賛否両論。米プレイボーイの誌面を飾った若きイスラム女性の“攻め”の生き様

2017.1.25

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「ムスリム(イスラム教徒)」と聞いて何を想像するだろうか。「ヒジャブ」と呼ばれる頭と首を覆うイスラムの伝統的なスカーフを被る女性たちや、一日に幾度かのお祈りをする姿、はたまた“イスラム過激派”かもしれない。残念ながら、約3000万人ものムスリム人口(参照元:Pew Research Center)を抱えるアメリカでも、ムスリムに対する理解はこれくらいなのだ。そんななか、あるムスリム女性がプレイボーイに載ることになった。

民放初のヒジャーブを被ったキャスターを目指して

 
ムスリムのアメリカ人でヒジャブを被るジャーナリストのノアール・タグーリ、22歳。学校には通学せず、家庭に拠点を置いて学習を行うホームスクーリングで高校の勉強をしながらローカル新聞で働き、16歳で大学に入学した彼女。ハフポストライブのレギュラーゲストを務めたのちハフポストブロガーを経て、ニュースショーのキャスターを目指していた。その理由は、ヒジャブを被った民放のキャスターがアメリカには存在しなかったからだ。

そして映画のような話だが、18歳になって数日後のこと、タグーリが大学での詩の朗読パフォーマンスを終えると、いきなり舞台に上がってきたCBSラジオのディレクターに「ジャーナリズムと報道の専攻なの?ワシントンでインターンしないか」と直接誘われ、彼女の新たなキャリアは始まった。(参照元:TEDx Talks

※動画が見られない方はこちら

ムスリム女性の問題提起のためプレイボーイ誌に

ヒジャブを被ったリポーターであることだけではなく、プレイボーイ誌に掲載されたことがタグーリを有名にした。あまり知られていないが、プレイボーイ誌は2016年3月からフルヌード写真の掲載をやめている。もちろん彼女はヌードを見せてはいないが、ヒジャブを被った女性の紙面への登場は賛否両論を巻き起こし「プレイボーイはポルノと同義で、それに載ることは宗教を時代に合わせることとは異なる」という批判も起こった。(参照元:The Muslim Vibe.com

さらに残念だったのは、プレイボーイのウェブサイトを閲覧することができないイスラム諸国でタグーリがヌードを見せたのではないかと噂が広まったこと。現在では、そのような国の人々に向けてプレイボーイでのフィーチャーを自身のウェブサイトから見られるようにしたりアラビア語訳されたページを掲載したりしている。(参照元:Noor Tagouri

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Photo by Noor Tagouri

実際のところ、タグーリがプレイボーイ誌に声をかけられたのは「私たちの考え方や着飾り方を変える、7人のカルチュアルルール・ブレイカー」に選ばれたからだった。彼女は、プレイボーイ誌のライターに何度も質問し、家族やメンターにも相談して考えた末にフィーチャーされることを決めたという。その選択には、プレイボーイ誌に載ることで「メディアで語られるムスリム女性像の偏りの問題」を、これまでは問題として考えたこともない層にも訴え、それと同時に長年に渡り女性を“性の対象物”として扱ってきたプレイボーイ誌の考え方自体に挑戦する目的があったのだ。(参照元:Noor Tagouri, CNN

ジャーナリストであることは「自分自身であること」

タグーリいわく、「メディアで語られるムスリム女性像」が偏ったものである事実は世間で知られており、ヒジャブを被った彼女にインタビューにされた人は、彼女なら苦しみを理解してくれると思うのか答えにくい内容でも答えてくれる人が多いそうだ。

また、イスラムを知る存在がニュースルームにいることで果たせる役割は大きいという。彼女ならアラビア語名の発音を正すだけでなく、イスラムについて当事者の視点から語ったり、ステレオタイプ化していないムスリム像を伝えたりできるからだ。(参照元:TEDx Talks)例えば、タグーリのようにアメリカなどイスラム教を国教としない国に暮らすムスリム女性の多くは「自分の意志」でヒジャブを身につけており、抑圧されているのではなく自分のやり方でイスラムを解釈しているだけなのだ。タグーリにとってはむしろ、ヒジャブは力を与えてくれるものだ。(参照元:Newsy, CNN, TEDx Talks

私だっていつも「コンバースにダメージジーンズ」で外を歩いているのだから!それが私のようなムスリムがしていること。(引用元:Noor Tagouri

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Photo by Noor Tagouri

「テレビでヒジャブを被ることは重要?」と聞かれたけど、自分のアイデンティティに正直になったり歩み寄ったりせずに、どうやって視聴者に同じことを求められるの?(引用元:Noor Tagouri

「ロールモデル」という存在の大切さ

アメリカに住むムスリム女性にとってタグーリはどんな存在だろうか。民放初のヒジャブを被ったリポーターは、ムスリムの女性にとって将来の可能性を広げてくれた大切なロールモデルだ。タグーリのように、自らロールモデルになろうとするマイノリティが増えることで、マイノリティの存在感や発言権は必ず高まる。

日本を例にとれば、日本は女性の国会議員の数が極めて少ない国の一つである。そのなかで国会議員を目指そうと当然のことのように考えられる女性がどれほどいるだろうか。“女性の議員”というロールモデルなしには、自分が議員になる姿を想像することさえ難しい。タグーリからのアドバイスは、自分の属するグループの人(例えば、女性や日本人など)が自分の目指す分野にどのくらいいるのか調べて目標を立てるやり方だ。(参照元:TEDx Talks)自分自身を「ジャーナリスト、当事者として語れるストーリーテラー、そしてリーダー」(参照元:Noor Tagouri)だと語る彼女の生き様を、私たちも参考にしたい。

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Photo by Noor Tagouri

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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