気候変動にまつわる楽曲を“ポップスとして成立”させる。SIRUP × Shin Sakiuraが自然音で作った曲に込めた思い【Sponsored】

Text: Nagisa Nasu

Photography: Kotetsu Nakazato unless otherwise stated.

Hair: TAKAI

2022.4.22

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​​ シンガーソングライター・SIRUPと音楽プロデューサー/ギタリスト・Shin Sakiuraの二人が、日本の里山を訪れ、そこで聞こえる自然音を“採集 ”して制作した『FOREVER』をリリースした。 楽曲はポップで軽やかなダンスミュージックとなっている。
 本プロジェクトは、「気候変動」の日本への影響をともに学び、繋がって、一緒にアクションする輪を広めたいという思いから、国際環境NGOグリーンピースジャパンが企画したもの。以前よりSNSで環境問題や社会問題について発信していたSIRUPにコラボレーションを提案し、SIRUPがShin Sakiuraを招き本格的に楽曲制作が始動した。

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SIRUP × Shin Sakiura

 地球全体の気候が不安定になり、生態系がバランスを崩し、私たちの社会・生活にも大きな影響を及ぼす「気候変動」が、日に日に進んでいる。この言葉を聞いても、どこか遠い国の話だと思っている方が多いのではないだろうか。しかし、このまま気温上昇が現在のペースで続けば、早ければ2030年には世界の平均気温上昇が産業革命以後初めて1.5℃を超え、日常生活に大きな影響を及ぼすことが、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)による「1.5℃特別報告書(2018年10月公表)」で報告されている。今温暖化を抑えなければ、未来を生きる子どもたちの暮らしに支障をきたすことは明らかだ。さらに、すでに動植物にその影響は及んでおり、絶滅危惧種は増加の一途を辿っている。
 今回、SIRUPとShin Sakiuraが制作した楽曲は、いつ聞けなくなるか分からないかけがえのない地球で“今聞こえる自然音”を取り入れた、私たちが生きるこの地球の尊さを思い浮かばせるものに仕上がっている。本プロジェクトを経て変わった意識や、自然音を採集するなかで感じたことなどについて二人に伺った。

“持続可能な”楽曲にしたかった

ー今回『FOREVER』を制作をするにあたって長野県大町市を訪れたそうですが、自然の中に滞在してどのようなことを感じましたか?

Shin Sakiura(以下、Shin):まず、僕らはもともと“自然の一部だった”ということを感覚的に思い出しました。今の生活に不可欠になっている電気なども、人間がもともと地球にあったものから生み出したもので、今住んでいるここ日本も遡れば荒野や森で、実は“勝手に住んでいるだけなんだ”ということを思い出させられました。

SIRUP:僕も同じですね。僕たちは自然の一部だったんだな、ということを感じました。

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ー自然音を採集して、何か発見や気づきはありましたか?

Shin:はじめ僕は自然音に対して「繊細で、かき消されてしまう」ようなイメージを抱いていました。ですが、いざサンプリングしてみたら全ての音を乗っ取って、一番前に出てくるくらい一つ一つが強くて驚きました。

SIRUP:僕らが自然音に聴き慣れているから優先的に聞こえてくるのか、それとも自然音がそれ一つでも十分成り立っているから際立って聞こえてくるのかは分からないんですけど。それぞれがお互いに主張し合っていて、驚きましたね。

Shin:例えば、自然音でバスドラムの音を作る際、長野県を訪れた先にあった日本家屋のふすまを閉める音を使ったんですが、ちゃんと高音域から低音域まで出るんですよ。若干ピッチはいじりましたけど、それだけでちゃんと音の素材として使用できて。

SIRUP:あと、それぞれの自然音自体にリズムがありました。自然音同士を使うだけで、勝手にグルーヴを感じられたり、それぞれの音のタイミングを調整していないのに、そのままのリズムで良い感じに聞こえてたりして。不思議な感覚でした。例えば、2番のサビ前に僕がリンゴをかじった「シャリッ」って音が入っているんですが、それもそのまま使えたので面白かったです。

ーそんな自然音を使用するなかで、特にこだわった点はありますか?

