「性教育パフォーマンス」をテーマにドラァグパフォーマーとして活動する、Labianna。自由な発想を持ちながらマッサージ師やダンサー、バーテンダーなど幅広い顔を持つフリーランサーのTatsuki。フィリピンの貧困問題解決に向けたNPO法人を運営する、Moe。
活動する場もバックグラウンドもさまざまな異色の3人が「Moxy Club」を結成し、活動を始めたのは、2021年の8月。同じ高校の先輩、後輩であったTatsukiとMoeが意気投合し、Tatsukiの知り合いであるLabiannanに声をかけオンラインで集ったのが始まりだ。
「Moxy Club」とは、自分の心と身体の幸せのために、「#性の話を当たり前にありのままに」がテーマのコミュニティ。インスタライブやnoteを通して、少し刺激的でありながらも、等身大の切り口でセクシャルトピックを発信している。「世界のどこを探しても自分みたいな人はいない、それだけ特別な存在」だからこそ、自分のカラダとキモチを大切にしてほしい。その思いを胸に性に関するアウェアネスを広める活動をしてきた。
今回、そんなMoxy Clubの3人が「気候変動 × セクシャルウェルネス」を軸に発信活動を行うKyoko Ordinaryを招き、「パートナーとの性的同意のあり方」についてトークセッションをインスタライブで行った。これは、そのトークを元に4人の会話を記事化したものだ。
Moxy Clubの3人とKyokoは原体験や日々の生活こそ全く違うものの、日本社会が描く「性のあり方」に違和感を感じている。ただそれを批判的に発信するのではなく、ゆるやかに楽しく発信したいと考えている。そんな4人が語る等身大の「性的同意」とは?
Moe
ファッションを通して社会課題の解決を目指すNPO法人「DEAR ME」理事。フィリピンの貧困問題から性教育への想いを強め、自分を大切にするセックスを普及したいという想いから、「Moxy Club」を立ち上げる。日本のセクシャルウェルネスの底上げを目指すコミュニティ、「Ethicondom」メンバーとしても活動中。
Tatsuki
人の身体をもっと良くすることを目指すマッサージ師でありながら、時にはダンサー、時には踊れるバーテンダーなど、幅広い顔をもつフリーランサー。
ラビアナ・ジョロー
ブラジルがルーツの性教育パフォーマー。ドラァグ・クイーン。女性に対して「ムダ毛」の概念が適応されることに違和感を持ち胸毛を生やしたドラァグ・クイーンに。日々のなかでキャッチした性に関する情報をパフォーマンスにこめたり、SNSで発信したりする。
Kyoko Ordinary
オーガニックやヴィーガンの視点でセクシャルウェルネスをキュレーションして発信。現在、Moeと同じく、「Ethicondom」メンバーとしても活動中。4/7国際保健デー前にコンドームのポップアップ「CONDOM LOUNGE☕️」を開催し、世界のときめくコンドームを展示した。
そもそも「性的同意」ってなに?
Moe:そもそも「性的同意」ってどういう意味?
Kyoko:性的な行為に対してその行為に及ぶ人たちが明確で積極的な意思を伝え合うこと、その確認を取り合うこと。
Labianna:要は、「セックスしたいけどあなたはしたいですか?」「チューしたいけどあなたはしたいですか?」「挿れたいけどあなたはどうしたいですか?」という明確な確認をとったうえで、パートナーからも「私もセックスしたい」という同意があること。ムードがいいときに最初だけ取るものではなくて、行為ごと、ステップごとに取ることが大切だと思う。
Moe:ワンナイトだけではなく、パートナーや結婚相手には性的同意が必要だと思う?確認作業はしようね?ってことだよね?
Labianna:私は大切だと思う。パートナー間の性的同意で、大切なのが避妊についての同意が取れているか。自分はコンドームを使いたくないと思ってるけど、相手は使ってほしいと思ってるとか、その不一致についても確認を取るべき。結婚していると、いつでもどんなときでも避妊せずにやってよいと思いがちなんだけど、そこは相手の意思を確認すべきだと思う。
Kyoko:隠れてピルを飲んでる人とかも多いよね。
Labianna:多いね。パートナーがコンドームをつけたり、避妊することに対して協力的ではない、でも自分は今、妊娠したくないから隠れてピルを飲んでるって人が結構いるね。
Moe:それって言いづらい、コミュニケーションが取りにくいってことだよね。
Labianna:あと単純に「性的同意」という言葉や概念を知らない人が多いと思う。
Kyoko:付き合ってたら、セックスするものでしょ?夫婦だから(コンドームを)付けないのは当たり前でしょ?っていう考え方だよね。
Moe:「したい?したくない?」って聞くものではなく、当たり前に進められる文化があるよね。
Labianna:付き合ってたらOKって思い込まれてるっていうのはあるよね。
Kyoko:性行為だけじゃなくても、「付き合ってたら手は繋ぐものでしょ」「付き合って1週間経ったからキスしていいでしょ?」とか、そういう片方の思い込みが「あ、ちょっとまだ」っていう方にプレッシャーをかけたりする。
Tatsuki:それも性的同意に入るの?
