自分が生き残る、文化を守る、勉強する。新型コロナ危機で打撃を受けるアーティスト5人に聞いた胸の内|Stay home but Not aloneプロジェクト #001

Text & Photography: (THE)LIVING ROOM STUDIO

2020.4.27

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この記事は、アートコレクティブ「(THE)LIVING ROOM STUDIO」とのコラボレーション記事です。

新型ウイルスの蔓延により、日本の文化、芸能は危機に陥っている。

毎日のように流れてくる閉館、閉店のツイートやアーティストたちの苦しみ。しかし同時に#SaveOurSpaceや #SaveTheCinemaなど、この危機に対して当事者自らが行動を起こすなど新たなムーヴメントを作っている。

Stay home but Not aloneもその一つだ。

主にフリーランスのアーティストと数十種類のTシャツの製作をし、売り上げをアーティストの支援に使うというプロジェクトだ。本プロジェクトに参加するアーティストたちにメールインタビューを行い、この現状をどう打破しているのか(できているのか)アーティストたちの胸の内を聞いた。

#001:西村理佐、kotsu、枝優花、Ryohei Obama(小浜龍平)、maco marets

西村理佐、写真/映像作家

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ーお名前、肩書き、Instagramアカウントを教えてください。

西村理佐、写真/映像作家、@184184

ー新型コロナウイルスの発症が各国で報道された当初の心境はいかがでしたか?

当初はちんぷんかんぷんでした。SARSの騒動は約18年前くらいで記憶もそんなになく、死の危険性を持つウイルスの世界的蔓延状態が生涯の中で経験するとは想像もしていなかったです。でも3.11の時に北海道から上京するタイミングで放射能が東京まで影響しているという噂からの目に見えないものへの恐怖と激しい不安はとても似ていました。

ーコロナウイルスの感染が広がっていますが、生活や製作に影響は出ましたか?

実際に撮影の仕事も中止、延期で先の収入がない。現在というより今後の生活には大きく影響してきます。元々インドアの私でも息苦しくなるくらいの圧迫を感じます。ただ家で生活するのと自粛を余儀なくされている生活では明らかな差。圧倒的にストレスが溜まるしノイローゼになったり、鬱病になる人も少なくないと思います。家族に会えなかったり会いたい人に会えない。ましてや親や祖父母には会う時間は年齢的にもう限られているのに心苦しいです。今、国から出されている指示はあくまで自主規制ですから自分の選択によって人の命を脅かす危険性、その逆もそうで脅かされる生活は懲り懲りですね。

製作は逆に頭フル回転で限られた条件で何を生めるかに今は勢いづいていますが、これにも現段階には限界がありますね。例えば、ほとんどの人が遠隔や生中継、通信販売というアイディアで穴埋めしようとしますが、これは臨時対応だからこそ活きる製作やパフォーマンスであって本来の姿ではないので。とはいえたった1,2ヶ月で既に文化の箱は潰れてきています。この流れで不況になって文化的活動や形の本来の姿も変わる気がします。

ーそれをふまえ、日本の新型コロナウイルスに対する政策をどう思いますか?

どの国も賞賛されている政策もありますが不満もあるはずです。我々が他の国と比べるのはもうどうしようもない。自分の国を守る、の意味について考えて欲しかったですけど選挙に行こうと声を大にするしかないと思います。日本は何をやるにも遅すぎる。問題になっているマスクを配るかどうかの話合いをしている間にマスクの販売生産が復活して全く無意味なものになりますよ。早々にロックダウンして早期復活を目指して欲しかったですね。正直諸々呆れていますが、その中でも今進めてくれてる事もあると信じて自粛するのみです。

ー各地で日本のカルチャーを守るため様々な動きが起きていますが、あなたはそれをどう思いますか?

#SaveOurSpaceや#SaveTheCinemaのように必死に声をあげてくれた方々の力を借りて賛同し、主張する。勿論素晴らしい事です。でもそれを受け取ってくれなくては、限界がある。私達にはこの現状の中での自粛や規制に助成もないとなると自分たちだけで文化を守れる程の経済を生み出せない。私達のいう文化を必要がないという人も勿論いるでしょう。自分たちが選んだただの職業だと。でも自宅で自粛している人々にとって精神的の支えになり、多くの人を救っているのは事実です。それを国の財産として動いてくれない事には守れません。だから私達の限界を見届けないで、共に限界まで守って欲しいです。文化に限った話ではなく、すべて平等に言える事です。

ー今回のプロジェクトの作品についてお聞かせください(作品の意図や思い)

今回のプロジェクトはStay home but Not alone。こうなる少し前に撮影で夜に山梨に行った時に見上げると満点の星空でした。外に出るのが増えるはずだったあたたかい春を迎えて私達は家にいなくてはなりません。誰かとの予定も飛んだかもしれないし、この先の予定も飛ぶかもしてないけど、たまに星を見るためだけに窓を開け空を見上げて下さい。空は変わらないので。

ー1人のアーティストとして、あなたが今できることはなんだと思いますか?

