SNS上で「#(ハッシュタグ)」をつけて自分の意見を主張したり人々に議論をするよう呼びかけたりするハッシュタグ・アクティビズム。
インターネットにアクセスできればほぼ誰でも参加できるので、これまでメインストリームのメディアで声を上げるのが難しかったマイノリティの人々が世界中から集まり、団結できる重要なアクティビスムの場となってきている。
今回29回目となるハッシュタグアクティビズムシリーズ『「丼」じゃなくて「#」で読み解く、現代社会』ではアメリカでもこれまでなかなか語られてくることのなかったマイノリティ、ブラックムスリムに注目したい。
ブラックムスリムとはその名の通りブラック(アフリカンアメリカン)でムスリム(イスラム教徒)の人のことを指す。言うまでもなくアメリカは奴隷制度から、現在の警察の過度な暴力にいたるまで、ブラックへの差別の根は深い。一方、トランプ大統領の「イスラム教徒のアメリカ入国制限」からもわかるようにムスリムに対する排他的な態度も近頃大変な問題となっている。つまりブラックムスリムとはダブルマイノリティー、マイノリティの中のマイノリティなのだ。
The Muslim Anti-Racism Collaborative (ムスリムに対する差別反対共同体)が2014年に発足したハッシュタグアクティビズムは「#BeingBlackAndMuslim 」。ブラックでありムスリムであることがこの社会の中でどれだけ大変か、そしてそれは改善されるべきだというメッセージを共有するプラットフォームを作った。
そして2017年4月20日に、ブラックムスリムでありフォトグラファー/ビジュアルアーティストであるBobby Rogers(ボビー・ロジャース)がこのハッシュタグアクティビズムにインスパイアされた美しく力強いポートレートプロジェクトを発表し、注目を集めた。その名も『#BeingBlackAndMuslim』。
#ブラックムスリムでいることとは、アメリカで最大人口を誇るムスリムなのに、誰も話を聞いてくれないこと。
#ブラックムスリムでいることとは、ブラックではないムスリムに、コーランの一節を暗唱して、自分がムスリムであることを証明させられるということ。
#ブラックムスリムでいることとは、ブラックとしてもムスリムとしても議論に入れてもらえないことがあるのに、常にブラックムスリムとしてしか見られないこと。
#ブラックムスリムでいることとは、社会が両立は無理だと決めつけ、常に人種か宗教のどちらかを選ばせられること。
#ブラックムスリムでいることとは、ブラックの政治的なアイデンティティと宗教を考慮しない限り、「アメリカンムスリム」としては存在できないということ。
#ブラックムスリムでいることとは、「ニガー」と呼ばれなければ「テロリスト」と呼ばれるということ。
淡い緑色を背景にしたブラックムスリムの人々の美しい写真。横には彼らが「#ブラックムスリムでいることとは、…」と各々の気持ちを語っている。彼らの言葉からブラックコミュニティにもムスリムコミュニティにも受け入れられない悲惨な状況が伝わってくる。
社会は人々をすぐにカテゴライズしたがる。そしてそこに属さないものを拒絶してしまうケースも少なくない。ブラックでもムスリムでもない人の中で無知な人は彼らを人種と宗教を理由に拒絶し、ムスリムの人々はブラックムスリムを「ブラック」だからと拒絶し、ブラックは「ムスリム」だからだと拒絶する。彼らが居場所を見つけるのは非常に難しくなってしまうのだろう。
今回のハッシュタグアクティビズム「#BeingBlackAndMuslim」をきっかけに少しでも多くの人がその事実を知ることから始めていくべきではないだろうか。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。