Kyoko:広い意味での性的同意には入ると思う。
Labianna:「3回目のデートだったらやるの当たり前」みたいな文化もあるよね。
Moe:あと場所もあるよね。お家デート行ったらやるの当たり前でしょみたいな。
Tatsuki:ノンノンノンですよ!
Labianna:日本で性的同意が広まらない原因として、昔から馴染んでる漫画とかメディアの影響も多いと思ってる。アニメで好きな子の入浴シーンを覗くとか、スカートめくりとか日常的に小さい頃から触れてきたよね。スカートめくりをしても、他の人から「〇〇くんって〇〇ちゃんのこと好きなんだね」って言われたり。小さい頃からそういう環境にいると、自分の好きな人にはそういうことしていいんだと思いがちじゃない?
Moe:それが派生してパートナーだからやるのは当たり前、聞かなくていいよねってなるんだろうね。
Labianna:そうそう。ドラマやマンガの影響もあるよね。壁ドンとか。
Kyoko:自分も相手も、好きなように扱っていいお人形じゃないのにね。
Labianna式 五感で導く“センシュアルコンセント”
Moe:じゃあ実際にパートナーに対してどうやって同意を取るのがいいのかな?
Labianna:最初やるときにそもそも聞かれることがないし、聞くこともあまりない。それをまず改めることが大事だと思っている。性的同意の一番大切なポイントは“対等な関係”かどうか。
Moe:そうだね。主導権がどちらかに握られていると、話し合いされないまま進められてしまうよね。
Labianna:「雰囲気でOKだと思った」とかが結構落とし穴だよね。そういうムードになっているときに「嫌だ」って言いづらいし、なかなか言えないことも考慮に入れなきゃいけない。性的同意って英語でセクシャルコンセントっていうんだけど、私が提唱しているのは「センシュアルコンセント」。ちょっとエロくてセクシー(センシュアル)な同意(コンセント)の取り方っていう造語なんだけど。
例えば、耳元で「チューしたいけどどうしたい?」って聞くだけでも全然違うじゃん?ムード良いなかで「ちょっと1回ストップ!私、(あなたの)お口に接吻させていただきたいのですが」とか絶対ないじゃん?(笑)「舐めたいんだけどそうゆうの好き?」とかちょっとセクシーに聞くだけでも全然違うと思う。
Kyoko:聞き方一つとってもいろいろな聞き方があるよね。
Labianna:「自分はこうしたい」っていう意思表示もあれば、「あなたはどうしたい?」っていう聞き方もあるし。いろんな聞き方があるから使い分けながら、スパイシーにセンシュアルに同意をとっていけたらいいんじゃないかな〜。
Tatsuki式 私はこうなっちゃってます!からのCheck & Ask!!
Tatsuki:私は自分から肌をすり合わせにいきながら、「したい」って言葉に出すかな。「自分はめっちゃ濡れてる」とか、自分の体の状態を伝えたうえで、相手の状態も確認して、どうかな?って相手に聞く。パートナーの身体の反応は興奮していたとしても、健康状態や疲労もあるなって感じるときもあるので、「私はこんな状態で興奮してるけど、身体のこともあるし明日朝早いし、睡眠とる?」とか聞くようにしている。彼に「No」と言われたからといって、私はあんまりショックにはならない。
Labianna:そうそう。身体の反応とやりたい・やりたくないって全く別ものだからね。
Tatsuki:相手がガン立ちで興奮はしていても、寝たい方が優先なのであればそっちを大事にしたい。その人にヘルシーに生きててほしいからね。そこで自分の性欲だけを押し付けてしまうと、ただの自分のエゴでしかない。だから、私はちゃんと同意を取ります!
