「悲しいけど、服も人もフェイクばっかり。これは現代の闇だって私は思います」。
そう話すのは、自身で立ち上げたブランド「SEE YOU YESTERDAY(シー・ユー・イエスタデイ)」のデザイナーであり、同時にInstagramのフォロワーが2万人を超えるインフルエンサーでもあるulala。そんな彼女が、近頃は「服も人もフェイクばっかり」と言うのだから、気にならないわけがない。
「言いたいことは全部言ったので」というulalaが語った、ファッション業界の闇、インフルエンサーの矛盾、物事の本質、その他の、いろんな話。
フェイクのないブランド「SEE YOU YESTERDAY」
ulalaがSEE YOU YESTERDAYを立ち上げたのは2年前。アメリカ・カルフォルニア州にあるサンタモニカカレッジで、ファッションマーチャンダイジングを専攻し卒業したあとのこと。
もともと在学中にジュエリーの買い付けや自ら工場と交渉しアイテムを作ってはいたが、本格的にブランドを立ち上げたいと一念発起。友人らの助けも借りて、在米中に創業した。ブランドを立ち上げる際に彼女がこだわったのは、ブランドが「フェアトレード」であるということ。
大学でファッションの勉強をしていくなかで、発展途上国の人々が、特に子どもや女性が、先進国のファストファッションのために過酷な環境の中でひどく安い賃金のために働いていることを知り、衝撃を受けたulala。自身のブランド立ち上げる際は「作り手にちゃんと還元できるブランドを目指す」と決めたという。
苦しみながら服を作っている人がいるって現実を変えたい。誰かが得をして誰かが損をしてるのを見るのは本当に苦しい。現状を変えるのはすごく難しいけど…ちょっとずつでもいいから、そういうことを伝えていく役目はブレずにやっていきたいな。
創業後、試行錯誤を経て、フェトレードができる体制を整えている最中のulala。
ブランドを立ち上げてこれまでに一番手応えを感じたというのが、同じくアパレルブランド「CLOUDY TOKYO(クラウディトーキョー)」とコラボして、ガーナ産の生地を使ったアイテムを制作し、その売上から5%をガーナの工場に寄付、現地から「ミシンが一つ買えた」という知らせが届いたときのことだった。
個人でやってるから売上から5%って正直大きな額なんです。でも、売上が多いかどうかよりも、その知らせが届いたときのほうがよっぽど幸せでした。それがきっかけで改めてモチベーションも上がったし、「やっぱりこういうことをやりたい」って思いました。
今はデザイナーである叔母が縁を持つインドの工場と、来夏をめどに何かを仕掛けたいと考えているそうだ。
パクリが横行する日本のファッション業界
常に笑顔を絶やさないulalaが、珍しく眉間にシワを寄せて口にしたトピックがある。アパレル業界におけるデザインの盗用だ。今回、ファッションをテーマにさまざまな話を聞いてきた中で、とりわけその語り口が厳しかったのがこの問題だ。
たびたびニュースで見かけるように、ファッションブランドが他のブランドからデザインを盗作(この線引は非常に難しいものの)する流れは止む気配がない。しかし、著名なブランドが、まだ無名ながら斬新なアイデアを提案するブランドのデザインを盗むというような、明らかに力関係がある場合には話題にすらあがらないと彼女は言う。
結局有名どころのほうが目立つからあまり問題にもされなくて、「ああ、こうやってファッションって死んでくんだな」って。ちゃんと信念を持ってる子もいるのに、その人たちの苦労を潰しちゃって…本当に悩ましいなあって思う。
「そういうところはたぶん自分のブランドに誇りがないんでしょうね。だからパクれる」と付け加えるulala。自身もSEE YOU YESTERDAYの他に運営しているブランド「Oohlala Apparel(ウーララアパレル)」のアイテムのデザインをあるブランドに盗用されたことがあるといい、そのときは思わず閉口したという。
デザインの盗用は基準が曖昧で、法的にも判断が非常に難しい分野だが、ulalaいわく、「似たようなデザインができることはあるけど、明らかに似せてきてる場合は声を上げたほうがいい」とのことだった。
インフルエンサーの矛盾
Instagramのフォロワーが2万人を超え、世に言うインフルエンサーでもあるulala。
しかし彼女自身は、インフルエンサーという存在の意義に疑問を投げかける。
インフルエンサーの中に「このブランド最悪だった」って言いながら、そのブランドをPRしてる人はかなりいます。フォロワーはそれを信じちゃうから、そういうのを見ててなんだかなって。なんで嘘をついてまでPRするのかっていうと、案件にもよるけど1回で2~3万はもらえるから、「バイトしたくないしやるか」っていう理由が大半ですよ。もうインフルエンサーは憧れられる存在ではなくなってますね。
フォロワーは自分がフォローしているその人が本当のことを言っているのか、そこを疑うべきだと話すulala。彼女は同時に、インフルエンサーに対しては、安易にPRを受けることの是非を問う。
よく知らないブランドからきた案件なのに、「あれもこれもやりたいやりたい!」っていうのはダサい。
「悲しいけど、服も人もフェイクばっかり」という彼女の言葉の真意は、実体験に基づくもので、それは決して無視できないほど、私たちの生活の中に浸透している。
正直な話、常に正しい情報を取捨選択するのが不可能なほどに、現代の社会は情報に溢れている。その上で私たちに求められるのは、「これは本当かな?」と疑う視点を頭の片隅に常備しておくことだ。
歴史のあるマスメディアが発信していても、個人からの発信でも、自分とは反対意見であれ同意見であれ、その情報を鵜呑みするのは控えたほうが賢明だ。
では、インフルエンサーとみなされ、少なからず疑いの目を向けられる立場にいるulalaは、その点をどう考えているのだろうか。
別に、いつも通りにいるだけ。嘘はつかず、自分の感覚に従って生きるだけですね。
どうやら愚問だったようだ。生き方にも信念にもフェイクのない彼女は、いつだって太陽のように眩しい。