アーティストでありミュージシャンでもあるケン・バトラー(Ken Butler)さん。彼はゴミやガラクタを使ってこれまで実に400以上にも上る楽器を制作してきた。
子どもの頃からバイオリンを習っていたバトラーさんは1978年、自分の家の地下で前の住人が残していった斧を見つけた。理屈では説明できない何かが彼を突き動かし、衝動的にその斧をバイオリンのように顎の下に抱えたそうだ。そこから試行錯誤し、その斧をベースに地下にあったガラクタをつなぎ合わせバイオリンを作り上げた。それが彼の「楽器じゃないものから楽器を作る」取り組みの始まりだったという。
それ以来バトラーさんが制作に使ってきたものは傘、シャベル、テニスラケット、ゴルフクラブ、スプーン、時計など様々である。しかもこれらを音が出せる文字通り「楽器」として制作してきたのだから驚きである。
物の残骸にバトラーさんが詩的な命を吹き込むことで生み出されるハイブリッドの楽器は、社会の中で価値がないと決められたものに新しいアイデンティティを与える。
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これまで、美術館、ライブハウス、フェスティバルそしてテレビ番組などあらゆる場所で演奏を披露してきた彼。昨年の3月には、アメリカのジョージア工科大学で行われた、イノベーティブなアイディアと斬新なデザイン、そして高い音楽性が求められるThe Gutham Musical Instruments Design Competitionで受賞したほどの実力があるのだ。
彼の制作を通して、わたしたちの身の回りのガラクタだと思っていたものにも、アイデア次第では価値を生み出すことが可能なことが分かる。
物を次々と買っては捨てていく資本主義の現代社会。みんながみんなバトラーさんのように芸術や音楽の才能があるわけではないかもしれないが、いらなくなったものに目をつけ、生まれ変わらせ、価値をつけるという工程から全ての人が学べることがあるのではないだろうか。
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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。