「LGBTの人は人間です。LGBTの人は日本人です。愛は愛。家族は家族です。一緒に闘ってください」
2022年8月に開催されたSUMMER SONIC 2022のパフォーマンス中にRina Sawayamaはオーディエンスにそう呼びかけた。「私はバイセクシャルで、私は本当に誇りに思っています」と、自身のセクシュアリティを宣言したうえで、日本で同性婚が法的に禁止されていることを批判し、コミュニティとの連帯を示した。
新潟県に生まれ、5歳のときにイギリスに移住したSawayama。デビュー・アルバム『SAWAYAMA』(2020)が、米ニューヨーク・タイムズ、英ガーディアン、米ローリング・ストーンを始めとする主要メディアが選出する年間の「Album of the Years」に選ばれ、世界的な成功を収める。イギリスでアジア人女性が受けるマイクロアグレッションに対しての怒りを歌った「STFU!」や、セクシュアリティを理由に家族や友人などから疎外されてしまうことが珍しくないクィアコミュニティに向けての「“選ばれた家族”を見つけるための招待状」だという「Chosen Family」など、これまで音楽を通して社会問題に対して声を上げてきた。
そんなSawayamaの2ndアルバム『Hold The Girl』では、過去の自分と向き合い、未来へと歩む喜びを表現した彼女のパーソナルな成長が赤裸々につづられている。同アルバムは、日本人アーティストとして史上最高記録の全英初登場3位を獲得した。
今回そんなSawayamaに、明日先行発売されるNEUT Magazineの紙雑誌の第2弾『ISSUE 2022 YELLOW LIGHT』のテーマである「アジア人差別」について意見を聞くべくインタビューの時間を作ってもらい、新アルバムやメンタルヘルスについても触れながら話を聞いた。
ーまずはじめに、新アルバム『Hold The Girl』について教えてください。
このアルバムでは、過去に起こったつらい出来事を見つめ直しました。大人になると、実はそれらが自分のせいではなくて、女の子や女性に対する社会の扱いがおかしいせいだったって気付いたんです。今は#MeTooの時代で本当に良かったと思います。90年代や2000年代にはそんな言語はまだなかったから今ほど理解されていませんでした。これは結構具体的だけど、それ以外にもいろいろな側面から見た90年代と2000年代の若者について、それも私自身の体験について語ったアルバムになりました。
ー過去のつらい思い出と向き合うのは楽ではないですよね。メンタルヘルスにもつながるのかと思うのですが、Rinaさんは長年セラピーに通っていると公言されていますよね。日本ではメンタルヘルスへの理解がまだなかなか浸透していないのが現状です。
日本は自殺率が世界で一番高いっていわれてますよね。だから自分の感情について話し始めることは必須だと思います。一番人気のあるセラピーは「トークセラピー」というのですが、その名の通り、話すことで感情から恥やタブーを浄化していくことがとても大切です。みんな何かあります。みんな大変な思いをしています。だから誰にも話せないなんて、本当の気持ちを表現できないなんて、泣けないなんて、怒れないなんて、悲しすぎます。個人としても大切だけど、日本が文化的に変わることで、より多くの人が幸せに生きていけるんじゃないかなと思います。
ーRinaさんの音楽にはコミュニティへの愛が込められているように感じますが、まだ自分のコミュニティを見つけられていない人にアドバイスはありますか?
SNSは無料です。SNSをポジティブに使う方法を見つけられたらいいですよね。例えば私はSNSでたくさん友達を作ったし、今も親友の子たちとはそうやって知り合いました。それにその子たちとはテレビ電話で連絡を取り合っています。スマホを持っている人は多いし、みんなができる方法だと思います。テクノロジーのいいところを利用するべきです。昔だったら大金を払わなきゃいけないようなことも含めて、YouTubeとかオンラインの無料のコンテンツを使えばいろいろなことが学べますよね。そんなことが、世界の一部になる第一歩だったりするんじゃないでしょうか。
ー「Yellow Light」は、「アジア人差別」がテーマです。Rinaさんは過去にイギリスで活動していくうえで「日本人」だということを消し去りたかった時期があったと話しているのをインタビューで見ました。特集「イエローライト」の取材でも日本で生きていくなかで日本以外の自分のルーツを隠していた時期がある/消し去りたかったという人は少なくなかったです。Rinaさんはどうやって今のように自身のアイデンティティを受け入れ、祝福できるようになったのですか?
私とこの雑誌に出てくる人たちの状況が違うことは最初に言っておきたいです。私の場合は、白人が多数派の国で育って、移民だったから人と違う存在になりたくなかったというのがあります。だから私が人と違う理由、目立つ理由を消し去りたかった…。悲しいことに移民の子どもたちの多くはそう感じているのが現実だと思います。日本での体験は似ているところもあると思うけど、でも欧米の視点から見て興味深いのは歴史的な側面。日本はその問題に直面していると思います。でもきっと若い世代は上の世代とは考え方も違うだろうなと思います。
日本で生まれ育って、日本人だと感じているのにエスニシティのせいで日本人だと扱われない人たちがいるのは本当に悲しいこと。それは世界中のいろんなところで起こっていることだと思いますが、私は多様性が国を新鮮にさせるし、成長させるし、健康的にさせると思っています。
ー最後に、今人種差別で苦しんでいるかもしれない本誌の読者にメッセージをもらえますか。
誰にもあなたのアイデンティティを消させないで。そのままの自分に誇りを持って。あなたはあなたのままで素敵です。この世界に理解されるために何かにならなくてもいいんです。そのままで価値がある存在で、無理に周りに溶け込まなくても大丈夫。
撮影場所:
東京エディション虎ノ門
〒105-0001 東京都港区虎ノ門4-1-1
www.marriott.co.jp/tyoet
Hair: TOMI ROPPONGI
Make-up: Haruka Tazaki
Stylist: Jordan Kelsey
Stylist Assistant: MAO MIYAKOSHI
Tシャツ ¥79,000、ジャケット ¥467,500、ス カート ¥154,000、ブーツ 参考商品/全て ヴェルサーチェ(ヴェルサーチェ△ジャパン)チョーカー ¥79,200、イヤリング ¥29,700、 リップモチーフリング ¥49,500、チェーンリング ¥49,500、モチーフ付きリング ¥47,300/ 全てジャスティン△デイビス(ジャック・オブ・ オール・トレーズ△プレスルーム tel.03-3401-5001)
【来日公演情報】
2023年1月17日(火)名古屋:ダイアモンドホール
2023年1月18日(水)大阪:Zepp Osaka Bayside
2023年1月20日(金)東京:東京ガーデンシアター
Rina Sawayama
1990年8月16日生まれ、ロンドンを拠点に活動する新潟県出身のシンガー・ソングライター。90年代/00年代の日本の音楽、そして2000年代初期のアメリカのR&B、ポップ、ロックからインスピレーションを受けて育っ た彼女は、宇多田ヒカルや椎名林檎といった日本人アーティストや、マライア・キャリー、デスティニーズ・チャイルド、カーディ ガンズ、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・メイヤーなどボーダーレスに幅広い音楽の影響を受けたと語る。
『ISSUE 2022 YELLOW LIGHT』
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