Kyoko:それって全てのリレーションシップ、1回きりでも、セフレでも、パートナーでも、妊娠したい・したくない夫婦間でも同じで、お互いの健康とか心の状態はちゃんとケアして、気づかえるようになるべき。それって相手の尊重にも繋がる。
Kyoko式 これで恥ずかしくない!?️好きなスイーツに例えちゃって!2人だけの秘密ワード
Moe:Kyokoさんはパートナーと性的同意を取るときどうするの?
Kyoko:私と大親友がチョコミントが大好きだったことから、セックスをしてたっていうのを“チョコミンってた”って表現してたの。それをパートナーにも使って、「チョコミント食べたいなぁ」みたいにやりたい意思表示をしたりする。最近は「レモネード」を使ってるんだけどね。
Moe:かわいい〜!
Tatsuki:それはセックスしたいっていうワードを言うのが恥ずかしいってこと?
Kyoko:このコミュニケーションの良いところは、コンビニとか公共の場でも伝えられることなの。
Labianna:言いやすいよね。セックスとかエッチとかの言葉って言うのをためらうから、同意を取らなくなってしまうってあると思うの。「今日レモネード飲みたいんだけど、どう?」って言いやすいよね。
それで思い出したのがSMセックス。SMって一方的なプレイと思われがちだけど、SMの世界こそ性的同意ってすごく大切なの。2人のなかで、Safe Word(セーフワード)として決めている言葉が出たらストップ!っていうルールがあるの。この「レモネード」もSafe Wordと似ていて、同意が取りやすそうだなと思った。
Moe:あと「レモネード飲みたいけどどう?」って言って、「今日はちょっと気分じゃないかな」って言われても、ショック度合いが和らぎそう(笑)
Kyoko:日本って“いやよいやよも好きのうち”っていうけど、「本当にいや!やめて!」っていうよりパートナーだったら、「レモネード!(口の前でバッテンのジェスチャー)」の方が優しく、マイナスな雰囲気を出さずに言えるよね。
性的同意が取れないから愛されていないっていうのはノットイコール
Moe:嫌なとき、Noの断り方についてはどう?私は性格上、あまりNoって言えなくて相手に流されてしまうこともあるので。相手の気分を害さず断るコミュニケーションが知りたい。
Kyoko:友人の一人は「僕が今日ちょっとそういう気分じゃないって言ったとしても、あなたのことを嫌いになったわけじゃない」って相手に伝えてると言ってた。そうするとパートナーも安心してたって。
Tatsuki:丁寧なコミュニケーションだね。
Moe:Tatsukiさんって気分じゃないときあるの?(笑)
Tatsuki:一応ある(笑)めちゃくちゃ疲労困憊してるときとか、そういうときは空気読んで!って思っちゃう(笑)
Moe:普段のコミュニケーションとか信頼関係が蓄積されてるかどうかも大切だなと思う。Noって言われても、普段から相手のことを知れていれば、「疲れてるよね」とか「明日仕事早いもんね」とか想像できるからショックじゃないし。普段の関係って言ったらそれまでだけど、そういう普段の関係づくりは大切だなと感じた。
Labianna:私は断るときに、「すり替える」というのも一つのオプションだと思ってる。「今はそういうことやりたくないけど、添い寝したい」とか。めちゃくちゃムラムラでギンギンなときも、セックスは体力使うからね。
Tatsuki:そうそう。睡眠時間とか相手のウェイトを読み取ってあげたい。
Labianna:やりたいけど、自分にあまりウェイトをかけたくないときにそれを言うのも一つのスキルかなと。「今日はやりたいけど、主導権握って」とか。挿れられる側が必ずしも受動的でいないといけないなんてないし。
Moe:確かに。そこはパート分けみたいなコミュニケーションを取るのも方法としてはありだね。
Labianna:今日は手を繋ぎたいだけ、添い寝したいだけ、とか。挿入のセックスの代わりにやりたいことを伝える。
Moe:前提として、Noだからといって、相手のことを嫌いなわけではないじゃない?だからセックスじゃなくてもいいよねっていうコミュニケーションはもっと広まってほしいなと。
Labianna:そうそうNoだから嫌いってイコールじゃないよね。Noっていうのはこの行為に対してNoっていうだけだからね。
Tatsuki:(そもそも)あなた(視聴者の方、読者の方)に対してNoだったら一緒にいてくれないって思うよ。自分と会ってくれる時間がある、でもセックスはしない。それってむしろ自分の身体だけじゃなくて内面も見てくれてるから、私と一緒にいてくれるわけであって性的同意が取れないから愛されていないっていうのはノットイコールなのよ。
Moe:Noって言われても普段のコミュニケーションや信頼関係があるから落ち込まないし、自分を卑下しない。あと、性欲に関しては、自分でも満たすことができるしね。
Tatsuki:そうそう、私には電マがあるので(笑)
自分と一緒にいる人にとって自分が尊重されてる存在だと分かるために、パートナー間でも同意は大切
Moe:まだ日本では性的同意って何?って人が大半だと思うんだけど、なんでパートナーに性的同意を取ることが大切なのか。改めてどう思う?
