「今必要なのは、自分がどういう考え方を持っているのかを考えること」清水文太が話す 、違いとの向き合い方|キットずっといい未来 Vol.5【Sponsored】

Text: Maki Kinoshita

Photography: Jeremy Benkemoun unless otherwise stated.

2021.3.9

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キットずっといい未来
プラスチック問題への課題意識から、食品メーカー・ネスレが2022年までに全ての“キットカット”のパッケージをリサイクル・リユース可能な素材へと変えるサステナブルプロジェクト「#キットずっと」を始めた。紙パッケージの採用は小さなことかもしれないけれど、そこで生まれたアクションは社会に変化をもたらす大きな一歩。この動きに端を発し、現在#キットずっとプロジェクトはサステナビリティにまつわるさまざまなコンテンツを発信している。本連載「キットずっといい未来」(ネスレ&NEUT powered by REING)では、その活動の一環としてNEUT Magazineとコラボレーション。環境問題に対してアクションを起こす人々をインタビューしていく。▷Website / Instagram / YouTube

 

Vol.5では、スタイリング・クリエイティブディレクション(アートディレクション)のほか、コラムニストや音楽・パフォーマンスなど多岐に渡る活動を展開する清水文太にインタビュー。彼はこれまで震災後の福島を訪問して感じたことやコロナ禍の心境の変化についてなど、混乱する社会のなかでの自身の率直な声をメディアで綴っている。2021年1月には二回目の緊急事態宣言も発出され、未だに新型コロナの収束の目処はついていない。自粛生活のなかでオンラインで過ごす時間も増えた今、大量の情報や答えの出ない問いとの向き合い方なども含めて、自分との付き合い方について彼に話を伺った。

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清水文太

ー過去にNEUT Magazineでも福島へ行ったときのことを綴っていましたが、初めて福島を訪れた経緯を教えてください。

初めて福島に行ったのは2年くらい前です。きっかけは、福島でニットを作っているブランドL’ANIT(ラニット)のあやみさんという方が地元でやっているPEÑA(ペーニャ)という交流会に誘われたことです。川俣町という町で、地元の人と交流する場でファッションショーをしないかという話になって。自分の持っている洋服をまとめて全部送って、その場にいる川俣町の人たちに着てもらったのが始まりですね。その翌年は子どもたちと交流する場で音楽をつくってくれないかと頼まれて、また行ったりもして。東日本大震災が起こったときは中学2~3年生とかで実感がなかったけど、直接現地を見るとネットで廃れていく情報とその場所で実際に起こっていることってあまりにも違うんだなって思いました。

ー具体的にどんな違いを感じましたか?

今の福島にはいろんな建物や駅ができていて、その地でどうやって暮らしていくかを考えてる人たちがいます。当時行った理由としては、自分があのなかでできることに集中しようと思ったからと、純粋に楽しむためでした。普通に向こうにある観光地も見たし、僕のことを知ってる地元の子がいたから案内をしてもらったり。実際、放射性廃棄物とか問題はたくさんあるし、行く前に「気をつけて」って言われたりもしたけど、自分は震災地っていうよりかはこの場所で楽しもうって気持ちがとにかく強かった。最近のメディアは楽しいことを伝えるのが減ったなと感じます。だから福島に行ったときも、一旦今まで見てた震災の情報とかは意識的になるべく端に置くようにしてました。フィルターがかかると何が楽しいのかが見えなくなるから。福島のいい情報ってメディアでは全然流れてこない。もっとポジティブな面が広がっていけばいいかなって思ってます。

ーメディアによるフィルターのかかった発信について触れられていますが、文太さんは普段何かを発信するうえで意識していることはありますか?

福島のこともそうですが、情報の風化はメディアによって起こると思っています。ネットは膨大な情報を発信できるからどんどん情報が塗り替えられていく。これからそういう時代になっていくだろうからそれ自体は悪いことではないのだけど、個人的には情報を人の関わりとかに繋げていきたい。あとは、自分は仕事でいろんなことをしていますが、それもツールが変わるだけで自分のなかに変化があったわけではないんですよ。もちろんそれぞれ頭の使い方は違うけど、本質的にやりたいことは一貫している。今の段階だと「若い子がいろんなことをやりたいだけだな」と思われてるかもしれないけど、一見バラバラにも見える発信を「実は全て伝えたいこと、やりたいことは一つだったのだな」と短絡的ではない一貫したものに繋げることが目標です。本質的に人間がやりたいこととか、感情の論理って変化はないと思っているので。

ーコロナ禍でも「情報との関わり方」は大きなテーマだと思います。文太さんは情報との関わり方に限らずコロナ禍で自身の変化を何か感じていますか?