私自身が今できる事は本質変わりなく続けることだと思いました。あとは変なSNSに囚われずに上質なインプットをし続けること。
あと私は写真と映像のだけのアーティストに限りたくないので、この騒動でカウンセリングができるようになりたいと強く思いました。なので臨床心理士の資格を取る為に大学院入試の勉強を始めたいですね。

ー収束したら、何がしたいですか?

北海道に帰って祖父母2組を抱きしめたいです。

西村理佐

写真/映像作家

Instagram

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kotsu、DJ

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ーお名前、肩書き、Instagramアカウントを教えてください。

Kotsu 、DJ・グラフィックデザイン、 @kotsu0830

ー新型コロナウイルスの発症が各国で報道された当初の心境はいかがでしたか?

ここまで急速に拡大するとは思いませんでしたが、クラブやライブハウスはクラスターが生まれやすい場所だということはすぐに理解できたので、嫌な予感はしていました。

ーコロナウイルスの感染が広がっていますが、生活や製作に影響は出ましたか?

まず現場でのDJは無くなっちゃいましたね。僕はDJを仕事にもしているので生活への直接的なダメージは大きいです。今は皆さんが室内に居ることを前提としたコンテンツを企画したり製作したりしています。実際にデジタルZINE”Crossbreed”を先日リリースしました。

ーそれをふまえ、日本の新型コロナウイルスに対する政策をどう思いますか?

行動の遅さとトンチンカンな内容にイライラと不安が募るばかりです。僕は、このまま批判せずにのうのうと死にたくないので声をあげます。民主主義国家なんだからこうした批判を行うことに全くおかしさを感じません。本当は自助的な活動に専念したいのに公助が無いため心を痛めながらの日々です。

ー各地で日本のカルチャーを守るため様々な動きが起きていますが、あなたはそれをどう思いますか?

素晴らしいと思います。例えばクラウドファンディング。各クラブやスペースによる多様なリターン内容を見ていると、その場所が強みとしてきたことがわかる気がします。ただ残酷にも、どこを支援してどこを支援しないかがはっきりしてしまっている気もします。もう少しマクロな視点で全体的に支援できるようなプランがあるといいなとは思います。ただ一つだけはっきり言えるのは、この素晴らしい文化に根ざした我々の情熱は絶対に消えることはありません。

ー今回のプロジェクトの作品についてお聞かせください(作品の意図や思い)

Y&iというワードをグラフィックに落とし込みました。Yは”You”の頭文字です。”自己への集中的な対峙は他者との関わりを強く再認識させる”と公式には書かせていただいていますが、逆に「他者が在ることで自分の所在が分かる」ということにも置き換えられます。それはDJという活動を通して大きく学んで来たことです。そして、その感覚は普遍的なものでもある気がしています。こういう状況だからこそ、自分と他人の境界線がはっきり浮かび上がってくるし、その気づきは今後の生き方を考える上で非常に大切なことなのではないかなと思っています。ちなみに、”I”を小文字にして、曲線があるフォントのものにすることで遠目に見ると”You”の文字が浮かび上がるようなデザインにしました。

ー1人のアーティストとして、あなたが今できることはなんだと思いますか?

DJやグラフィックデザイナーという側面もありますが、パーティーを幾度もやってきた身として出来ることは、様々な人や現象を僕を経由して世に発信することです。それはアーティストというよりも編集者的な感覚に近いかなと思っています。スピード感を重視しながら現場で今までやってきたことを、本質を忘れずにオンラインというフォーマットに移行するまでです。あとは、僕自身が生き残ることです。

ー収束したら、何がしたいですか?

みんなにありがとうって言いたいのと、勿論パーティーかな。

kotsu

DJ

Instagram

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枝優花、映画監督・写真家

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ーお名前、肩書き、Instagramアカウントを教えてください。

枝優花、映画監督・写真家、@edmm32

ー新型コロナウイルスの発症が各国で報道された当初の心境はいかがでしたか?

実感が湧かないまま一体何が起こっているのかわからないまま、ポッカリと穴のあ
いた恐怖を見ているかのような感覚。オリンピックやるの?マジ?って感じで。

ーコロナウイルスの感染が広がっていますが、生活や製作に影響は出ましたか?