SIRUP:自然音を取り入れた音楽って、アンビエント要素を感じる癒し系の音楽になることが多いんですけど、そうではなく今回は聞いていて“テンションが上がる曲”にしたかったんです。アンビエントミュージックではなく、自然音を使ったダンスミュージックにしたかった。歌詞に関しても単純に楽しく聞ける曲にするために、メッセージ性の強すぎない抽象的な歌詞にしました。でも楽曲を通して伝えたいことがあったので、抽象的だけども逃げずにちゃんと向き合っていて、でも厳し過ぎない。そういう絶妙なバランスを考えて書きました。

Shin:もしこれが僕のソロプロジェクトだったら、実験音楽のようなアンビエント要素が強い楽曲にしていたと思うんです。でもSIRUPと共作する意味や、今回の楽曲を通して伝えたいことを考えたときに、ポップスとして成立させた方が目的にあっていると思いました。なので、僕もSIRUPが表現したいことに寄せて、言いたいことを活かせるように意識して音を制作しました。

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SIRUP:今回は、ただ「プロジェクトで作られた楽曲」ではなく、何度も聞いてもらえる楽曲にしたかったんです。“持続可能な”楽曲にしたかった。なので、二人ともあらゆる工夫をして楽曲を制作しました。

日本では音楽について説明するとダサくなるっていう風潮も感じていた

ーサビに歌詞がないのにも何か意図があるんでしょうか?

SIRUP:そうですね。サビってどうしても「何を言うんだろう?」って聞いてしまうじゃないですか。「気候変動」というテーマで楽曲を作るなかで、その現状をシリアスに伝えることもできたんですけど、あえてそうしませんでした。シリアスな言葉でダイレクトに届くものではなく、聞くだけで自分と自然との繋がりを思いだせるような楽曲にしました。

ーなるほど。今までもShinさんがSIRUPさんの楽曲のサウンドプロデュースを務めるなど、さまざまな形でコラボレーションしてきたと思うのですが、今回の共作で新たな発見などはありましたか?

SIRUP:二人のネクストステージにいったというか…。大きな発見がありましたね。

Shin:うん。今回、お互いの音楽への向き合い方について腹を割って話すことができたんです。今までは制作するなかで、お互いが楽しいと思える“プロセス”を大事にしてきたんです。ただ、今回のプロジェクトは「いつも通りにやっていたら着地しない」ということに気づいて。

SIRUP:そうそう。一回、かなりナーバスな雰囲気になったよね(笑)。今までも、お互いに言葉でちゃんと伝えるタイプだと思っていたんですけど、実は知らないことがたくさんありました。

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Shin:うん、かなりナーバスになったね(笑)。SIRUPが言うように、お互いに話し合うのは、すごく必要な作業でした。音楽を作る行為って、実はものすごく繊細なことだと思うんですね。制作するなかで、自分の恥ずかしいところや苦手なところを出していかないといけない。でも人間ってどうしても、そういうところを上手く隠してしまうんですよね。ただ今回のプロジェクトをやり切るには、いつも隠してしまうようなところを一度壊す必要があると感じたんです。その結果、今までは出し切れていなかった、お互いの苦手なところに向き合うことができました。

ー実はお二人でシェアできていなかった部分を知ったり、自分自身に向き合ったりする機会になったんですね。

SIRUP:そうですね。あと「日本でのアーティストのあり方」について去年から考えていたことがあったんですけど、それについても改めて考えるきっかけになりました。

ーどんなことでしょうか?

SIRUP:日本でアーティスト活動をする場合、「音楽で全て表現しなくてはいけない」という風潮がある気がしてたんです。それ以外の部分、つまり“個として持っている思想”とかは隠してブランディングしなくてはいけなくて、曲に関してもリスナーが受け取った通りで良いみたいなところがあって。ジャンルに関しても細かく分けずに全て「J-POP」として括られてしまうことが多いですよね。

Shin:分かる。日本で音楽活動をしていると、ミュージシャンとしての自分と、それ以外の個としての自分とが直結しないよね。「SIRUP」っていう名義はそれだけで完結してしまって、彼の思想や個人としての彼を表現することができない。音楽や表に出る部分だけが独立していて、そうじゃない部分は無視されるみたいな。

SIRUP:うん。かといって、日本では音楽について説明するとダサくなるっていう風潮も感じていたし、自分の気持ちについて話すときもフォーマットで話している感じがあって。でもそれって音楽の可能性をすごい狭めているなと思った瞬間があったんです。音楽に失礼だなって。だから、こうやって言葉で発して“点を置いていく”活動も重要なのかなと思いました。例えば、楽曲を気に入ったリスナーがいろいろと検索してこういう情報をみつけて、それを読むことで今までと楽曲の聞こえ方が変わるとか。そういう多角的な活動の仕方もしていきたいと改めて思いました。

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今回の楽曲が“心をちょっと楽にするツール”になれば嬉しい

ー本プロジェクトを通して、さまざまな気づきがあったかと思うのですが、今回の楽曲制作が今後ご自身の音楽活動にどのように影響を及ぼしそうでしょうか?