会う必要がある人、会いたいと思う人じゃないと会わなくなりました。コロナというよりも、緊急事態宣言が出て時間ができたことで今までの自分がいかに生活の緩急がない忙しい状態で仕事やものづくりをやっていたかということが分かりました。最近はLINEもSlackも、僕はやってないけどClubhouseもあるし、いろんなツールができて繋がりが日々生まれてる。そういったメディアには繋がりや何かを知るフックになるとかいいこともたくさんあるけど、情報が多すぎるなという印象はあります。この期間で整理する場所や時間が必要なんだと思いました。仕事をしていると、自分がやりたいビジョンとずれる瞬間も時々あって「なんでうまくいかないのだろう」と気分が落ちたりするんですよ。そのスパンが前の世界だととても短くて。でも、今は「だったら次こうしよう」と順序立てて考えることに時間を割けるようになって、バランスが取りやすくなったことが大きな変化かもしれないです。心のなかにある忙しいからこそできていたぐちゃぐちゃ絡んでいたものが解けていって、自分に対する不要な厳しさのようなものもなくなってきましたね。

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ー2021年1月に二度目の緊急事態宣言が出ましたが、今後も状況は変わっていくと思います。このような事態のなかで人や社会の変化に対してどのように向き合っていますか?

今必要なのは、自分がどういう考え方を持っているのかを考えること。この世の中は変化してしまったから、順応するのに時間がかかるか、かからないかだけの問題だと思うんですよ。大事なのは、全員の向き合い方も感じ方も違うと認識すること。福島に対する差別やCOVID-19に感染した人への差別なんかは、違いというものをどう扱ったらいいか分からない人が実体のない違和感のようなものをぶつけ合って起きていると感じていて。そもそもそれが起きるのって自分の指針や考え方みたいなものが今社会に出ている情報に踊らされているからだと思います。そういう状況が一番危ないと思います。自分が何に違和感を覚えるのかが分からないと、問題に対する自分の答えは整理されない。自分の思想を整理した方が福島への支援もそうですし、いろんなものへ関わりやすいかなと思います。

ー文太さんはいい未来への一歩とはどのようなものだと考えていますか?

極端な話、自分が人間かどうかも人間が決めたことだし、脳みそで認識される情報だって、人間が編み出したもので、本当はどうなっているかなんて誰にも分からない。結局自分が見る景色は今までやってきたことや見てきたものの積み重ねで変わる。好きとか嫌いとか本能がそう言ってるものって答えは出ないけど、考えていくことが大事だと思っていて。いろんなことの存在を疑うのってある種孤独で苦労もあるけれど、考えることを繰り返していくと「この人だったら同じ方向を向いて一緒に歩めるな」って思う人に出会える。そういう人たちを大事にするためにどう過ごしていくかを考えるのは想像力と言われたり、人間が持つ力。それぞれに異なるすごいエネルギーが眠っていると思うので、そのエネルギーの使い方や、それによって周りの人に何を与えられるかが自分の幸福度とか生き方を変えていくと思う。バランスの取り方も人によって違うから正解はないけれど、一人一人考えるだけでも世界は変わるんじゃないかな。

ー最後に、私たちにもできる小さなアクションを教えてください。

なんとなく好きなものは一歩踏み出していいんじゃないかな。「どうしよう、これ、分かんない」っていうときはとりあえずちょっとやってみたり。0から1にするのが一番大変だから。自分の場合も洋服や音楽はもともと好きなものでした。スタイリングの仕事は、最初はアーティストのツアーの衣装だったんですよ。好きっていうものが、急にステージやライブでどう輝けるかっていう他者的なものになったから、そのときにすごい学びましたね。最初はエゴでいいと思うんですよ。音楽を作り始めたときも、自分の聞きたい音楽を作ろうと思ったし。でも自分の作りたいものを作ろうとすると、周りの景色もどんどんクリアになっていく。周りの景色がクリアになってくると、周りの景色も包括して作りたいようになるっていうか。その形がどんどん変わっていくんじゃないですかね。時間が経てば経つほどに、自分が伝えられる景色みたいなものが変わって広がっていくと思うから。でもそれをやめると広がんなくなっちゃうから、続けるってすごい大事なんだなって思いますね。

自分も客観的に見て決していい環境では生まれていないので、小中学生のときに「なんで生きてるんだろう」って理由を考えることも多かった。でも、それはネガティブな意味ではなくて、大切なものを見つけるための重要な時間だった。大変だったなりに自分の好きを続けて仕事をしてるけど、どうして好きだったのかを考えても本当になんとなく好きだっただけで、そこに理由はないというか。信じるとか、好きとか嫌いとか、根拠のないものから文化ができたと思う。好きなものって何にも変えられないと思うんです。

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清水文太

スタイリストとして、19歳から水曜日のカンパネラのツアー衣装や、著名人、テレビ・企業広告のスタイリング、Benettonをはじめとしたブランドのアートディレクションを手掛ける。コラムニストとして雑誌「装苑」をはじめとした多数メディアに寄稿。2019年に自身初アルバム「僕の半年間」を発売。RedbullMusicFesでのライブ出演や広告・映像作品での音楽提供など、アーティスト・スタイリスト・アートディレクターとして多岐にわたる活躍を見せている。▷Website / Twitter / Instagram / Instagram(works)/ Blog

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