Labianna:性的同意はティーカップを使って説明されることがあるんだけど、お茶を飲みたいか聞かれたとき、飲みたいときもあるし、お茶は好きだけど今はコーヒーが飲みたい気分の日もある。それと同じでセックスってパーソナルなものでもあるから、したい・したくない、どこまでしたいかとか、本当にそのときの気分によって違う。自分と一緒にいる人にとって自分が尊重されてる存在だと分かるために、パートナー間でも同意はすごく大切だと思う。
Moe:Noが相手を否定してるわけじゃないっていうのが大前提で、お茶飲みたくない気分のときもあれば、レモネードがすごく飲みたい気分のときもあるってことだもんね。
Tatsuki:そうだね、それが頭にあるとNoって言われても自分を卑下することはない。
Moe:相手が自分のことをちゃんと尊重してくれてる信頼関係があるからこそ、Noって言われても、自分を否定されてるわけではないと思える。そういう関係性づくりはすごく大事だなと気付けた。
Tatsuki:だから性的同意に限らず、普段から相手をもっと知るためのコミュニケーションをしっかり取りたい。
Moe:相手のことを知るってどんな関係においてもすごく大切だよね。毎回コンセントを取るってことって相手のことを知ることだと思った。こういう雰囲気になったら絶対やるでしょ、家では絶対やるでしょ、ではなく、ちゃんと相手を知るっていう意味でも同意を取る行為は大切だなと。
Tatsuki:例えば、私のパートナーは8時間睡眠が絶対必要で、すごく身体は反応してるけど、「エッチどうする?寝たい?どっちでもいいよ?」と聞くと「寝たい」って言われたことがあった。普段からコミュニケーションを取っているからこそ聞くことができる質問だし、だから「(相手の性質などを)知る」って大事だなと。
Kyok:知るうえでは、“知ったつもりにならない”っていう意識が大切だと思う。私たちはロボットじゃないから、ホルモンバランスとか職場とか、メンタルとフィジカルの波がすごいあると思う。機械学習で予測できるものではないよね。だから、決めつけないで聞くことは大切。
Moe:決めつけないって性的同意の一番根本な気がする。相手はこれでいいんでしょっていう決めつけが同意を取らないことに繋がると思うから。
Kyoko:さっきのお茶の話でもあるの。「先週、紅茶飲んだから今日も飲むでしょ?」っていう決めつけとか。「前はこうだったから今日もこう」じゃないよね。
Labianna:付き合っていても時間が経つと関係性って変わるじゃない?5年前の関係性と今の関係性って絶対違うし。それに調整してアップデートしていくのはすごく必要。
Tatsuki:うざくない程度に聞けってことやな!
Moe:聞き方について今日はいろいろ学べた。センシュアルに聞く方法や、2人だけのルールとか、そうやってパートナー同士で性的同意について話し合ってもらえたら関係性が深まる気がするし、お互いをもっと“知る”と、Noと言われても、傷ついたり、自分を卑下する必要もないよ、ってことがみんなのおかげで学べた!
今回は4人でパートナー間の性的同意の取り方について語った。少し刺激的な「センシュアルコンセント」や、キュートな2人だけの秘密ワードなど、性的同意の取り方はパートナー間で自由であっていい。
皆さんにも、パートナーだからといって決めつけることはせず、相手も自分もリスペクトする性的同意のあり方をオープンに話し合ってほしい。
Moxy Club
自分の心と身体の幸せのために、#性の話を当たり前にありのままに をテーマに活動するコミュニティ。メンバーは「性教育パフォーマンス」をテーマにドラァグパフォーマーとして活動する、Labianna。自由な発想を持ちながらマッサージ師やダンサー、バーテンダーなど幅広い顔を持つフリーランサーのTatsuki。フィリピンの貧困問題解決に向けたNPO法人を運営する、Moe。インスタライブやnoteを通して、少し刺激的でありながらも、等身大の切り口でセクシャルトピックを発信している。
#moxyclub #性の話を当たり前にありのままに #センシュアルコンセント