自身のアイデンティティがテーマのデビューアルバムをリリースしたロンドン在住のアーティストリナ・サワヤマが語る、自身と向き合うことで生まれる強さ

2020.4.17

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「VOGUE JAPAN Women of the Year 2019」の受賞やSpotify「Early Noise 2020」(2020年飛躍が期待される新進気鋭アーティストを選ぶプログラム)への選出など、今世界で人気を集める注目の日本人/イギリス人アーティストリナ・サワヤマが、自身初となるフルアルバム『SAWAYAMA』をリリースする。

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日本で生まれ幼い頃にロンドンへ移住した彼女は、日本人としてロンドンで生きていくうえで多くのマイクロアグレッション(必ずしも悪意があるわけではない小さな差別的な言動や行動のこと)に晒されてきた。本作は、そうした経験が彼女に抱かせた怒りや、自身のアイデンティティに対する疑問をテーマに据え、<彼女と東京の関係>を表現した作品となっている。

「東京に関して、世界はフェティッシュ的な感覚を押し付けすぎていると思う」という言葉のとおり、アルバムに収録される“STFU!”や“Tokyo Love Hotel”などのナンバーでは、イギリスの人々が東京に対して持っているステレオタイプに一石を投じる。また、LGBTQ+の人々に歌った “ Comme des Garçons (Like The Boys) ”や “Chosen Family” は、自身がパンセクシャルであることで経験した思いが率直に綴られている。

従来の作品では自身の経験をより大きなテーマとして扱い、社会性の強いアウトプットが多かった。しかし本作では、社会という枠組みに拡張しすぎることなく、パーソナルな経験のありのままに重きを置いている。また、インディペンデントに活動してきた彼女が、レーベルDirty Hitと契約をして制作されたのが今作。Dirty Hitはサステイナブルなアジェンダを提示しているレコード会社だ。アルバムに収録される“XS”では資本主義と気候変動にフォーカスを当てているように、それは彼女の関心の一つのようだ。

今回リナ・サワヤマが、NEUTが気になったいくつかの質問にメールで答えてくれた。

ー従来の楽曲やミニアルバムでは、リナさんご自身の経験をより大きなテーマとして扱い、社会性の強いアウトプットが多かったように感じますが、本作では社会という枠組みに拡張しすぎず、パーソナルな経験のありのままに重きを置いた理由はなぜでしょうか?

今回パーソナルな経験に重きを置けたのは、私の曲作りが成長したからっていうのもあるし、より優れたメンバーと働くことができたから。居心地が良くて最高なスタジオがある環境で、素晴らしいコラボレーターやソングライターが私のストーリーを届けるのを手伝ってくれた。私からそれを引き出してくれた人たちと一緒に働けたのは恵まれてた。ずっと伝えたいことはあった。でもどう伝えていいのかが分からなかった。このアルバムではそれができたと思う。

ー初のフルアルバムとなる本作「SAWAYAMA」は、ご自身にとってどういった意味のある作品でしょうか?また「人をどこかに運んでいけるものになってほしいと思っている」とおっしゃっていましたが、このアルバムを聞く方々にどういうことを感じてほしいなど、込められたメッセージがあれば、教えていただきいです。

このアルバムは私にとって本当に大切なもの。デビューアルバムは一度しか作れないでしょ。いい音作りのためにたくさんの工夫を施したし、私が聞きたいようなポップレコードになった。このアルバムを聞く人が自分自身や家族と向き合うきっかけになるようなものにしたかった。そしてそれが自分の一部なのだと理解することで強くなれると気がついてほしかった。家族と上手くいっていないと、家族の誰かを嫌いになったり、独立したあともそのトラウマを引きずっちゃうことってあると思う。私自身このアルバムを作る過程で自分と向き合った。カウンセリングに行ったり、セラピーに行ったり…セラピーは10年以上通ってるけど…でも要は自分を探索してほしいってことかな。

ーこれまでインディペンデントに制作活動をしてきたなかで、レーベルDirty Hitと契約をなさった理由の一つには、Dirty Hitがエコフレンドリーなツアーやマーチャンダイズへの取り組みをしている点を挙げていました。また、本作に収録される“XS”では資本主義と環境変動をテーマとして取り扱うなど、サステナビリティにも関心が強いように感じます。アーティストととして、こういった社会課題にどうアプローチができるとお考えでしょうか?

難しいトピックだよね。だってアーティストは資源の面からいうと無駄にしていることが多いから。昔よりはましだけどね。CDとかはもうあまり使われていないし。でもツアーだってエコフレンドリーの正反対。でも私たちができることは、声を上げてパブリックフィギュアになること。問題に光を当てて、アウェアネスを広めること。私が北アメリカツアーをするときはPLUS1を使って1枚売れたチケットにつき、1ドルをローカルな環境チャリティに募金する。そういうことを気にするのって大切だと思うの。Dirty Hitは環境に優しいレーベル。オフィスではプラスチックを禁止してる。THE 1975のTシャツをプリントし直すってアイデアも最高だった。多くのレコード会社がそういうことを気にしてない。だってお金の面で損を生むかもしれないし、そもそもそういうことがどうして重要なのかを理解できていない。だから私は意識を持って行動しているレコード会社と働けて嬉しい。全てのアーティストにとっての挑戦だと思うの。不便を選んで環境に優しくあることって。もちろん、完璧じゃなくてもいいっていう前提が大切だけどね。私は完璧じゃない。私のメイクアップの量はおかしいでしょ(笑)でもやっぱりできることはアウェアネスを広めることかな。

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「だれもが自分らしく生きることの素晴らしさ」を体現する。利益ばかりを追い求めることも珍しくないポップミュージックの世界のなかにあって、環境問題に対して声を上げる。より良い世界のために、常に挑戦的である彼女の魅力が詰まった本作「SAWAYAMA」は、彼女の持つ強烈な思いやエネルギーを伝え、誰かの支えとなる一作になるであろう。

SAWAYAMA

4/17(金)配信開始

リナ・サワヤマ自身初となるフルアルバム。
幼い頃からロンドンの地で日本人として生きてきた彼女の経験や想いなどが凝縮された本作は、アイデンティティや家族との関係性をテーマに、<彼女から見た東京>を表現している。

リナ・サワヤマ

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ロンドンを拠点に活動する日本人/イギリス人アーティスト。
日本人としてロンドンで生きてきた経験を題材に、社会性のあるトピックにフォーカスを当てた楽曲を数多く発表している。昨年「VOGUE JAPAN Women of the Year 2019」を受賞するなど、世界中で注目を集める話題のアーティスト。

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