過去、世界10カ国で16万人以上を動員。しかも、レディ・ガガやウィル・アイ・アムなどの有名アーティストが参加してきたRockCorpsというフェスが存在する。そのフェスのクールなところは、お金ではなく誰もが平等に持っている「時間」を提供することの対価として、フェスに行けるというところ。チャリティは裕福な者だけのものじゃなく、『普通の人』や『若い人』のものでもあるのだ。
「私たちのフェスはユニークです」彼はそんなふうにRockCorpsのフェスを形容した。今回話を聞いたのは、RockCorpsの創始者の1人でありCEOのスティーブン・グリーン。RockCorpsは4時間のボランティアへの参加の「対価」として、フェスのチケットを提供するプロジェクト。インタビューではRockCorpsがユニークな3つの理由を教えてくれた。
①レディ・ガガ/リアーナ/ニーヨも賛同した、革新的ビジネスモデル
<写真: NE-YOとボランティアする参加者ら>
「音楽を使って人々のボランティア活動を促進しようと持ちかけられたとき、何か新しいビジネスモデルを作らなきゃと思った。従来のやり方じゃ若い人に参加してもらいにくいし、事業の拡大をしにくいから。でも、様々なアーティストたちが協力してくれるというのは心強かったね。ちょうどその頃(2001年の9.11後)は企業が社会に影響を与える取り組みが多く、どうなるかわからないけど、そんなアイディアでやってみようということで始まったんだ」
RockCorpsは従来のNPOではなく革新的なマーケティング企業で、世界に大きなソーシャルインパクトを与えている。これによって、従来のNPO的なチャリティ活動ではなかなか集められない若者層を取り込むことにも成功しているそうだ。日本では、JTをはじめとする企業が自社のCSR活動としてフェスに協賛していることも強みとなっている。
②「ボランティア×フェス」で作れる最高の雰囲気
<写真: 宮城県での「チカラをあわせて牡鹿半島の公園づくり!『女川山野草園』の開墾のお手伝い」終了後に参加者にチケットを渡すスティーブン>
RockCorpsではボランティアの対価として「フェスへの参加権利」を渡す。そのフェスを「セレブレーション」と呼んでいる。共にボランティア活動に参加した仲間たちと再会できるからこそ、そのフェスには特別な一体感があるそうなのだ。RockCorpsのセレブレーションでは、ただ音楽や有名アーティストに会うことを楽しむのではなく、同じボランティア活動に参加した者同士のコミュニティ形成を可能にするのだ。
「これが私の最も楽しみにしている瞬間だ」
参加者一人ひとりにチケットを渡すときについてそう語るスティーブンは、先日も東北でのRockCorpsのボランティア活動に参加し、終了後には参加者に直接セレブレーションのチケットを手渡した。セレブレーションにも彼は必ず参加しており、そこで参加者たちが自らのボランティア活動を祝福しあう姿を見るのが大好きだという。
<写真: 福島県での「南相馬の子どもたちを喜ばせよう!公園そうじのお手伝い」でのスティーブン(後列の左から3番目)>
「日本でのセレブレーションにはユニークな雰囲気がある。コンサートに参加するとき、最も楽しみなのは何かとつながっているという感覚だと思う。他の観客と一体になっているという感覚だ。RockCorpsのセレブレーションでは、通常のコンサートと異なり、始まる前から観客同士が既に『つながって』いる。それはコミュニティのためにボランティア活動をした者同士であるからだ。日本のセレブレーション当日の参加者たちを見ていると、コンサートの1、2時間前には会場にきて、仲間との『再会』を楽しんでいるんだよ」
③貧富の差は関係ない。誰もが平等に持つ「時間」という対価
「典型的なチャリティコンサートは参加者がチケットを買い、その売り上げがNPOに寄付されて慈善事業に使われる。だけど、それでは『普通の人』や『若い人』が参加できないことがあると思うんだ。若者には、チャリティのためのお金がないことが多いからだ。そうするとチャリティはお金持ちの人のものになってしまう。でも、『時間』なら誰もが1日24時間、平等に持っているんだ。参加者がどんなに裕福でもどんなに貧乏でもいい。この星で最も民主的なものは『時間』だと、僕は思うんだ。だから、このフェスでは、人々は『時間』を提供することでボランティアに参加ができるんだ」
ユニークなアイデアが実現させたマイペースな社会貢献
世界に存在する様々な問題の手助けとなる、チャリティー活動。しかし、いつからこの活動は「富裕層の特権」になってしまったのだろうか。世界が抱える問題の手助けは、なにもお金がなくても、不屈の正義の心がなくても、もっとユルく、自分のペースでできるのだ。ただフェスに参加したいという不純な理由でも、暇だったから4時間を提供したという理由でも、なんでもいい。チャリティー活動を「民主化」し、ユニークな形の「対価」として参加者に還元する。そんな「ユルい社会貢献」の仕組みを築いたRockCorpsの活動から、今後も目が離せない。
<全参加アーティスト決定!今年は公式アンバサダーも>
RockCorpsのフェスではお金を支払う必要がなく、自分の「4時間」を使ってボランティアを行うことで、4組のアーティストの出演するフェスに参加が可能。
出演アーティスト
カーリー・レイ・ジェプセン
アジアン・カンフー・ジェネレーション
HY
Aqua Timez
公式アンバサダー
高橋みなみ
東北3県(福島県、岩手県、宮城県)と首都圏(東京都、神奈川県)で合計4,000人が各4時間ずつ参加できるよう企画されている。
募集期間と実施期間はともに8月末日まで。
気になった方はこちらから。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。