撮影が延期になり、5月以降の撮影も未定でしてスケジュールはぐちゃぐちゃですね。家に籠もってひたすら作業しています。

ーそれをふまえ、日本の新型コロナウイルスに対する政策をどう思いますか?

東日本大震災の時と大きく違うのは、最低なところから復興へ向かうという明確な目標がないこと。徐々に最悪な結末へ向かっていっているような恐怖を日々実感し生きている不安。それをどうにか皆で乗り越えようとしているけれど、毎日心を折られるような感覚。なぜ?が多い。そして自分たちの声が全く届いていない。怒りや呆れ、悲しみもありますが、何より私たちが社会や政治と完全に向き合い、声を上げ続けないといつか滅びると思います。

ー各地で日本のカルチャーを守るため様々な動きが起きていますが、あなたはそれをどう思いますか?

国に頼りたい気持ちは山々なんですが、現状期待できない。今は私たちが私たちの文化をまず声を上げて守らないといけないと、皆が手を繋いで前に進もうとしているのだと思います。私もそこに加担しますし、そして未来を作るためには今のままではいけないと自覚するところからはじめないと。

ー今回のプロジェクトの作品についてお聞かせください(作品の意図や思い)

クライアントのいない制作が久々だったのと、ストレスもすごかったので、愛犬のコラージュにしました。2年ほど前から愛犬を日々インスタのストーリーに載せまくっていたら、ファンが結構増えてしまい(嬉しい)。うちの犬はやたら顔のつぶれたボストンテリアなんですけど、愛嬌のあるブサカワで。だから家で着るハッピーな服に丁度いいかなと。めちゃくちゃ美人な犬は外用の服でいいけど、うちのは部屋着が心地良い。愛の溢れたデザインになったと思います。愛を胸におうちでゴロゴロしてほしい。

ー1人のアーティストとして、あなたが今できることはなんだと思いますか?

「SAVE the CINEMA」という映画館・映画文化を盛り上げる活動に参加しています。映画監督たち有志が集まり、皆で署名活動やクラウドファンディング、それ以降の映画文化を支えるムーブを作ろうと動いています。これが今できる最大なことだと。
そして、今現在の社会の動きをじっくり捉え、これからの作品にどう活かしていくかを考えること。これが大きな課題です。今までの自分じゃダメ。この時代に生きてるからこそ、やるべきこと・やれることが無数にあると思うのです。自分にフィットするものを探し、理解しようと今は模索しています。

ー収束したら何がしたいですか?

友達に会いたい。まず挨拶にジャンピングハグして、一緒に回転寿司食べに行って、映画館に映画を観に行く。ディズニーランドにも行きたいね。
ってこういうと根明ぽいな…いや、延期になってる撮影を早くしたいかな。ずっとお預け食らってるんで。

枝優花

映画監督/写真家

Instagram

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Ryohei Obama(小浜龍平)、写真家

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ーお名前、肩書き、Instagram アカウントを教えてください。

Ryohei Obama(小浜龍平)、写真家、obama.jp

ー新型コロナウイルスの発症が各国で報道された当初の心境はいかがでしたか?

正直、当初はどこか他人事のように感じ、そこまで危機感を感じませんでした。危機感や不安を感じたのは、ダイヤモンド・プリンセス号のニュースが報道されたころからです。

ーコロナウイルスの感染が広まっていますが、生活や製作に影響は出ましたか?

はい。2月後半からイべントやライブの延期・中止が次々と発表され、そこからいろいろな撮影が延期・中止となっていきました。夏前にLAかNYに写真を撮りに行く予定でしたが、もちろんそれも延期です。

ーそれをふまえ、日本の新型コロナウイルスに対する政策をどう思いますか?

国の対応に対して、前例のない状況なので何が正解なのかは分かりませんし、全員が納得できる答えはないと思いますが、正直すべてに対して対応が遅いし中途半端なのではないかなと思ってしまいます。現在の日本の法律では他の国のような厳しい外出制限はできないということにやはり違和感を感じずにはいられませんし、外出自粛を要請するしかないのならば、なおさらもっとはやめの対応が必要だったのではないかと思ってしまいます。また、外出自粛をしたくても生活のために出来ない人もたくさんいると思いますし、自分を含め多くの人はこの状況がまだまだ続くのであれば生活も厳しくなっていくと思うので、全員が少しで安心して外出自粛ができるような保証が必要なのではないかと感じます。もちろん経済をストップさせないことは大事ですが、 この中途半端な状況を続けていく方が後々経済にも負担が大きいと思いますし、とにかく命にはかえられませんから。

ー各地で日本のカルチャーを守るため様々な動きが起きていますが、あなたはそれをどう思いますか?

