「卑猥じゃなくて、おしゃれでポジティブに性を表現したい」。若者ふたりが作り出す、“性”をもっとオープンに発信できる場

2018.10.2

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「SEX(性)」にまつわる疑問には、さまざまなものがある。性的な表現はバッシングされるべきなのか、性行為について話すのはタブーなのか、セックストイを使うことを恥じるべきなのかなど。聞く人によっては、そんなことは話すべきじゃないと反応するだろう。

多くの場合、性行為がなければ人間が産まれないように、「性」にまつわることは本来、非常に重要なトピックなはずだ。それなのになぜか「性=いやらしいもの」というネガティブなイメージがつきまとっていて、笑いのネタとしては使われても、性に対する価値観をカジュアルに話せる場はあまり多くない。

そんな状況に違和感を覚え、『SEX』というタイトルでの「性に対する価値観をポジティブにシェアできるZINEの制作とイベント開催」を目指してクラウドファンディングを行っている若者ふたりがいる。今回は、それぞれフランスとオーストラリアに滞在している彼女たちにメールでインタビューを行った。

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ZINE『SEX』に掲載される予定の作品
Photography: Ruru Ruriko

卑猥じゃなくて、おしゃれでポジティブな性表現

ZINE & イベント『SEX』を企画したのは、朝日新聞社のウェブメディアなど多数の媒体に寄稿するライターでクリエイターのRuru Ruriko(以下、Ruru)と、NYLON JAPANのオフィシャルブロガーで「TINY ZINE(タイニージン)」と呼ばれるZINEのイベントのプロデュースをしてきたMaria(まりあんぬ)。ふたりはそれぞれ同世代の若者をターゲットに、マガジンやブログで身体や性の話について発信してきた。

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Ruru Ruriko(るる るりこ)

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Maria(まりあんぬ)

「社会的な訴えというよりは、もっとポジティブで、セクシーで、エッチ!って卑猥なやつじゃなくておしゃれでポジティブな性を表現したい」という共通の思いがあったことから、いつかは「一緒に何かしたい」と共に考えていたという。

まりあんぬ:私自身、性に関するトピックにとても関心があるのですが、日本ではどうしても「性=いやらしいもの」というイメージがつきまといます。このイベントを通して、多くの人に性をポジティブに話してもらいたいです。

自身をモデルとした写真や、個人的な体験を綴った文章などクリエイティブなアウトプットが彼女たちの表現の魅力だといえる。社会的な主張を目的としていなくても、背景に「性」について話すことがタブー視されているために生じる弊害に対する問題意識が垣間見えるのだ。弊害の例としては、レイプ被害を受けた人がその事実を訴えたり、苦しみを話そうとするとバッシングされる「セカンドレイプ」がある。

Ruru: 性の話はみんなに関わるから大切なのに、おおっぴらに話したり聞いたりしにくい。でもそのせいで、つらい思いをしたのに言えずに悩んでいる人もたくさんいると思います。

「性」に対するネガティブ視を変えたい

ふたりがともに、ZINEやイベントを通して変えたいと思っているのが「性に対するネガティブな見方」。日本の性教育が遅れていることにも、そんな社会的な見方が大きく関係しているといえるだろう。普段目にする数少ない性表現が、コンビニの隅に置いてあるアダルト誌であることが多いのも、そんな見方を作り上げているのかもしれない。

まりあんぬ:私はもっと楽しくて、時には美しい性表現があってもいいのではないかと思っています。現在のアダルト誌はどちらかというとエンターテイメント性がない、ただ性を消費するものになっている気がしています。

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ZINE『SEX』に掲載される予定の作品
Photography: Ruru Ruriko

さらに、性に関心を抱いたり表現したりすることが実は自然であることや、そのあり方が多様であることを、ZINEやイベントを通して伝えていくようだ。もともとピンナップガール(*1)やバーレスク、昔の高級娼婦などのセクシーな女性たちに興味があったが、それを人に言うことを恥ずかしいと感じていたり、男性から性的な目で見られることに対する嫌悪感やそんな目で見られる自分に罪悪感(セクシーな服を着ることに対する抵抗も感じていた)を抱いたりしていたRuruは、イギリス留学中にフェミニズムと出会ったことで、考え方が変わったと話している。

Ruru:「自分をセクシーに表現することは悪くないのに、なんで私が罪悪感を感じるんだろう?」「性に関する話はどうしていやらしいと思われたり、女性は口にしてはいけないとされているんだろう?」と思い始めました。

(*1)主に第二次世界大戦前のアメリカやフランスの雑誌やポスターにみられる、セクシーなポーズをきめる女性をいう。アメリカの女優マリリン・モンローもそのひとりだった。

