日本は人口が1億人こえているにも関わらず、殺人事件発生率が非常に低く、世界的にみても最もといっていいほど治安がいい。一方で、自分で自分の命を絶つ「自殺」については深刻な状況だ。
通勤ラッシュ時に「人身事故」で電車が遅れることには驚かなくなった。迷惑だという人さえいる。テレビで報道される10代のいじめによる自殺のニュースも珍しくはない。日本では、人に殺されるよりも、自分を殺す人のほうが多いのだ。
今もどこかで誰かが自殺しているかもしれない
世界第3位。2012年から2014年、日本の10万人あたりの自殺率を世界水準に置いてみた結果だ。(参照元:OECD Suicide Rates)以来減少傾向にはあり、ピークは去ったとされているが、未だ世界平均以上を維持している。それはこちらの自殺者数にあらわれている。
2万1,897人。これは2016年に自殺した人の数だ。(参照元:厚生労働省)30分に1人以上が自殺していることになる。紛争でも、飢餓でもない。でもこれだけの人が命を落としているのだ。
53万5,000人。2016年の調査で1年以内に自殺未遂を経験した人の数だ。(参照元:日本財団自殺意識調査2016)。1分に1人、今もどこかで誰かが自分の意志で人生を終わりにしようとしているかもしれない。
全体の自殺率は減少傾向にある。それでも日本の自殺は深刻であるといえるのは「若者の自殺」に焦点を当ててみるとわかる。
「若者の自殺率」は日本が世界1位で15~24歳の自殺率は90年代以降ずっと上昇している。(参照元:President Online)2016年に20歳未満での自殺者は520人もいた。(参照元:厚生労働省)
さらに、15歳〜39歳の死亡原因第1位は「自殺」である。(参照元:厚生労働省自殺対策白書)2015年には15歳〜29歳の死亡者数の49%の死因は自殺だった。つまり、15歳〜29歳で亡くなったうちの約2人に1人は自殺をしたということになる。(参照元:厚生労働省自殺対策白書,人口動態統計)
見えない殺人鬼は誰だ
自殺が起きている原因は1つではない。自殺を図る人それぞれにそれぞれの理由がある。主な理由は進路への悩み、仕事環境、理想と現実にギャップがあるなどがあげられている。しかし、いずれの悩みもほとんどの人が抱えた経験があるのではないだろうか。では、悩みを抱えた際に自殺に至る人とそうでない人の違いは何なのか?それは「孤独感」である。自殺を考える人の多くが「家族に居場所がない」「人間同士は理解や共感ができない」「他者に頼ることができない」と思っているのだ。
さらに、本気で死にたいと思っても相談しなかった人が 73.9% 、自殺未遂をしたときに相談しなかった人は51.1%にものぼる。(参照元:日本財団自殺意識調査2016)
人をもっと頼っていい
原因は「人に頼れない」ところにあるのではないか。「影で努力する」「人に涙を見せない」といったフレーズから、日本社会では人に弱さを見せないことを美徳とする傾向があることがわかる。それは日本のいいところでもある。しかし、この傾向によって「人を頼る」と「弱さを見せない」のいい加減の線引きができなくなっているのではないか。結果的に、本当に助けが必要な時に、助けを求められない。自分が思っているよりも、人を頼ってもいいのではないか。そして人に頼ってもいい社会をつくっていくべきなのではないか。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。