「昔からこうだから」はただの思考停止。思想のない業界に“一石を投じる”ジーパン革命|ALL YOURS木村のLIFE-SPECの作り方 #019

Text: Masashi Kimura

Photography: ALL YOURS unless otherwise stated.

2018.9.29

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こんにちは。ALL YOURSの木村昌史(きむら まさし)です。

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今回の連載で19回目。なんだかんだ3年近く連載させていただいていて、これをきっかけにいろいろな人たちに出会うことができました。

おかげさまで新店舗も順調で、日々さまざまなジャンルのおもしろい人たちが遊びに来てくれます。

そして何より嬉しいのが、僕らの活動をハブに、このお店で知り合って一緒に新しいことを始める人たちが出てきたこと…!

僕らはモノを売っている会社ですが、それ以上の魅力を感じてくれる人たちがいてくれて嬉しい!店舗でもおもしろい企画を毎週のように開催していますので、ぜひ遊びに来てください!

さて、話は変わりますが、今回は「伝統」のあるジーパンについて書いていきたいと思います。キーワードは相反する「変化」と「不変」です。

「伝統」という価値

昔からあるものって「伝統」を枕詞に語られますよね。例えば伝統工芸品と呼ばれる織物、刃物、ガラス細工などはその代表格です。今まで積み上げられてきた歴史、物語、技法。

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そういったものの長年の蓄積のもと、変わらないものがある。それはとてもいいことだと思う。僕はそういうものが好きだし、先人が生み出したそういう「不変」なプロダクトに出会うと畏敬の念すら感じさせられます。

歴史という財産は、どんなにお金を積んでも買えないもの。やり続けた者だけが持つことが許されるものです。

ここで僕が言いたいのは、「変化」が最良の選択肢ではないということです。

新しいものが全ていいわけではないし、新しいものは、まだ世間の荒波に揉まれていないから、荒削りで乱暴なものも多い。

つまり、長い年月親しまれてきたものは、実にさまざまな人たちに受け入れられる要素を持っているのです。

「伝統」工芸品を美しいと思ったりするのは、きっとこんな気持ちからでしょうね。

「伝統」の嘘

ただ、「不変」なものは得てして硬直化しやすく、変わっていく時代や生活様式にだんだん適応できなくなり、ニーズが減り、次世代の担い手へ継承していくのが難しくなります。

これは別にプロダクトに限った話ではなく、制度やサービス、テクノロジーなど全般にいえることです。

「これって、なんでそうなっているんですか?」

僕はモノゴトの成り立ちを知ることが大好きなので、このセリフを方々で言いまくっています。それがなぜ行われるようになったのか? このプロダクトはなぜこういう仕組みなのか?そういうことが知りたくて仕方がないんです。これは僕の病気です。

で、この質問への答えで明確な理由が返ってくる場合、そのモノゴトは長い年月をかけて考え尽くされたきた結果「不変」であることがわかります。でも、「昔から決まっているから」という答えも案外多い。

「昔から決まっている…?」

明確な理由のもと「不変」である場合、それは不朽の名作を生むことにもつながりますが、「昔から決まっている」という状態はただの思考停止です。理由なき「伝統」の継承は時代錯誤を引き起こし、その結果人が離れ、機能不全を引き起こす。僕はそう思います。

よく「若者の〇〇離れ」と言いますが、それは思考停止な状態が続けられたことに対する、若い世代の違和感の表れなんじゃないかと個人的には思っています。

僕は明確な理由のもと「不変」なものには敬意を表しますが、思考停止がゆえに「不変」なものは積極的に変えていきます。それがオールユアーズ流だとも思っています。

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進化するジーパン——“パンジー”

上で「変化」とか「不変」なんてことをつらつら書いてきたのは、僕らが今チャレンジしているクラウドファンディングが「進化するジーパン」をテーマにしているからです。

僕らはそれを “PANSY(パンジー)” と呼んでいます。今までのジーパンの真逆をいくジーパンだからパンジーです。はい、ここ笑うところですよー!

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そもそも「今までのジーパンって何?」って方に向けて、簡単に説明させていただきます。

ジーパンはアメリカで約150年前に作られた、当時のもっとも機能的な服でした。主に重労働に励む労働者に向けて耐久性に重きが置かれており、“硬くて厚い”丈夫なワークウェアだったのです。

また、1950年代から70年代にかけては、不良に扮した当時のムービースターの影響もあり、反逆、反体制、自由のシンボルにもなりました。ジーパンは時代に変革を起こした歴史の象徴でもあるのです。

そして1970年代から90年代には、アメリカのパンクロッカーたちがジーパンを履いて全世界の一世を風靡したことにより、世界中でジーパンが親しまれるようになりました。

時は経ち現代。いつのまにかジーパンは様式美にとらわれてしまいました。古いものを再現したり、“ヴィンテージっぽい色落ち”という、経年変化の競争に陥ったりしてしまいました。ステッチのディテール、リベットのディテール、シルエット…本当に細かいディテール…とても小さな“差別化”しかそこにはありません。

