2020年7月1日に「Gender Equality(ジェンダー平等)」をキーワードに新ブランド「OPEN/END(オープンエンド)」がローンチした。環境に配慮し企画されたプロダクト第一弾ではタイで絶大な人気を誇るカップルのアーティストSundae Kids(サンデーキッズ)を迎え、Tシャツや靴下からビーチグッズなど幅広いプロダクトを展開。一つ一つのプロダクトに描かれたSundae Kidsの作品を見ると、そこにはGender Equalityへのメッセージが込められている。



今回NEUTはOPEN/ENDの裏側にいる「unifast」の橋本敦(はしもと あつし)と「The Bee’s Knees」の手塚芳子(てづか よしこ)& Annie Le(アニー・レ)を迎え、2社がどのような経緯でこのブランドの制作に至ったのか、社会にどのようなインパクトを作り出したいのか話を聞いた。OPEN/ENDのように企業の壁を超えてコラボレーティブに作られる、人と環境に優しい“成長していくブランド”の姿は、今後あらゆるブランドのロールモデルとなるのではないだろうか。
社会課題に挑戦するために生まれたブランドOPEN/END
NEUT:まず初めに自己紹介と、それぞれの企業について教えてください。
unifast 橋本:unifast株式会社の橋本です。unifastはバックやポーチなどいろんな企業のグッズを作っている会社です。デザイン企画から納品まで一貫したサービスの提供をずっとやっています。
The Bees’ Knees 芳子:私は手塚芳子と申します。会社としては、アウトプットの形に捉われないクリエイティブエイジェンシーをやっています。いろんなアーティストが所属していて彼らと一緒にクライアントさん向けに広告を制作したり、ものを作ったり動画を作ったりしています。ミュージックビデオのときがあれば、展示のキュレーションをするときがあるなど、アウトプットはさまざまです。
The Bees’ Knees アニー:私の名前はアニーです。台湾の台北出身で、アメリカに9歳の頃に移住しました。ニューヨークの大学でメンズウェアについて勉強した後、プロダクションの仕事をしていました。台湾に戻ってパートナーとブランドを始めてそれを2年ぐらいやって、去年の11月ぐらいからThe Bee′s Kneesで働いています。

NEUT:今回どんな経緯でこの2社が一緒にOPEN/ENDをやることになったのですか?
unifast 橋本:もともと知り合いがいて、それがきっかけです。
The Bees’ Knees 芳子:そうですね。初めにSDGs*1にのっとったブランドをコラボレーションで始めたいとお話をいただいて、それからコンセプトやどのアーティストとやるか、どういうターゲットにするかっていうのを一緒に考えていきました。
unifast 橋本:うちの場合中期計画でSDGsへの取り組みを去年から発表してたんですよ。それでなんか形にしたいなって思っていたときに、こういう形でコラボレーションできたらと思ったんです。
NEUT:SDGsを実現するための方法として始まったブランドだったんですね。企業としてSDGsに対してアクションをとろうと思ったのはどうしてですか?
unifast 橋本:いや単純に社会貢献したいなっていう気持ちですよね。僕自身のバックグラウンド的に海外生活が長かったんで、例えば社内だったら男女が平等にいた方がいいとか、いろんな人種が働いている方が面白いとか、いろんな価値観のある会社、社会の方が楽しいだろうなっていうのがあって。そのなかでSDGsっていうのを知って行動に移しました。
The Bees’ Knees 芳子:ブランドのコンセプトとしてGender Equalityを謳ってるんですけど、趣味嗜好とか好きなものとか、見た目もそうですけど、人種、セクシャリティなんでもそれぞれがそのままでいいよねっていう、ありのままを受け入れるポジティブなメッセージが軸のコンセプトです。私たちの会社の強みである、いろんな若手アーティストと一緒にコラボレーションしていくブランドを作れたらいいなっていうのもそうですし、日本のものづくりっていう面ではunifastさんがいいものを作れるし、そこにデザインを掛け合わせてSDGsにのっとって、ものづくりができたらいいなというところで始まりました。


