ムスリム(イスラム教徒)と聞くと、どこの地域に住んでいる人を思い浮かべるだろうか?サウジアラビアなどアラブ諸国を思い浮かべる人は多いかもしれない。だが、アラブ諸国にいるムスリムは一部にすぎず、ムスリム人口が最も集中しているのは南〜東南アジア。そして世界一のムスリム人口を誇るのはインドネシアで、人口2億5000万人のうち9割がムスリムなのだ。(参照元:ハラル・ジャパン協会)
Be inspired!が日本で暮らすムスリムの若者たちに「ぶっちゃけ話」を聞くシリーズも3回目を迎えた。今回インタビューに答えてくれたのは、インドネシア出身で現在日本に住んで5年目のアマンダ。彼女も「私イスラム教徒だよ」と話すと、「そう見えないね」と言われるそうだ。
ー神様はムスリムにとってどんな存在ですか?
イスラムへの信仰は、私が自分で選択したものではなく、イスラムの環境に生まれていつの間にか信じるようになっていたもの。なので私からしたら神様を信じることは、空が青いくらいの感覚。だからすごく説明しづらいけど、自分が弱っているときになぜか心の中に神様がいるような感じ。神様はどんなときも見ていてくれて、不思議と苦しいときも悲しいときも安心させてくれる存在。
イスラムだけじゃなくてほかの宗教も、最終的に帰る場所として機能してることもあると思う。心を穏やかにしたいときに慣れている祈り方があれば落ち着く人もいるだろうし、神様は落ちるときの最後に持つところみたいな、そんな感じに思っている信者も少なくないと思うかな。
ー「イスラム=“テロリスト”」っていう偏見についてはどう思いますか?
それはしょうがないと思う、だってどっちも悪いと思うし。まずイスラムを利用して、勝手なことをしている“テロリスト”たちは許されないし、マジでやめてほしい。それからイスラムが何かを知ろうとしないで、先入観と偏った情報だけで判断するほうも悪いと思う。
個人的に差別を受けたことは、東京にいるからかもしれないけど、日本では今までない。みんな「ムスリムなの?へ〜」って言うだけ。
ーイスラムの教えを守らない人がいたら注意されるべきだと思いますか?
コーランのなかにもいろんな教えがあるけど、私の捉え方だと宗教はその人と神様の間のことだから、別に他人が指摘するべきものではないかな。私からすると、こう書いてあるからだめというより「イスラムではこう言われているから、これはしないほうがいいよ」っていう言い方のほうが平和的だと思う。そこで暴力が許されるのは違うかな。
なんでやっていけないかは教えてもらったはずだと思うし、それを踏まえて他の人の信仰をリスペクトするべきだと思う。教えを守らなかったら生きているときの罪が重ねられて、死んだときに天国か地獄のどちらに落とされるか判断されるっていうのはみんな知ってるはずだしね。
ーハラル*1食品を提供するレストランが日本には少ないですが、不便に感じますか?
ムスリムだからって気を使われることはあるけど、なかには気遣われたほうがやりにくい人もいるよ。
私は自分で調整するから今まで困ったことはない(豚料理があれば他の食べ物を食べるとか)。まあ日本にいてハラルを見つけたらラッキーで、「お!やったじゃん、ハラルが食べられる」って気持ちになるくらい。
私は日本で暮らしづらいって思ったことはないし、行きたいときにはモスクに行く。モスクも見かけたら「お、すごい」って思う。数は少なくてもモスクやハラルがあるのはすごくありがたい。
(*1)イスラムで合法なもの
ー「ムスリムのステレオタイプ」が「アラブの人のステレオタイプ」になっていることもあると思いますが、それについてはどう思いますか?
それはしょうがないよね、だってインドネシアよりだいたい国がでかいもん。ステレオタイプの多くは国に対するイメージからきているのだと思う、宗教じゃなくて。インドネシアのステレオタイプといえば、よく「バリ島なの?」って言われる。
イスラムは「厳格」とか「男尊女卑」って思うかもしれないけど、やっぱり、それぞれの国やそれぞれの人次第ですね。ムスリムだからどうって一概にいうのは難しいと思う。
今回のシリーズを通して、ムスリムの人たちの多様性や、日本で暮らすムスリムの若者たちが考えていることについて少し知ることができただろうか。ムスリムはアラブの国々だけではなく、世界各地に存在しており、そのなかにはさまざまな人がいるのだ。
誰かがムスリムだと聞くとどうしても、その人を珍しいものを見るように、相手にとって不快な視線を向けてしまう人もいるかもしれない。したがって、多様性の話は相手に対するリスペクトの話とつながってくる。
多様性を受け入れるということは、差別をしないというだけでなく、自分とバックグラウンドが異なる人たちに「リスペクトの態度」を示すこと。相手のバックグラウンドについて中途半端に質問するのは、誰に対しても失礼となるからだ。もし本当に理解したくて聞いているなら、それを態度に示すことが必要で、そうすれば彼女たちのように「ぶっちゃけ話」をしてくれることもあるかもしれない。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。