名だたるジーパンブランドのすべてが、この価値観のなかに存在しているのです。最高のソリューションだったはずのジーパンはいつしか、懐古主義に陥った。僕はそう思いました。

その価値観は否定しないし、素晴らしいカルチャーであることは間違いないし、僕もインディゴに染められたその美しさには魅了されます。

でも思い出してください。そもそもジーパンは何のために生まれたのかということを。

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もともとのジーパンは色落ちを楽しむものではなく、作業着であり、機能服であり、生きるためのユニフォームだったはずです。そう、ジーパンの本質は、“細部にこだわったディティール”でもないし“色落ち”でもない。

人々をストレスから解放すること。

大きな夢を見て精一杯働く、名もなき労働者たちのためのユニフォームであったはずです。

それがジーパンの本質であるとオールユアーズは考えます。そして、それこそが、「インターネット時代のワークウェア」を志向するオールユアーズの命題です。

「ジーパンを発明した人が、今、新しいパンツを作ったら?」

そんな問いにワクワクしませんか?

リーバイスの創業者リーバイ・ストラウスや、彼と取引をしていた仕立て屋のヤコブ・デイビスが今、新しい時代のワークウェアを作ったら、現代のワークスタイルに合わせた、まったく新しい発想でジーパンを再発明した、パンジーのようなパンツになるでしょう。

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「現代のカウンターカルチャーの担い手にこそパンジーを!」

さて現在、アパレルの業界では、ジーパンが売れなくなったといわれて久しい状況が続いています。理由は、”硬くて厚い”ために重くて履きづらいからです。

ジーパン本来の“硬くて厚い”から丈夫という昔ながらのよさが、現代では着用しなくなる理由のひとつになってしまったわけです。さらにいうと、ジーパン特有の経年変化。つまり色落ちも実は苦手だという人も、最近店頭でお話ししていると多いのです。

実際に、ジーパンを最後に買ったのはいつだったか、思い出せないという人も結構いるはず(若い世代は買ったことがないという人もいるのでは?)。

ジーパン本来のインディゴ染料の経年変化の美しさは僕も好きですし、僕らはそんな人のために「HIGH KICK JEANS(ハイ キック ジーンズ)」と名前の製品も用意しています。

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「HIGH KICK JEANS(ハイ キック ジーンズ)」

パンジーもハイキックジーンズも、現代を生きる人たちのためにアップデートされた製品で、柔らかく、動きやすく、ストレスがない。なおかつ耐久性があり、長い間着用できるように作っています。

少し料金はいただきますが、ダメージの補修やシルエットの変更など、限りなくニーズに合わせたカスタマイズも可能にしています。つまり、履きつぶすたびに新しいモデルに買い換えてもらうというよりも、なるべく長い時間それを着用できるように設計しているつもりです。

そのプロセスのなかで、もし不具合があれば教えてください。即改善して、よりよいサービスにしていきたいと思います。

繰り返しますが、「変化」は最良の選択肢ではありません。

でも、逆説的だがだからこそ、僕は「変化」しようとしている人にパンジーを履いてほしいと思っています。

インターネットを使えば、誰もが声をあげられる、そんな時代になりました。現状に満足せず、常によりよいあり方を求めて可能性を追求する。現代のカウンターカルチャーを作り出している人たち。そんな人たちに着てほしいのです。

パンジーはスタイルとして定義されるジーパンとは違う形をしているけれど、そんなスピリットを込めて開発したプロダクトです。興味がある方はぜひ一度、プロジェクトページを見てみてほしいと思います。

先に、「昔から決まっていることだから」と、こんな答えが返ってくるモノゴトを、オールユアーズは変えていくと言いました。

変えるべきは、ジーパンだけでしょうか。

「変化」すべきモノゴトは、あなたのそばにもあるかもしれません。

本質を見誤らずに、「今何を変えるべきか?」を考えてみましょう。小さなことでもいいんです。そこにはあなたが、あなたにしか変えられないものがあるかもしれません。

ALL YOURS CO.,LTDライフ・スペック伝道師

Masashi Kimura(木村 昌史)

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Photo by Jun Hirayama

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服を選ぶとき、何を基準に選んでいますか。
天候や環境を考えて服を選ぼうとすると、着られる服が制限されてしまう。
そんな経験ありませんか。
そこで、私たちDEEPER’S WEARは考えました。
服本来のあるべき姿とは、時代・ライフスタイル・天候・年齢・地理など、
人ぞれぞれの環境や日常に順応することではないだろうかと。
あなたの持っている服は、どれくらいあなたに順応していますか。
服にしばられず、服を着ることを自由にする。
人を服から“解放”し、服を人へ“開放”する。
このDEEPER‘S WEARの理念を可能にするのが、
日常生活(LIFE)で服に求められる機能(SPEC)を追求した日常着(WEAR)、
「LIFE-SPEC WEAR」なのです。
DEEPER’S WEARはALL YOURSが取り扱うブランドです。

※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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