あなたの目の前にあるハンバーガーのお肉。もしかしたらそれ、「ビーフパテ」じゃなくて「ミミズパテ」なんですよ。
このように言われたら、おそらく多くの人が「まさか!都市伝説だろ」と笑い飛ばすだろう。しかし、ミミズを食べるという選択は都市伝説ではなくなりつつあるのだ。スウェーデンでは、国がミミズを食べることを推奨し始めている。
2016年5月、スウェーデンで驚くべき国策が発表された。それは「これからは牛や豚の肉ではなく、ミミズの肉を食べよう」というもの。この提案が為された背景にあるのは、地球への思いやりだ。(参照元:Ny Teknik)
現在、私たちが普段食べている「食肉」は自然環境に対して大きな負荷をかけている。まず、牛や豚の餌となる飼料を栽培するためには広大な農地が必要で、アメリカでは全農場の約半分が家畜の飼料を栽培するための耕作地として使われている。そして、栽培には大量の農薬が使われ、土壌汚染に繋がる。また、食肉解体場で出される廃棄物や家畜の排泄物による水質汚染、牛のげっぷによって大量のメタンガスが排出されていることも無視できない問題だ。地球温暖化の原因となるメタンガスの年間排出率のうち、およそ16%が家畜の牛によるものだと言われている。
私たちが肉を食べるごとに地球の環境が破壊されていると言っても過言ではない。このような問題を解決するために、スウェーデンでは「食肉をやめて菜食主義に転向しよう!」という動きが巻き起こっているのである。
しかし、人間が生きていくためには動物性たんぱく質を摂取することが必要不可欠であるとされており、私たちの生命維持に必要だと言われている一部のアミノ酸は、動物性たんぱく質からしか摂取することができないのだ。
そこでスウェーデンは、費用がかからず、広大な土地がなくても大量に養殖しやすいミミズを原料として、肉に代わる食品が作れないかと考えた。日本でも以前「ミミズハンバーガー」といった都市伝説が騒がれたことがあったが、今回は都市伝説ではない。国が推奨する「ミミズステーキ」や「ミミズハンバーグ」が登場するのも時間の問題なのだ。
国連イチオシの【美味しい虫】
実は昆虫食はFAO(国際連合食料農業機関)も推奨している。その背景にあるのは、今後予想される爆発的な人口増加、深刻な地球温暖化や食糧問題だ。
FAOによると、なんと世界では、すでに1900種類もの昆虫が食べられているそうなのだ。芋虫、アリ、バッタ、イナゴ、コオロギ、セミ、ヨコバイ、ウンカ、カイガラムシ、カメムシ、トンボ、ハエ……etc。他にもまだまだ美味しく食べることができる昆虫は存在する。種類によって栄養価にばらつきはあるものの、ビタミンや食物繊維、たんぱく質、ミネラルなどを豊富に含むすばらしい「食べ物」なのである。
昆虫食が普遍的な食文化となっていくためには、いくつかの問題をクリアする必要がある。まずは安全性。昆虫が持つ毒素や、衛生面、そして、昆虫を食べることによって引き起こされるアレルギー。人々の口に入る以上は、無視できない問題である。もうひとつの問題は加工にかかるコストである。昆虫をペースト状や粉末に加工する場合、現段階では多額の費用がかかってしまう。加工費用とのバランスが取れるように、昆虫食の市場を広げていくことが目標に掲げられている。
昆虫食はゲテモノ?
昆虫を食べるという食文化は、先進国では馴染みがないものだ。「野蛮な食文化」「ゲテモノ」などとメディアで特集されることもある。
しかし、昆虫食は果たして本当に野蛮でゲテモノなのだろうか?数十年前の日本では、昆虫は当たり前に食べられていた。農耕文化の広がりとともに、イナゴやハチなどが食用されていたのだ。特に、食糧が不足していた戦時中には貴重な栄養源として多くの人々に食べられていた。当時、小学生だった人によると「学校の生徒みんなでイナゴ取りをして、大きな鍋で茹でて食べた」というのだから、「昆虫を食べるなんて野蛮」という考え方は、現代人特有の偏見なのかもしれない。
あなたは何を食べて生きる?
日本人にとって「何を食べるか」という選択は「個人の自由」と捉えられることが多い。菜食主義や昆虫食は、特別に注目されるわけでも非難が集まるテーマでもない。しかしそれは、食糧問題や環境問題に対する日本人の意識の薄さの表れなのかもしれない。肉を食べるな、と言うわけではない。本文で述べた昆虫食の本質的な思想や、地球に与える負荷を知った上で、「肉を食べ続けるかどうか」を一考してみてもいいのかもしれない。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。