パンツについた生理の染み、剃ったばっかりなのに生えてくる身体の毛、目を背けたくなる太もものセルライト…気まずいから普段話さないけど多くの女の子が共感できること。メインストリームのメディアからは絶対に見えてこないそんな「リアルな話」をパステルカラーでキュートに表現しているイラストレーターがオーストラリア、メルボルンに存在する。彼女の名前はMonntana Kitching(モンタナ・キッチング、以下モンタナ)。彼女のインスタアカウントを見るとなんだか気持ちが楽になる。「なんだみんなそうなんだ」って知れるだけで多くの女の子は救われる。
今回Be inspired!(以下Bi)は1万4千人を超えるインスタフォロワーを持つモンタナに、「他人に見られたくない自分」をあえてさらけ出す理由とその意義について話を聞いてみた。
ーまず最初に、自己紹介をお願いします。
Hi! 私は25歳でメルボルン出身。イラストレーターで画家でもあるんだけど、アートを勉強したことはないわ。プロの看護師なんだけど、そっちはちょっと休憩中でアートに専念しているとこ。私の作品は個人的な体験、そのなかでも一般的に“タブー”とされるようなことにインスパイアされているの。恥ずかしくて話せないことをイラストで正直にそのまま描いている。カラフルで機知に富んだ私のイラストスタイルのおかげで多くの人が共感できるから、苦しんでいる人たちが私の作品をみて安心できたらいいなって思っているの。
ー今言った通りモンタナの作品はすごいカラフルでドリーミー。でも中身は共感できるような正直で、どこか悲しいものばかり。その差が皮肉っぽくて面白い。今のスタイルにはどうやって辿りついたの?
ありがとう!正直何年もかかったわ。恵まれたことに小さい頃からアートに囲まれて(両親が二人ともアーティストなの!)ずっと絵を描いてきたけど情熱を持ってアートを始めたのは19歳の時から。絵を描くことが自己セラピーみたいなものだったから、必然的に自分の作品のテーマにすごく興味を持ち始めた。
えんぴつで下書きして、線をはっきりさせて、色を塗ってマーカーとブレンドさせるプロセスがすごくリラックスさせてくれて、満足した気持ちにさせてくれるの。
ーモンタナの作品は自分の体験にインスピレーションを受けていると言っていたけど、絵に出てくる女の子たちは誰をモデルにしてるの?(ファッションがみんなかわいい!)
ありがとう!笑 モデルは私の友達、家族とかかな。もしくはインスタで「ねえ、あなたのこと描いてもいい?」って怖い人みたいかもしれないけど知らない人に急にDM(ダイレクトメッセージ)も送るの。
でも同時に全部自分を描いた絵でもある。ただ違う身体で表現しているだけで。または一見私に見えなくても、その一定の時期に自分の目に写る自分の身体だったりもする。
ーどこかのインタビューでアートが自分の気持ちを理解するためのツールだと言っていたけど、それはどういうこと?
私は物事にすぐに圧倒されちゃうの。心配や不安がたくさんあって、それを言葉にしたり、ひとつひとつの問題が根本的にどこからきているのか理解して、整理するのが難しい。でも絵を描いている時は周りのことを気にせず自分の内面と向き合える。自分が感じていることを外から眺めて、線や色を使って表現するのは自分にとって簡単なの。うまく説明できてるかな?わかってくれるといいな!
人々が恥ずかしがって避けるようなトピックをオープンに表現するモンタナ。未だにそういうアーティストは数少ない。だからこそ多くの人が彼女に共感し、ファンになるのだろう。
ー1万4千人を超えるフォロワーってすごいよね!フォロワーの子たちとはどんな関係?あなたのアートにフォロワーが影響を与えていると思う?
本当!すごくエキサイティングだよ!フォロワーの数って普段意識してないかも。でも世界中から感謝のメッセージとか、「こんな絵描いて」ってリクエストの連絡が来る。それはクレイジーで最高なこと! 世界の反対側に私の作品で救われるって言ってくれる人がいるなんて謙虚になってしまうし、でもだからこそ絵を描き続けているんだと思う。
ーあなたの絵の多くは女性の身体だったり性について描いている。生理の染み、体毛、ブラの痕とかマスメディアでは見られないものばかり。社会の中で反映されていない“リアル”なものを描くことを意識してる?
その通り。私が描くものはすべて過去や現在の自分のコンプレックス。雑誌や広告の女性と自分を比べながら育ったからかな。そういったものってフェイクなことばっかりなのに、それが普通だと思ってしまう。だから私がリアルな姿を描いてネットに載せることで、女の子の本当のイメージが広がるといいなと思っているの。
ー絵を見てくれている人に届けたいメッセージは?
性について、生理について、不安障害や鬱や身体醜形障害*などの精神病について話すことを恥ずかしがらなくていいってこと。こういう話ってタブーじゃないし、恥ずかしくないし、プライベートである必要がないってこと。オープンになることで、みんなが助け合って、孤独を感じなくてすむ。
(*)極度な自己否定を原因として、自分の見た目に異常にこだわる症状。引きこもりや整形の原因になることもある。
ー今は本の製作をしているんでしょ?どんな本を作っているの?
うん! 人生で初めて作る本。思春期に入る前の女の子たちに向けて「大人のなり方」を説明するような本を作ったの。自分が思春期に経験した恥ずかしいストーリーをまとめたものよ。性教育の時間には教わらないような、友達に話すのも気まづいようなこと。これから思春期に入る子たちが欲しくて必要な「思春期バイブル」と言えるかもしれない。
60%が文章で40%がイラスト。でも作り始めたらシリーズ化しないといけないって気づいたの。話したいことがたくさんあるから。誰でも手に取れて、すべての人が読めて、教育になるようなものを作りたいの。
モンタナが言うように、テレビや広告で見る有名人の姿は非現実的。しかし小さい頃からそういったイメージを見ている女の子たちがそれが普通だと信じ、自分の容姿に自信を持てないのも不思議ではない。だから彼女のような「リアルな声」がとても重要になってくる。背伸びしない本当の姿に、多くの人が共感して魅了される。
フェイスブックやインスタグラムが普及し、誰もが有名になれる時代だからこそ、マスメディアでは成し遂げられないことを実現するアーティストが増えてきているのかもしれない。こんな風にモンタナのような等身大なアーティストが増えて、恥じることなく、性や身体についてオープンに話せるようになれば、社会の女性へのプレッシャーは少しずつでも減っていくのではないだろうか。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。