SNSには良い面も悪い面もあると思いますが、ライブハウスやミニシアターを含め、日本のカルチャーを守るための様々な動きがすばやく、たくさんの人に伝えられるということに関しては、 SNS は本当に便利だと改めて感じました。一人一人の小さな支援が大切だと思うので、少しの支援でも積極的に参加していきたいと思います。

ー今回のプロジェクトの作品についてお聞かせください(作品の意図や思い)

今回選んだ写真はLAで撮影したもので、家にいながらでも空をみて気分転換をして欲しいという思いで選ばせていただきました。また、このモノクロ写真は多重露光で撮影し、太陽光を多方面から入れることで、“どこか普通とは違う”空を光と影で表現したものなので、そのことを意識して写真を見ていただけると嬉しいです。

ー1人のアーティストとして、あなたが今できることはなんだと思いますか?

自分1人では大きな貢献にはならないかもしれませんが、自分の写真をオンラインサイトで販売し、売り上げの一部を寄付したいなと考えてます。よかったらご協力お願い致します。また、さまざまなアーティストの方々が行動を起こしているので、今回のStay home but Not aloneのプロジェクトのように、もし自分にもできることがあれば積極的に協力したいと思います。

ー収束したら、何がしたいですか?

負い目無く自由に外に出て、いろいろな場所に行き、写真を撮りたいです。負い目無く自由に外出すらできない状況になってみると、好きな時に好きな国へ行けるということはもちろん、普段の日常を過ごせることが当たり前では無く、本当に幸せなことだと実感しました。

Ryohei obama(小浜龍平)

写真家

Instagram

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maco marets、Rapper

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ーお名前、肩書き、Instagramアカウントを教えてください。

maco marets (まこまれっつ)、Rapper、@bua_macomarets

ー新型コロナウイルスの発症が各国で報道された当初の心境はいかがでしたか?

まさにここまで一気に状況が変わるとは思っていませんでした。出かけるときにマスクしておけばいいかな、とかそれくらいの認識だった。

ーコロナウイルスの感染が広がっていますが、生活や製作に影響は出ましたか?

生活には大きな影響がありました。現状だと3月下旬〜5月まで、イベント出演予定がすべてがキャンセルになっています。毎月の収入源はイベントのギャランティが主ですので、金銭的な余裕のない状況です。一方で制作に関しては、元から在宅での作業も多かったためそこまで変化はありません。スタジオでのレコーディングができないので、一部クオリティの限界などは感じていますが……。

ーそれをふまえ、日本の新型コロナウイルスに対する政策をどう思いますか?

わたしが身を置く音楽業界に関していえば、早い段階からイベントの自粛が要請されていました。しかし、国からの補償がでるわけではない。ライブハウスやクラブといった箱、イベンター、アーティスト、それぞれが苦渋の思いで中止を決定し、負債を背負っている現実があります。音楽に限らずですが、文化的取り組みに対する認識があまりにも低い。そう感じました。またコロナ全体への対策についても、目先の利権を守ることばかりに執着して後手後手にまわっているような印象を受けます。

ー各地で日本のカルチャーを守るため様々な動きが起きていますが、あなたはそれをどう思いますか?

現状をポジティヴなものに変えるためにも、自分が賛同できる取り組みには積極的に参加したいと考えています。#SaveOurSpace のような大規模なものもそうですし、各ライブハウスの存続支援などにもできる限り署名やお金をまわしたい。

ー今回のプロジェクトの作品についてお聞かせください(作品の意図や思い)

ディレクターのMasaki Uedaさんに相談して、拙作『KINŌ』から「Amazing Season」という楽曲のMVカットを使用させてもらいました。この困難を乗り越えた先にきたる「素晴らしい季節」が楽しみになるような、さわやかな青がよかった。この楽曲は「誰もいない部屋で wasting time」というように、ひとり部屋に閉じこもっておのれと向き合うようなニュアンスも含んでいて、そういう意味でも現状と合致している気がしています。ぜひ楽曲と、MVと併せてご覧いただきたいです。

ー1人のアーティストとして、あなたが今できることはなんだと思いますか?

ひとつは、先ほども書いたように自分が賛同できる取り組みに参加すること。そしてもうひとつはやはり、作品をつくり続けることかなと思います。誰のためになるかはわかりませんが、自分自身のためにそうするべきと考えます。

ー収束したら、何がしたいですか?

パーティ!

maco marets

Rapper

Instagram

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