SIRUP:今回Shinちゃんと共作して、曲を作るときの視点は無数にあるから「どんだけ仲良くても油断しない」というのが大事だと改めて感じました。ちゃんとお互いの深いところを見せないといけないなと。それを知れたのが、大きな学びでしたね。

Shin:僕はこの楽曲を制作して、音楽制作に対する姿勢がだいぶ変わったと思います。楽曲を制作するにあたって、自然音を録音するために里山を訪れたり、環境問題について考えたりするなかで、「自分が自然の一部であること」を強く感じました。同時に音楽も同じようにとらえられる気がして、自分は今まで「音楽と自分を切り離していた」のかもと思ったんです。“音楽は自分そのものだった”ということに今更気づき、これまで以上に自分が感じるものを大切にしたいと思うようになりました。

ーお二人が「気候変動」に対して、もともと抱いていた印象と、日頃気をつけていることを教えてください。

SIRUP:僕はここ5年くらいで、「気候変動」についてとても意識するようになりましたね。例えば、最近はプラスチック製品をなるべく使わないために、水筒を持ち歩くようにしています。

Shin:僕は物事を調べるのが好きなので、サステナブルに気をつかっている企業を調べて、そこの食品を買ったり、再生可能プラスチックで作られているメーカーの服を買ったり、購入するものに気を配っていますね。「気候変動」への取り組みについては、いろいろな取り入れ方があると思うんですけど、僕は購入するものに気をつかうというやり方があっていて。

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SIRUP:それで言うと、僕が使用している水筒も、環境に配慮している企業のものを購入しました。それに、買うもの一つ一つに目を向けると、自分が本当に好きなものが明確になっていくと思うんですよね。

Shin:僕も、買うもの一つ一つを意識すると、自然と自分の暮らしが豊かになっていくように思います。例えば、ファストファッションが環境に負荷をかけていることを知って、長く大事に使えるものを購入しようってなると、自分が欲しいものをよく考えるようになる。それって、自然と自分と向き合うことにもなっていて、勝手に自分が好きなものが洗練されていくんです。

SIRUP:うん。それによってアイデンティティが形成されていくと思うし、みんなそれを探してる気がする。やり始めは多少カロリーが必要かも知れないけど、自分の好きなものが明確になってくる感覚を知ったら、自然と楽しくなると思う。

Shin:あと環境問題に気を配るというと、何かを我慢したり、苦しまなくちゃいけないという印象を持ちがちですけど、そう思わないでほしいです。実は僕はもともと会社員だったんですが、当時は正直環境問題にまで気を配る余裕はなかったんですよね。売り上げを出せなかったらクビになる、居場所がなくなるとか、目の前のことに必死で。僕は今たまたま、「気候変動」などいろんな社会問題に気を配れる環境にいるけど、かつての僕のようにそれが難しい人もたくさんいると思います。だからこそ、それぞれが自分にあったやり方で生活に少しずつでも取り入れられたら良いなと思います。

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ー最後に、本楽曲がリスナーにどのように届いてほしいか教えてください。

SIRUP:いつも僕を応援してくれて、僕の楽曲を聞いてくださっているリスナーの方が、いつも通り楽しく聞いてもらえる楽曲になったら嬉しいです。

Shin:そうだね。「いい曲あるよ〜」って友達に勧めてもらって聞く、くらいの感じがいいよね。

SIRUP:うん。そうやって聞いていて、無意識に環境問題に興味を持ったり、携わるきっかけになれば一番良いなって思います。あとは、自分と環境問題との距離感を測ったり、自分なりの距離を調整するきっかけになれば嬉しいです。また「気候変動」などの環境問題に対してアクションを起こしたりするなかで、“心をちょっと楽にするツール”になれば嬉しいです。