(*1)持続可能な開発目標(SDGs)とは2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標
身近な問題「Gender Equality(ジェンダー平等)」を最初のテーマに
NEUT:ローンチにあたり第一弾のテーマをGender Equalityにしたのはなぜですか?
The Bees’ Knees アニー:デザインを勉強しているとGender Equalityについてやゲイ、レズビアン、ノンバイナリー*2などについて考えることは大切なことです。特に会社としてセクシュアリティも多様ないろいろなアーティストと仕事をしているのでそういう意味でもこのプロジェクトのテーマは大切だったし、会社として声をあげて、考える必要がありました。
The Bees’ Knees 芳子:例えばThe Bee′s Knees でいったら7人の社員中6人が女性なんですよ。なので社内でもそういう話題にはよくなって、あと今回ブランドのターゲットが20代ってこともあったので自分の友達とそういう話をすることもあって、私たちが普段考えていることを伝えたいなっていうので、Gender Equalityを最初のテーマとして選びました。

NEUT:身近な問題から始めたということですね。そもそもSDGsに取り組むうえでアートというアプローチをしようと思ったのはなぜですか?
unifast 橋本:アートにすることで、国籍とか言葉とか関係ないところに訴えかけられると思うんですよ。ただ英語でスピーチするとかじゃなくて、見た人がどう感じ取るかっていうのが大事だなって思っていて…そんなときに、分かりやすいクリエイティブがあるっていうのはプロジェクトとしてすごい良いことだと思うんです。
The Bees’ Knees 芳子:自分がアートとかカルチャーに興味を持ったきっかけも、「これがかわいい、かっこいい」とかだったので、まずは視覚から入って裏にあるコンセプトを知ってもらうという方法は効果的だと思います。何かを伝えるためには、そういう視覚的なかわいさとかかっこよさに対して純粋な感情みたいなものが大事なのかなっと常に思っています。

NEUT:第一弾にコラボレーションするアーティストとしてSundae Kidsを選んだのはなぜですか?
The Bees’ Knees アニー: 最初はデザインのよさで選びました。フォロワーが多いから大きなインパクトを起こせるとも思いました。それにアジアの国のなかでもセクシュアリティに対してタイはオープンなのでポジティブなメッセージを送れると思いました。
The Bees’ Knees 芳子:彼らのユーモアも気に入りました。特に彼らはコミックで有名なのですが、コミックのなかに強いメッセージが込められていて、私たちのメッセージを伝えるのにいい方法だと思いました。
Sundae KidsによるOPEN/ENDのための描き下ろしコミック



いろいろなピースを使ってハートを作る女の子の姿。ジェンダー、人種など関係なく愛し合うことはできて、リスペクトを見せられることを表現している。
(*2)ノンバイナリーとは、男でも女でもない、もしくは両方を持ち合わせている性別のことをいう
これから支持されるブランドは環境や人に優しいブランド
NEUT:環境にも配慮したと聞きましたが具体的にどのように工夫しましたか?
unifast 橋本:通常のお客様との商売だと、特にイベントや流通関係の場合、細かく1個単位でなく、ある程度の見込み数量でご発注をいただくことが多いと感じます。でも今回私たちのプロジェクトは100人の人が欲しいっていったら100個作る、123人だったら123個作るっていうふうにオーダーがきたものに対して作るスタンスにしてるんですよ。だから無駄がないところが環境に良いのに繋がっていると思うんです。プロダクト自体も新たには生産せず、弊社の強みを生かして、日本中にあるネットワークからもともとある在庫を利用しています。
The Bees’ Knees 芳子:あと、オンラインだけなのも、良い取り組みだなと思いますね。オンラインショップだけで売ると人件費とか…お金だけじゃないですけど、いろんなものが減らせるかなって思っていて。1番効率的に人に届けられるから、そういう意味ではすごいローンチが楽しみ。

