インターネットに常にアクセスできることが当たり前の環境で生まれ育った“デジタル世代”にとって、常にオンラインで誰かと繋がっている状態は「普通」である。
「SNS中毒」や「スマホ中毒」という言葉が生まれるほど、私たちミレニアルズ世代はインターネット上のつながりに依存している。そんな世の中では、ネットから離れている時間や一人でいる時間を「孤独」として捉える人は少なくないだろう。いつのまにか現代社会では人と繋がっていない状態が「孤独」と同義語のようになってきてしまっているのではないだろうか。
しかし果たして本当に「繋がっていない状態」は「孤独」なのだろうか?あるスペインのデザイナーがそんな疑問を提示した。彼の名はジョーディ・イランゾ。ヨーロッパで注目の若手インダストリアル・デザイナーだ。
技術の発展により常にインターネットで人と繋がっている現代社会の中で、一人の時間を楽しみながら他人から隔離できるスペースを作るために彼はSOUFUUというプロジェクト名で室外家具をデザインした。
あえて狭い空間で仕切ったという内装は、個人のスペースを保ちつつも、壁がなくそれぞれのスペース間の距離が近い。天井部分はハンモックになっており、個人のスペースを確保しつつリラックスできるデザインを心がけたそうだ。
個人の所有する土地が比較的小さい日本で実用性があるかどうかは別として彼のデザインは「一人の時間」と「親密さ」が両立できるというコンセプトの上に成り立っているところが興味深い。
米国、ピッツバーグ大学のブライアン・プリマック教授が今月発表した新しい研究結果によると、過度なSNS利用は「孤独」を生むという。
1787人の19才から32才のアメリカ人を対象に、SNS利用頻度と「孤独感」のデータを採集したところ、1日2時間以上をSNSの時間に費やした人は、そうでない人よりも孤独感を2倍感じていたそうだ。
原因としては、単純にSNS上にいる時間の分だけ実際に人とコミュニケーションをする時間がとれないということと、インターネット上で友達の美化された人生を見ることで、自分がその中にいないという事実を突きつけられるから。
インターネットの発展は、国境を越えて音楽やアートなど同じ情熱を持った人が集まるコミュニティがオンライン上に出来たり、これまでは社会の中で無視されてきた人種や、セクシュアリティなどの社会的マイノリティーが安全に集まれるプラットフォームが確保されたりと、素晴らしい面もたくさんある。
しかし一方で、SNSが生活の一部になる前は私たちが問題にしていなかった「一人の時間」がインターネット上で常に目に入ってくる「他人の美化された時間」のせいでまるでマイナスなことのように錯覚されはじめてしまっているのではないだろうか?
インターネット普及率が9割を超える日本でこそ、その事実を認識し、過度な利用を減らしSNS上の人生が全てではないということを忘れないように注意することで私たちの「孤独」は減り、人生はより豊かなものになるのかもしれない。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。