Shin:僕も全く同じですね。環境問題などに向き合うなかで、しんどくなったときに息抜きできるような存在になれれば嬉しいです。

一人の力は限られているが、みんなでやれば社会は変えられる

 最後に、国際環境 NGOグリーンピースジャパンの林恵美(はやし えみ)からも今回のプロジェクトについてコメントをいただいた。

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グリーンピース・ジャパンの林恵美(はやし えみ)と

今回のプロジェクトで伝えたかったのは、環境問題に関心を持った人たちが繋がって一緒に働きかけをすれば、社会を誰もがサステナブルに暮らせるような社会システムに変えることができるという点です。

マイボトルを持ち歩くなどの一人一人の取り組みもとても大切ですが、それだけで「本当に社会が変わるのかな?」と感じてしまうこともあるかと思います。

グリーンピースは、誰もがサステナブルな暮らしができるように、そもそもプラスチックに頼らなくても、CO2(二酸化炭素)を大量に出さなくても、快適に暮らせる社会を実現するために政府や企業へ働きかけるキャンペーンを得意としたNGOです。

例を挙げると、コカ・コーラなどの使い捨てプラスチックを大量に作って世界へ流通させている企業へ国際キャンペーンを行い、使い捨てではなく、繰り返し使えるリユースの仕組みを取り入れるように働きかけています。世界中の方から賛同が集まり、700万筆を超える署名が集まったのですが、その力もあってコカ・コーラは2030年までに25%の商品をリユース可能な容器で販売するという目標を発表しました。

一人の人間の影響力は限られていますが、一緒に協力することで、このようなシステムチェンジを実現することができます。ぜひグリーンピースのこうしたキャンペーンに参加していただき、社会を変えていく力になってほしいと思います。また、環境問題に関して、不安を共有できる仲間がいるという意識を持てることも、今後より大切になってくると思います。環境問題に取り組んでいると、環境問題の深刻さに不安になってしまったり、無力さを感じてしまったりするときもあると思います。最近ではそれらを「気候不安症」、「エコ不安症(Eco Anxiety)」などと呼ぶようになりました。

周りに環境問題についての関心を共有できる人がいなかったり、未来が不安になってしまったりしたときに「こんなにたくさん環境問題に取り組む仲間がいる」「自分と同じような思いを抱えている人がいる」と知ることは、前向きに継続的に環境問題に取り組んでいくためにとても大切だと思います。そのために、グリーンピースを環境問題について関心がある人と繋がるためのプラットフォームだと思ってもらえると嬉しいです。

その第一歩として、まずは今回のプロジェクトの特設サイトから、LINEで友だち登録をして、グリーンピースと繋がってもらえたらと思っています。LINEでは、イベントや環境問題の最新情報、キャンペーンのお知らせなどをしています。今回はLINE登録の特典として、SIRUPさんとShin Sakiuraさんのフィールド・レコーディングの様子をまとめたスペシャルレポートもお届けします。

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SIRUP

Website / Twitter / Instagram

ラップと歌を自由に行き来するボーカルスタイルと、自身のルーツであるネオソウルやR&BにゴスペルとHIP HOPを融合した、ジャンルにとらわれず洗練されたサウンドで誰もがFEEL GOODとなれる音楽を発信している。2022年に入ってからは、イギリス出身の世界的ポップスター「Years & Years」のRemix参加や、世界各国で愛されるアイリッシュ・ウイスキー「JAMESON 」とのコラボを発表するなど、日本を代表するR&Bシンガーとして音楽のみならず様々な分野でその活躍を広げている。

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Shin Sakiura

Website / Twitter / Instagram

東京を拠点に活動するプロデューサー/ギタリスト。バンド活動を経た後、2015年より個人名義でオリジナル楽曲の制作を開始。エモーショナルなギターを基としながらもHIP HOPやR&Bからインスパイアされたバウンシーなビートとソウル~ファンクを感じさせるムーディーなシンセ・サウンドが心地よく調和されたサウンドで注目を集め、これまでに『Mirror』(1stアルバム/2017年10月)、『Dream』(2ndアルバム/2019年1月)、『NOTE』(3rdアルバム/2020年3月)、3枚のフル・アルバムをリリースしている。また、SIRUPや向井太一、iri、土岐麻子、Aile The Shota、アイナ・ジ・エンド等の楽曲のプロデュース/ギターアレンジ/プログラミングを手掛けるなど活躍の場を広げ、アパレルブランドや企業のPV、CMへの楽曲提供も行っている。TRIGGER制作によるアニメ作品『BNA』のエンディングテーマを手掛けたことでも話題となった。

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