世界中の奴隷の数は、400年前よりも現代の方が多い。
経済学者のSaddharth Kara(シッダルタ カラ)氏は、「16世紀から19世紀の約500年間に起きた奴隷売買よりも現代の奴隷の方が多い」という衝撃的な研究結果を発表した。(参照元:the guardian)
さらにILO(国際労働機関)は、16世紀から19世紀の間に、合計で1300万人もの奴隷が売買されたのに対し、現代では推定2100万人もの奴隷が世界中で働いていると発表している。
なぜ現代にも「奴隷」がいるの?
「奴隷」といえば、多くの日本人が世界史で習った15世紀頃の「三角貿易」を思い浮かべるのではないだろうか。コロンブスのアメリカ大陸の発見を機に、多くのアフリカ人が「奴隷」として労働させられた。
その「奴隷」制度は、南北戦争後の1862年、リンカーン米大統領の「奴隷開放宣言」によって禁止された。
それではなぜ、今でも「奴隷」が居て、さらにその数が増えているのだろうか?
その背景にあるのは、グローバルなサプライチェーンだと経済学者のカラ氏は言う。グローバルサプライチェーンとは、原材料の調達から製造・販売までを、世界規模で行うことである。特定の国で大量生産し、その役割を分業した方が効率が良いため、そのような生産形態が現在でも続いているのだ。
イギリスの経済学者によると、奴隷問題の発端にある人身売買は武器とドラックの次に最も儲かるヤミ市場だと言われている。(参照元:the guardian)現代では、一人の奴隷あたりの平均売買年間価格は数千ドルから数十万ドルで取引されている。
具体的な業界としてファッション、美容、コマーシャルセックス、建設、農業、漁業などが挙げられる。
2015年、イギリスではModern Slavery Actが制定された。これは一定の要件を満たす企業に対して、当該企業及びそのサプライチェーン上における奴隷労働、人身売買等の人権侵害の発生を防止する為の取組みの声明の開示を求めるものであり、企業の透明性を高めるものである。
なくならない「貧困」
このように、奴隷貿易をめぐる環境は少しづつ変化を見せてはいるが、なかなか無くならない。というのも、この根本には「貧困」問題が潜んでいるからだ。
奴隷だとしても少額でも収入がある現在の状況の方が、収入がなくなり路頭に迷ってしまうような状況よりもマシだ、と考える人がいる。この貧困の反対に、巨額の富を得る人がいる。
世界の裏側で当たり前のように起きている真相を見抜く力が今、私たちに必要とされているのではないだろうか。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。