自分の目で見て感じて、自分で決めること。人と比べないこと。自分の好きなことに真面目であること。
「自分探しの旅」「自分らしさ」「自分の軸」…。
“じぶん”って何なんだ。いろんな人との出会いがある中で私はどんな生き方をしようか。
自分でブランドopnner(オプナー)を立ち上げ「タトゥーシールデザイナー」として活躍している岩谷香穂さんにインタビューを行った。
「好き」が原動力
岩谷香穂さんは現在、オンラインハンドメイトショップサイトBASEを拠点に活躍すタトゥーシールデザイナー。ファッションの一部として付け替えできるタトゥーシールを制作し販売している。
大学2年生になる直前に、1年でまあまあ楽しい毎日を過ごしてきて、でもこのままでいいのかと立ち止まって考えた時があったんです。それで、モノ作るの好きやったし、本を自分で制作することに興味があってZINEを作ってみようと思いました。
ものづくりが好きで、本を自分で出版することに興味を持っていた岩谷さんは、当時住んでいた滋賀県、東京間を月2回は往復して、MOUNT ZINE (マウントジン)のスクールに通い始めた。
ケント紙みたいな分厚い画用紙に、著作権切れの画像や浮世絵を使って、「自分やったらこの時にこれするやろうな」というものをトレーシングペーパーで重ねました。例えば、浮世絵の波で波乗りしたり、めっちゃ綺麗な空の写真が美味しそうやったから、そこにボトルを描いて「〇〇味」とか。一番やりたかったのが火星にも夕日があるっていうのを載せたくて、「自由だ丘」っていうタイトルで作りました。1冊1冊手作りだったんですけど紙選びがとにかく楽しくて、大変だったけどやり遂げる楽しさを感じました。
岩谷さんは、“何かモノを作りたい”という強い意欲で溢れた人だ。当時、ZINEの他にもフリーペーパーでデザインを担当したり、ペンで身体にイラストを書いたりしていた。ある時白い服に身体に描いたイラストのインクが染みてしまい、そのショックをきっかけにタトゥーシールを作りはじめ、サイズなども試行錯誤して制作したという。このときのアクシデントが今のタトゥービジネスの起源と言えるだろう。
ポートランドで見つけた理想の働き方
その後、ZINE作りを学んだMOUNT ZINEでの交流がきっかけとなり、ポートランドで行われるCREATIVE CAMP in PORTLANDの存在を知った。
CREATIVE CAMP in PORTLANDとは、“クリエイティビティを発揮して、未来を見つける”というテーマで自由大学が主催しているプログラムのことである。自由大学とは、誰でもいつからでも学ぶことができる開かれた学びの場だ。参加者は、PNCAとの共同プログラムで美術作品制作や、ポートランドらしいデザインを提供するクリエイティブエージェンシーのOMFGCOへの訪問などができる。
「人生を変えたい」と心に決めていた岩谷さんはこのプログラムに興味を持った。彼女の母親は高校の時から病気をしていて、当時は身体状況が不安定な状態が続いていた。そんな母や父は常にサポートしてくれていた。だから彼らに「人生変えた姿を見せれるチャンス」だと感じたそうだ。
行くと決めてからの1年間は、服も一着も買わないで資金を貯め続けたので、「やり遂げて人生変えるぞ!」という思いが半端じゃなかったです。
このプログラムを通して岩谷さんが見つけたのは、「自分で自分の生き方を決める」ポートランダー達の姿だった。
ポートランドでは5時になったらみんな仕事をやめて、さっきまで接客していた人が隣でビールを飲んでいたり、自分を大事にしている働き方を見て、「私が理想する働き方はこれかも」と思いました。
自分を見つめ直し、決断する。
帰国後は、就活の準備をしながらもタトゥーシールの制作をし続けた。しかし本格的に就活を始めようとした矢先に過労は頂点に達し、右耳が聞こえなくなってしまう。
「人前で話す面接も苦手やし、そこを超えてもそっちのルートは嫌やわ」って思ってタトゥーシールに生きようと決めました。
そして地道にタトゥーシールで店舗を出したりイベントなどの活動を続けていた彼女に、opnnerのタトゥーシールを取り扱ってもらえる渋谷の桜丘のお店のオープンの話が舞い降り、それを機に上京を決意。
(東京に上京するとき)その時点で家も決まっていなかったけど、「家ないくらいはええか」と思えたんです。
彼女はポートランドで見た多様な生き方などから「自分の好きなこと、やりたいことを尊重する」自分らしい生き方を考え、立ち止まっては、失敗を恐れず自分が素直にやりたいと思うことを尊重して生きてきたのだ。
opnnerでの働きがい
現在彼女のタトゥーシールは大人気で現在ほぼ売り切れ。作ったタトゥーシールを通して出会うお客さんとのつながりを感じ、そのやりがいを原動力にして制作を続けている。
ファンレターまでもらうようになって、「すごく勇気をもらってます」と書いてあるのを見ると毎回泣くし、もうやめられないと思う。そうやってちょっとでも誰かの概念を変えていると思うと「この仕事ってすごいな」と思うし、すごく嬉しい。
自分と向き合い、決断した道はまっすぐ進む。そういうやり方で道を切り開いてきた彼女の生き方は、かっこいい。
どこかにある“はず”の「自分」を探すのではなく、「自分が好きなもの」に対する自然な“感情”を大切に、素直に生きることが大切なのではないか。
自由大学の Portland CREATIVE CAMP
自由大学が主催するCREATIVE CAMPの詳細は以下。今年は7月30日から8月5日まで。締め切りは7月9日(日)。お申し込みはこちらから。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。