近年「オフィスからイスが消えている」のをご存知だろうか?
以前も紹介したように“「座りすぎ」は健康に悪く、死をもたらす”といわれており、2002年にアメリカ大統領の諮問委員会によって“セデンタリー・デス・シンドローム」と名付けられた。一説には座りすぎは「喫煙と同等の害”があるともいわれているのだ。「座りすぎて死ぬ」という最悪の状況を回避するためのただ一つの方法。それは「座る時間を減らすこと」つまり「立つ時間を増やすこと」しかないのだとか。そしてこのことが判明して以来、一日中座る仕事をする企業のオフィスに異変が起きている。
座りすぎない企業「Google」「Facebook」。
近年、GoogleやFacebookなどの企業のオフィスには「スタンディング・デスク」を導入している。また、オランダのデザインスタジオRAAAF社は「座ることができず、立って何かに寄りかかりながら働く」という実験的なオフィスまでも作った。またオフィスから椅子が消え「働く場所」が変化するなかで、「働く時間」も変わろうとしているのだとか?
「働きすぎて死ぬ」国、日本。
早稲田大学の小倉一哉氏によると、日本の正社員と呼ばれる人たちは、「年間2000時間」ほど働いており、ドイツやフランスなどと比べると400時間も長いそうだ。計算すると1日当たり8時間40分ほど働いているという。(参照元:WASEDA ONLINE)
また総務省「労働力調査」によると、働き盛りの20歳代後半から40歳代前半の労働者の約20%は、週に60時間以上働いているという統計もあり、これは朝9時出勤し、昼の休憩を1時間取ったとすれば、終業時刻の18時を過ぎて、22時まで毎日働いているということになる。残業による過労死の問題もまだまだ多く日本で起こっており、月227時間の残業で「過労自殺」した青年の事件も記憶に新しい。日本の過酷な長時間労働の実態を横目に、スウェーデンをはじめとする北欧の企業では、今「1日6時間労働制」への移行がトレンドになりつつある。
1日8時間から6時間の「働かなすぎ」労働へ
1日8時間労働というシステムは、実は皆が思うほど効率的ではないというのが率直な感想。1つの仕事を集中して8時間続けるというのは大きな挑戦でしかない。(引用元:Fast Company)
スウェーデンの首都ストックホルムに本社があるアプリ開発企業FilimundusのLinus Feldt CEOは、そう語る。同社では平日週40時間労働から週30時間労働へ移行した結果、社員の集中力アップや意欲の向上、ストレス軽減による社内の雰囲気の改善という効果が表われたそうだ。現在スウェーデンでは、いま国全体で1日6時間労働制への移行を進められるかを真剣に検討しようという動きまで出ており、公営の老人ホームで働く看護師に、1日6時間労働制へシフトする実地調査を開始している。
変化するのか?日本の働き方。
日本では1日8時間、それ以上の時間働き、残業が普通になっている企業が多い状況とは「正反対の傾向」が北欧では起こっている。「ワークライフバランス」という言葉が普及しつつある日本で、“長く働いて残業代をもらうよりも、1日6時間働いて、給料が減って私生活の時間が増えたほうがいい。”と考える人も少なくないかもしれない。今後のオフィスから椅子消えたり、労働時間が1日6時間に短くなったり…近い未来、日本にもそんな働き方が訪れるのであろうか。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。