世界で最も多くの「ビール工場」と、全米で最も多くの「NPO」が存在する都市がどこだかわかるだろうか?
それはアメリカ西海岸に位置するオレゴン州の最大都市ポートランドだ。その町に現れた前代未聞の“利益0円のバー”とは一体なんなのだろうか?
「ビール」と「NPO」はポートランドの代名詞。
ヒップスターの聖地ポートランドに、2013年に誕生した“利益0円のバー”。その名も「オレゴンパブリックハウス(OREGON PUBLIC HOUSE)」。
このバーの発起人ライアン・サーリ氏は、自分が住む地域に社会貢献でき、どんなバックグラウンドを持っている人も別け隔てなく集まれるコミュニティをポートランドに作りたいと思っていた。
ポートランドには、タトゥーを入れて、ビール飲んで、社会にいいことをしている人が、すでにクサる程いる。
TEDxのスピーチで、そう彼が風刺しながら指摘するようにポートランドには数多くのビール工場とNPOが存在する。そんな町の代名詞である「ビール」と「NPO」という2つの要素をミックスし、「ビールを飲むことで、NPOをサポートできる飲み屋」はできないか?と考え、2009年から彼は動き始めたのだ。
事業に乗り出したのはいいものの「資金集め」には一番苦労したという。そこでライアンは多くの投資家たちに声をかけ、投資金と引き換えに「バーでビールが無料で飲める権利」を与えることで、資金調達に成功し、4年前越しでお店をオープンすることができたのだ。
利益0。前代未聞のノンプロフィットの飲み屋。
ビールを飲むことで、NPOをサポートできるようなシステム。これはお店の利益を100%地元のNPOに寄付することで実現させた。
オレゴンパブリックハウスでは店員がお客さんからフードやドリンクのオーダーを受けた後、支払い金額を「どこのNPOに寄付したいか」を聞くのだ。
寄付先は6団体から選ぶことができ、現在は幼児虐待から子供を守る保育園を運営する「VOA’s Family Relief Nursery」、食料を確保できないポートランドの人々のために畑を管理し、食料を提供する「Outgrowing Hunger」、地球の環境のために活動する「NW Earth Insitute」などから選ぶことができる。
地元のお客さんは自分で寄付先を選択することで、その団体がどういった取り組みをしているのか興味を持つきかっけにもなる。そして彼らは、お金を使えば使うだけ、地元のためになることに満足し、時に「何か自分にできることはないか」と尋ね、自らボランティアとして手伝う人もいるのだとか。
従業員も全員ボランティアで、「4時間」の労働に対し「ビール1杯とフード1品」を提供することで確保。事前にホームページから連絡をすれば誰でもボランティアとして働くことが可能だという。
オープンして4年経った今、オレゴンパブリックハウスはポートランドのNPOに総額は「約1350万円(約120000ドル)」も寄付しているのだ。(参照元:The Oregon Public House Facebook Page)
今っぽいお金の使い方。
「ビジネス」と「チャリティ」を巧みに融合させ、地域の恵まれない人々だけが豊かになる“利益0円のバー”を考案したライアン氏。彼は真面目で大変なイメージがまとわりつく社会貢献活動を、ハンバーガーを食べたり、ビールを飲んだりと、ただただ“楽しいこと”へ昇華させたのだ。
「ビールを飲めば、世界が変わる」。
その言葉通り、気張らない社会貢献ができる世界初の非営利飲み屋「オレゴンパブリックハウス」は、“今っぽいお金の使い方”を提案する良い例なのではないのだろうか。
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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。