NEUT:無駄が出ないのはいいですね。今後は環境や人に優しいブランドが支持されていくと思ったからこそOPEN/ENDを作ったのだと思いますが、消費者の意識が変わってきたと感じることはありますか?
The Bees’ Knees 芳子:私はやっぱりものを作る仕事なので、無駄が出ることにすごくジレンマを感じることがあって。もう大量生産される商品っていう時代でもないし、やっぱり自分の好きなものを精査して買って、それを長く使うっていうのが1番良いことじゃないですか。それは同世代の友達と話していても感じます。みんなやっぱりこれはどこからきた服なのか、どこからきたコットンなのかみたいなところを気にしていると思うんですよ。
unifast 橋本:まあ時代の流れで感じますね、すごく。少子化で子どもは減ってるけどものにかけるお金はあんまり変わんないっていうか、むしろ増えていくと思うんですよ。良いものを買いたいっていう意識は絶対出てくると思うので、まあ今回のこういう流れ、SDGsについては考えなきゃっと思いますね。普段のunifastのお客さんでいうと、やっぱり大量生産する場合がほとんどです。例えばコンサートとかに行ったら、やっぱりコンサートグッズは欲しいじゃないですか。野球とかJリーグ観に行ったら、やっぱりおんなじユニホーム着て、おんなじタオル振って一体感を作るのがいいときがある。そこでどういうアウトプットにするべきかっていうのを考えるのが、僕らの仕事だと思うんです。そのときに「エコな素材でTシャツ作りましょう」とか今なら「オーガニックなコットンでマスク作りましょう」とかそういうオプションを去年から提示しています。

NEUT:最後に、スタートを切ったばかりですがOPEN/ENDをどんなブランドに成長させていきたいと考えていますか?
The Bees’ Knees 芳子:意思表示をしていくことが大事なんだよっていうのを、1番伝えたいと思っています。私たちは普段から結構伝えたいことを声に出して言ってるんですけど、やっぱり届かないこともあるんで、unifastさんみたいな企業などいろんな方と組ましていただいて、そうやって私たちの考えを意思表示していくっていうのはこれからの社会にすごく大事じゃないかなと思うし、そういう形のモデルじゃないけど、例になっていけばいいなと思います。
The Bees’ Knees アニー:そうですね。OPEN/ENDとしてコラボレーションするアーティストをもっと増やしていきたいです。ジェンダー平等や環境も大切ですし、もっといろいろな問題にも挑戦していきたいです。
unifast 橋本:本当チャレンジしていくってところを体現していきたいですよね。プロジェクトを通して。日本に限らずいろんなアーティストと、みんなが今まで考えていなかったようなテーマにフォーカスしたり、いろんなところに光を当てて、クリエイティブで表現していくのが面白いなって思います。他の企業も、今回僕らのこと知ってくれて一緒にコラボしたいとか、そういうのもあると嬉しいです。別に僕ら2社だけでやる必要は全然なくて、いろんなところと力を合わせて取り組んでいくべきことだと思うんで。

答えを追求し、成長していくブランドの姿
地球の資源は限られている。人種差別、貧困、ジェンダーやセクシュアリティ差別など社会に問題はまだまだたくさんある。そういった社会課題に対して、ブランドがプロダクトを通して疑問を投げかけてくれるであれば、それは同じ買い物でも意味のある買い物になるのではないか。
いくつもの答えを持つ可能性のある問題を「open-ended question」という。 OPEN/ENDはその名の通り、社会に存在する開かれた質問を考え、追求し、成長していくブランドの姿を今後見せてくれるだろう。
OPEN/END
NEUTでキャスティングをした今回のメインビジュアル









OPEN/END
OPEN/ENDという言葉には”無制限の”または”自由な”という意味があります。個人の個性や趣向は自由であり、人種やセクシャリティなどの枠に囚われることなく、全てはありのままで完璧であるという思いを込め名付けました。ジェンダーや考え方の多様性が尊重され、そのボーダーが薄れている今、誰もがポジティブに楽しめるものを新しい世代に向け発信していきます。
さらに、OPEN/ENDは若いアーティストとコラボレーションをしていくプラットフォームでもあり、様々な人と際限のないクリエイティブな実験をしていくブランドでもあります。
アーティストとグラフィックやもの作りを通して個々の声を届けるために、最初のコレクションはジェンダー平等(gender equality)として、タイのアーティストSundae Kide(サンデーキッズ)とコラボレーションしました。

unifast
1981年設立。”つくりたい”を形にする。”つくる”を通して社会に貢献する。をビジョンに掲げ、独自の企画力や生産体制により高品質なモノづくりを提供。バッグ、ポーチ、ぬいぐるみの分野では業界のパイオニア的な存在に。2019年からは、物づくりの知識を存分に活かした自社ブランド「svalen」を発売。同年からは環境に配慮したモノづくりにも注力し、SDGsに関わる企業向けマーケティングを開始した。日本、中国、ベトナムを生産拠点に、国内各業界のグッズOEMを手掛けている。
