ヒューマンアカデミー株式会社が全国20~30代の働く男女332名を対象に「ビジネスパーソンの成長に関する意識調査」を実施した。
「子どもの頃と比べて、成長を実感できていないと感じますか?」という問いに対して、半数以上、約2人に1人が成長を実感できていない、という結果が出た。
失敗と成長のつながり
「失敗は成功のもと」という至言がある。「失敗」から学び、「成長」し、「成功」するというプロセスは、古くから私たちの生活に馴染んでいることなのだろう。しかし、どうだろう。失敗が許されない社会だったら、私たちは「成長」できるのだろうか。
約1年前に話題になった記事「世界一『チャレンジしない』日本の20代」においても指摘されたように、日本の20代のクリエイティブ・冒険志向は、アメリカの若者と比べて低くなっている。逆にいえば、安定志向な日本の20代。起業する際にも、「安定した職業や経験を積んでから起業」という場合が多いという。これらは、失敗を回避させるための、知恵か。それとも、不況下における人間の根源的な欲求か。あるいは、日本が失敗を許さぬ社会であるがゆえの、結果か。「既卒」や履歴書の空白を極度に気にする社会で、失敗は許されないと新卒一括採用特急に流されるように乗る。しかし、他人によって敷かれたレールの果てで、私たちは「成長」し続けられるのか。
新卒一括採用の終焉
最近、新卒一括採用という「伝統」が見直されようとしている。脳科学者の茂木健一郎氏は、世耕経済産業大臣による新卒一括採用の見直し表明に対して、以下のように述べた。
年齢(生年月日)や経歴(卒業見込み)で、企業への就業の機会を一律に制限する新卒一括採用のあり方は、そもそも、雇用の機会均等の精神から見て、違法、ないしは違法の疑いが濃厚だという当たり前の事実を、確認したい。
国際的に見れば、日本の新卒一括採用が合法的という理解は難しいだろう。
〔中略〕ネックになっているのは、日本独特の「履歴書に穴があく」という奇妙な強迫観念であろう。
あたかも、いつも「所属」という首輪をつけていないと安心できない飼い犬の群れのような集団心理は、もはや時代おくれ。
履歴書の空白、大いに結構。
そもそも、組織に所属することが人間の存在証明ではない。
新卒一括採用特急に乗れば、「失敗」しない可能性が高まることだろう。無論、「失敗」ではないはずの「就活」の先にも、過酷な労働などによって人生を破壊され、最も大切な命を奪われる可能性も否定できない。個人によって、成長の定義も様々だろう。しかし、もしも、「新卒一括採用」という電車に乗った結果、成長意欲を持続できず、このことが、冒頭の「成長できていない」と感じる理由のひとつになっているとしたら、どうだろう。ただ、アンケートの回答者が20~30代の働く男女332名という少人数のため、実際に2人に1人が「成長できていない」と確信を持って判断することは難しい。それでもやはり、就活に「失敗」して、「新卒一括採用」という電車を降り、自分なりの成長も追い求められるような社会は、道半ば。「失敗」のできる寛容な社会、成長を感じられる社会になっていくことを期待したい。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。