたことで、徐々にやりたいグラビアをできるようになったという彼女。では彼女にとって、理想的なグラビアとはどのようなものなのだろう。

「私がグラビアをしていて一番楽しいと思う瞬間は、カメラマンさんと私の目と目が“バチッ”って合って『今、絶対にいいもの撮れたよね』って繋がりあえたとき。あと、グラビアをしているとき、解放されている気分になれるのも好き。私にとって、グラビアをすることは自分のメンタル安定にもつながっています」

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 彼女は、グラビアだけが持つ魅力についてもこう話す。

「私が思うグラビアの魅力や好きなところは、“ごまかせない”ところ。私はファッションモデルをやらせてもらう機会もあるんですが、そのときは『私を見せる』というより『服を見せる』という気持ちが強くて。でも、グラビアは『私(=モデル)を見せる』ものだと思っています。今、AIが生成したグラビアアイドルが実際に誌面に載っているんですが、私はあまり良いと思えなくて。生きているっていうのがモロにわかるのがグラビアの魅力だと思うから、作りものじゃ意味がないんです」

 リアルを愛する彼女の一番好きな自分の体のパーツは「お腹」で、「デニムに乗ってるくらいが一番かわいい」。さらに、今目指している理想的な体型は「あと8キロくらい増やして、今持っているデニムが全部入らなくなるくらい、お尻周りをボリュームマックスにすること」だという。

「エロってめっちゃ生命」。グラビアは恥ずかしいことじゃない

 自分のやりたいグラビアが明確になるなか、今後は「女性のためのグラビアもやりたい」と話す彼女だが、「既存のグラビア」を批判してしまった時期もあったという。

「前は『恥じらいがかわいい』とか『ロリ系』とか、“日本の正解”みたいなグラビアが嫌だったんです。でもあるとき、それを否定するのは違うよなって気づいて。それが良いと思う人はそのままで良くて、私が嫌だと思うんなら、新しいグラビアを作ればいいんだよなって」

 今まさに、誰にも媚びずに自分が良いと思うグラビアを発信し、新たなグラビアのイメージを作り上げている彼女は、性の目覚めについてもオープンに話してくれた。

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「私が性に目覚めたのは、保育園に通ってた頃。小学校1年生になると、道端に落ちているいわゆる“エロ本”をこっそり見てました。雨の日はなぜか捨てられている率が高かったので、一目散に外に繰り出して探しに行ってましたね(笑)」

 そう笑いながら話す彼女は、“エロ”について次のように続ける。

「“エロ”ってめっちゃ生命だと思うんです。だって、私たちはそこから産まれていますよね。だから、エロを追求したら生きるうえで大事なことを見つけられる気がする。性欲って三大欲求の一つなのに、“見ちゃいけないもの”とされがちですよね。でも本来は、恥ずかしいことじゃない。私にとってエロは、大事なものが隠されている秘密基地みたいなイメージです」

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 誰かのための表情やポーズではなく、 “被写体が一番解放されている瞬間”こそがグラビアなのではないか?そんな気づきを与えてくれた彼女に、最後に理想的なグラビア業界のあり方について聞いた。

「ファッションもグラビアも、境目がなくなるのが理想です。グラビアをやっていると『通過点でしょ?』って勘違いされることも多いし、今のグラビア業界ってなんだか暗い気がするんです。昔は水着を着た女性がビールを持ったポスターとかたくさんあったけど、今は全然見ませんよね。だからより、『エロ=良くないもの』って風潮が強くなっている気がします。
今後、グラビアが色んな広告に使われるくらい一般的なものになって、いろんな体型の子たちがグラビアをやって、“かわいいの正解”がなくなるといいなって思います。グラビアはあらゆる『良くない価値観』を変えられる可能性を秘めているものだと、信じています」

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Mayuri

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2002年生まれ。愛知県出身。2020年に週刊プレイボーイにてグラビアデビューを果たし、その後はグラビア誌を初め、アパレルブランドのルックやキャンペーンなど、幅広いシーンで活躍中。ジャンルの壁を超え、様々な現場で培ってきた経験を活かしたオリジナリティ溢れる世界観が魅力。その唯一無二な存在に、老若男女問わず多くの支持を集めている。

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