スーパーの野菜の棚を前にして、欲しい野菜の山からつい1番見た目が綺麗なものを手にとってしまってはいないだろうか。なんとなく綺麗な方がいい。味も鮮度にも関係はないけれど、私たちが何気なくとるその行動。
ドイツのあるスーパーではそれができない。なぜなら、そこには他のスーパーでは置かれることのない、形やサイズが売り物にならないようなものしか置いていないからだ。
これが、未来のあるべきスーパーの形なのかもしれない。
食べられるのに「見た目」が理由で捨てられる食料
毎年、世界の生産量の3分の1にあたる約13億トンの食料が廃棄されている。(参照元:消費者庁)
衝撃の量だが、問題は「もったいない」ことだけではない。食料を育てるのに使われた水、燃料、土地、そして労働などあらゆる資源が無駄になっているのだ。食料を育てるところから、消費者のもとに届くまでの工程で33億トン以上の二酸化炭素が排出されているという現状もある。(参照元:NATIONAL GIOGRAPHIC)
食料廃棄の原因は家庭からでたもの、飲食店で余ったものなど多様であるが、そのなかに形やサイズなどの「見た目」を理由に出荷されることなく農家で捨てられている野菜や果物の存在がある。
そんな食料をレスキューすべく、2017年に食料保存のための活動をしているラファエルとマーティン、そして起業家アレクサンダーによって設立されたのがベルリンのソーシャル・インパクト・スタートアップ、『SirPlus(サープラス)』だ。
「ブサイクな野菜や果物」だけを置くスーパー
オンライン販売も行うドイツ・ベルリンにあるスーパーSirPlusでは食料廃棄を減らすため、形やサイズを理由に他のスーパーの棚には並ぶことのない食料を救い出し、販売している。
フード・レスキュー(捨てられる運命の食料を救い出すこと)をメインストリームにしたいんだ。そうすることで、食料廃棄を大幅に減らしたい。全ての食料には同じ価値があって、命の輪の一部であるべきなんだ。消費者と、生産者と非営利団体に、食料廃棄と生産過多への解決方法を示したい。地球上の限られた資源を守りたい。
彼らは地域の卸売業者や小売業者、農家から形やサイズに問題がある食料を仕入れている。それらを安く買い取り、安く売ることで、サステイナビリティや資源保護、社会への責任を、関わっている人々みんなで果たしている。SirPlusの商品が普通のスーパーの商品より最高で70%も安いことを考えれば、消費者にも悪い話ではない。
環境や食料廃棄に関しての取り組みで先進的なドイツでも、スーパーの野菜や果物すべてがレスキューされたものなのは初めての試み。クラウドファンディングが成功し設立したこの企業は現在では80社以上のパートナーがいる。
サステイナビリティはアイデアを広めることから始まるんです。一人ひとりが意識的に消費すること…たとえば、食料保存の現状について知るとか、匂いや味など自分の感覚を使って食料の状態を見極めることとか、食べられなくなって捨てられてしまう前に食料をシェアするとか…食料への感謝への気持ちを忘れずに家族や友人と意識を高めることが大事なんです。
(引用元:Alt tRiFFt neu)
「なんとなくしている行動」は、「意識するだけ」で変えられる
なんとなく綺麗な野菜や果物を選んでいるのなら、それは意識するだけで変えられる。賞味期限が消れている食べ物を考えずに捨てるのではなく、自分の感覚で判断すれば無駄にしなくても済むかもしれない。
SirPlusは何よりそんな「意識」を広め、そしてお店やインターネット販売で、安く食料が買えるだけでなく地球にも優しい消費を簡単にしてくれている。地球の資源が限られていれば、無駄をたくさん出す私たちの消費の未来も限られている。そのことを考えると、SirPlusのようなスーパーが、未来のスーパーのモデルなのだと言えるだろう。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。