自分たちで表現するだけでなく、共に作り上げる

今回ふたりは、彼女たちと同様に「自分の性に対する視点」をエッセイ、コラム、絵画、音楽、イラスト、ファッションなどを使ってアプローチしたい人たちを募り、ひとつのZINEにまとめることを選んだ。それはSNSで目にする投稿やまわりの人たち、彼女たちの発信に対する反響を見ていて、性について思うことを表現したいと考えている人たちがほかにもいることに気づいていたからだった。

Ruru:ストーリーはあっても表に出していない人や、する機会がない人もたくさんいて、彼らの考えや話を知りたいと思ったからです。私たちの考えを広めるというより、みんなでシェアして考える場を作りたいです。

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まりあんぬがプロデュースするZINEのイベント「TINY ZINE(タイニージン)」の様子

また、多くの人の思いや考え方を集めることで多様な価値観に触れられ、「まだまだ勉強中」だと話す彼女たちにとっても、新しい発見が多いものとなるはずだ。今回は若者以外にも参加する人の層を広げたいと考えており、若者と同じように性についてネガティブな見方をしている大人ともコミュニケーションをとる機会を作りたいのだという。

まりあんぬ:さまざまな性別や年齢、ジャンルの人が性についてどんな考え方を持っているかを知れるZINEのほうが、よりニーズに答えらえると思ったんです。

エッセイや作品などを6月から募集している(※締め切りは10月10日)が、性教育についてから、女性のマスタベーションについてのコラム、カジュアルセックスについてのアート、音楽やイラストなどが国内外から寄せられている。

ZINE『SEX』に掲載されるエッセイ・コラムのテーマ(一部)

「ペニスがこわい」
「セクシーな服装って何?」
「男色、少年愛から性の変化を見る」
「アメリカより、オンラインから付き合い始めたクィアカップル」
「女性のマスタベーションについて」
「音楽と恋愛とSEX」
「ポーランドの女の子が思う性教育」

インタビュー記事のテーマ(一部)

世界の性教育と避妊についてインタビュー(なんでないの 福田さん)
セックストイについてインタビュー(TENGA広報 西野さん)
女性の性についてインタビュー(ランドリーガール 西本さん)
※上記3名は「予定」です 2018年9月7日現在

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ZINE『SEX』の誌面イメージ
Design: まりあんぬ

アーティストや専門家によるトークショーありのイベント

さて『SEX』のZINEについては紹介したが、12月16日には都内で性にまつわるカルチャーイベントを開催する。そこではZINE『SEX』や、出展者やRuruとまりあんぬの制作物やセレクトアイテムを販売するだけでなく、性の専門家やアーティストによるトークショーの開催も計画しているのだ。

現在、彼女たちはZINE『SEX』の発行とイベント開催をよりよい形で実現させるべく、クラウドファンディングを実施している。支援することで得られるリターンは、イベント参加のチケットやZINE『SEX』がもらえるものはもちろん、ふたりによる号外コラムがつくコースや、イベントで自分の作品の展示・委託販売をしてもらったり、ブースを設けたりできるものも選べる。実際にイベントへ参加すれば、彼女から直接リターンが受け取れる。彼女たちの問題意識や考え方に共感し、「こんなイベントがあったらいいな」と少しでも思ったなら、クラウドファンディングのページを覗いてみてほしい。

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Photography: Ruru Ruriko

イベント当日は「性について話すことに対する不要な恥」が取り除かれた空間で、ポジティブな性に関する会話があちらこちらで生まれることが期待できる。性のトピックと聞いて抵抗を感じる人にも、それを日常のトピックとして話しやすい場所作りは、このようなところから始まっていくのかもしれない。

Ruru Ruriko(るる るりこ)

telling,Instagram

18歳のときにイギリスへ留学、4年半を過ごす。大学時代にファッション、ファインアート、写真を学ぶなかでフェミニズムと出会い、日常で気になった女の子として生きることなどに関する疑問についてSNSで書くようになる。朝日新聞社のweb媒体「telling,」のライター他、多数のウェブメディアに寄稿している。

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Maria(まりあんぬ)

NYLON blogInstagram

女性ファッションカルチャー誌「NYLON JAPAN」のoffical blogger。個人の活動としては「TINYZINE」というZINEや雑貨の販売イベントをプロデュースする。今年4月に開催したイベントでは40グループが出展し、300人以上の来場者を集めることに成功。トイ、自主規制、男色、性教育に関して興味を持ち、現在はメルボルンに長期滞在をしながら、SEXにまつわる活動の準備を始めている。

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Zine & Event about sex「SEX」

プロジェクト「性について価値観をシェアするイベント + ZINEを作りたい!」
クラウドファンディングページはこちら(委託販売や作品展示についての詳細もあります)

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Photography: Ruru Ruriko
Design: まりあんぬ
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