私たちの暮らす社会では、短い期間に多くの「新商品」が生み出されている。それは消費の中心となっている人たちが、基本的な衣食住には特に困ることがなく、何か目新しいものに楽しみを見出したい、そんな気持ちを持っているから。だから彼らの消費欲求に合わせ、メーカーが消費者の注目を集めることばかりに目を向けてしまうことがある。
そこで生まれたものには、たとえば棒付きアイス「ガリガリ君」を製造する赤城乳業が数年前に発売した「ナポリタン味」のアイスバー。それ以前の「コンポタージュ味」や「シチュー味」は世間の注目を集めただけでなく売り切れが続出した。だがナポリタン味にいたっては思うように売れず、なんと3億円もの赤字を出したという。これは立派な“失敗作”ではないだろうか。
同商品は所蔵されていないものの、似たようにヒットすることがなかった、むしろ「失敗した商品」ばかりを集めた博物館が今年、スウェーデンにオープンした。この一風変わった博物館から、「失敗」との付き合い方を少し考えてみたい。
“失敗作”ばかり収集する、世にも変わったミュージアム
今年スウェーデン南部のヘルシンボリにできた「Museum of Failure」(失敗博物館)には、世界から集めた100以上の失敗した商品、発明品が展示されている。それにはアップル社のニュートンや、グーグル社のグーグルグラスなど、大手メーカーが成功した商品を開発する前に生んだ“失敗作”も含まれている。ここではそのいくつかを紹介したい。
新商品のうち、“ヒット商品”はたった1〜2割。
失敗博物館では“失敗作”ばかり集められているわけだが、一般的に「ヒット商品」と呼ばれるものは、全体からみると果たしてどのくらいなのだろうか。キュレーターのサミュエル・ウェスト氏によると、全体の80〜90%は失敗する。また、日本経済新聞社が出した『ヒットの経営学』によると新製品がヒットする確率は18%。したがって新しいものを生み出したからといって、それが成功する確率は高くないのだ。(参照元:BBC World News, BOOK STAND)
だが、そのような多くの“失敗作”があったからこそ、「ヒット商品」や「本当に使える商品」を生み出すことができる。たとえばアップル社のニュートンは成功したとはいえないが、現在広く使われているiPhoneやiPad、iPodなどに技術が生かされている。
「失敗博物館」から学ぶ、「失敗を成功のもと」にする方法
臨床心理士であるサミュエル氏に言わせれば、人は失敗を反射的に隠してしまうことが少なくない。だからこそ、この失敗博物館を訪れた来場者に学んでほしいのは、失敗は成功するためになくてはならないと認め、その失敗からうまく学べるようになる必要があること。
失敗作をどこかに追いやるのではなく、そこから何かを学べるようにならなければならない。イノベーション産業で働いていない人には、グーグルやアップルのような大企業が失敗しているなら、一個人だって失敗してもいいということを知ってもらいたい。
(引用元:BBC World News)
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聞き飽きたフレーズかもしれないが、「失敗を放置すること」があなたを飛躍から遠ざけている。今年を振り返ったときに、たとえ自分の失敗を思い出したとしても、それを誰かの「成功のもと」として失敗博物館へ“寄贈”するように前向きにとらえ、来年をよりよい年にしようではないか。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。