「『ありがとう』と言いたくなるスーツを作りたい」。児童労働を知り、安売りする服作りに疑問を持った彼が開発した「作り手全員の顔が見えるスーツ」とは|FABRIC TOKYOの『手前味噌ではございますが』【PR】

Text: YUUKI HONDA

Photography: Shunsuke Imai unless otherwise stated.

2019.2.12

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日本には400万社以上の企業が存在する。そこには、さまざまな思いを抱えながら日々働いている何千万もの人がいる。そんな莫大な数の企業の中から、「社会にいい影響を与える企業」に焦点を当て、個人のストーリーを通して、その企業のありかたに迫るシリーズ『手前味噌ではございますが』。このシリーズでは、そこで働く人が思わず「手前味噌ではございますが…」と、心の底から情熱を持って話せるような企業のみを紹介していく。

一個人として社会にどう貢献できるのか、どう消費をするべきなのか(どんな企業をサポートするのか)、どう働くか、そしてどう生きるか。もしかしたらそんな普遍的な質問への答えのヒントになるかもしれない。

第三回となる今回は、その人らしさにフィットするオーダーメイドスーツブランド、「FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)」の峯村昇吾(みねむら しょうご)さんに話を伺った。

峯村さんのストーリーを通して、FABRIC TOKYOを知る。

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峯村昇吾さん

「誰かの犠牲の上に成り立つ社会なんておかしい」

サイズだけでなく、その人の生き方や価値観にフィットするスーツを届けるという意味の、“Fit Your Life”(フィット ユア ライフ)を合言葉にするFABRIC TOKYO。彼らが今春発売予定の、“作り手全員の顔が見えるスーツ”こと「FALKLAND to TOKYO(フォークランド トゥ トウキョウ)」。

D2C*1のビジネスモデルを展開するFABRIC TOKYOは、これまでにも生産地/生産者の可視化に努めてきた。しかし今回は海を超え、アルゼンチン・フォークランド諸島の生産者の顔が見えるところにまでこだわったという。徹底した姿勢で、この「FALKLAND to TOKYO」を開発したのだ。

(*1)「Direct to Consumer」の略語。生産における中間マージンを大幅に省き、販売においても小売店に卸さず自社ECサイトをメイン行うことで、従来のモデルで販売されている商品よりも高品質なものを同額もしくはそれ以下の価格で直接消費者に届ける仕組み。

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そんなスーツの開発を指揮した峯村さんは、今年で在籍4年目。ポジションは“クリエイティブ統括/商品・素材開発スペシャリスト”。ざっくり言うと、FABRIC TOKYOというブランドを作り上げるブレインだ。

彼はこれまでに紳士服業界では日本初となるフェアトレードのシャツのほか、紡績・織・染色加工を一貫生産する世界でも珍しい製法で作られた生地を使った『水の都』、日本が世界に誇る岡山デニムで作られた『OKAYAMA DENIM』、NASAが採用する技術を使って作られた『SEASONS』など、ユニークな製品を世に送り出してきた。

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これらの開発の元になったのは、新卒で入社した繊維商社に所属していた時の経験値だそうで、それがいま役に立っていると峯村さんは言う。しかし同時に、9年務めた商社という立場でファッション業界に関わることへの葛藤も、当時の彼は感じていたそうだ。

商社時代に上海に駐在したんですが、そこで児童労働やひどい環境での服作りの現実を目の当たりにしました。それ以降、「誰かの犠牲の上に成り立つ社会なんておかしい」「ぼくは誰も幸せにできていないんじゃないか?」と考えるようになって。いいものは作れるのにブランディングが苦手で、結果安売りしてしまい先細る日本のものづくりの弱点も見えてきて、年々なんとかしないとヤバイなって。それで、こうした現状を変えられると思ったFABRIC TOKYOに入ったんです。

服が作られて消費者の手に届くまでのルートを川に例えると、川上に当たる各種の工場・メーカーで服が作られて、中間にある商社・問屋を経て、川下のアパレルメーカーに届き店舗で売られて、私たちの手に届くようになっている。

峯村さん曰く、「最終的に服を売って利益を生み出すアパレルメーカーが主導権を握る」ことになる。このため、アパレルメーカーの信用を得たい上流の面々は、彼らの要望に沿った服を作らざるを得ないという事態に陥りがちになる。この点について峯村さんはこう話す。

まあ健全じゃないですよね。だから業界を変えられる立場にあるぼくたちは、生産と販売の両側面に置いて無駄を無くしたD2Cの仕組みを使って、工場にも消費者にも適正な価格で価値を提供しようと努めています。同時に透明性も確保して、服を作る時の情報開示を大切にしています。それは今回作ったFALKLAND to TOKYOの開発にも繋がっていますね。

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「自分らしさを謳うファッションブランドなら、生産者を含めてみんなを幸せする服を作らないと説得力がないので」。これまで、生産者と自分たちの双方が納得する服作りの構造を作るために腐心してきた峯村さんは、FALKLAND to TOKYOの開発に協力してくれた、とある商社について話してくれた。

FALKLAND to TOKYOを作る上で、ある繊維商社に協力してもらったんですが、ぼくたちは透明性を重視しているので、彼らには本来門外不出の情報を公開してもらうことになっています。そんなリスクを背負ってもらって一緒に仕事をするためには、共感してもらうのが一番大事です。だからとにかくワクワクするビジョンを時間をかけてしっかり伝えて、結果、彼らは共感してくれた。彼らがいなかったら、今回の話はなかったと思います。

「ビジネスの話もちゃんとしました」というように、馴れ合いではなく本気の協同が、FALKLAND to TOKYOを生み出した。誰かの犠牲の上に成り立たない健全なスーツは、こうした影の努力もあって日の目を見ることになったのだ。

着るときに「ありがとう」と言いたくなる服

今回峯村さんに話しを伺った上で印象的な言葉に、「服を着るときに『ありがとう』って言ったことありますか?」という問いかけがある。ちなみに筆者はなかった。あなたはどうだろうか。

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ぼくは着るときに「ありがとう」と言いたくなるスーツを作りたいんです。衣食住と言いますが、食には「いただきます」と「ごちそうさま」。住には「行ってきます」と「ただいま」というコミュニケーションがありますよね。でも服にはない。作った人が見えづらいんでしょうね。でも確かにその服を作った人がいて、そこにはストーリーがあるんです。それが見えれば愛着も湧いて、服はその時、ただの無機質なものではなくなると思うんです。

着るときに感謝の気持ちを伝えたくなる服。それはどんなものだろう。いろんな意見があれど、筆者は峯村さんの、「それはやっぱり作った人の姿が見える服だと思うんです」という言葉に共感する。

繰り返しになるが、あなたはどうだろうか。

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彼はまた、「ぼくはポジティブになれるスーツを作りたいんです」と切り出し、こう続けた。

スーツってできれば着たくないものじゃないですか。リクルートスーツへのネガティブなイメージや、くたびれたスーツ姿のおじさんとか、まああんまり楽しそうではない(笑)。服は内面の一番外側だと言われますけど、その人らしさをスーツでポジティブに表現できたらいいですよね。

戦後の混迷期でものがなく、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫が三種の神器と言われていた時代の豊かさは、“ものをたくさん持つこと”にあった。いまは逆にものが溢れる時代。ものを持つこと自体が豊かだとは、必ずしも言えなくなっている。

そんな時代に何を豊かさだと感じるか。その答えは人の数だけ多様化した。それら無数にある豊かさの答えの中には、「『ありがとう』と言いたくなる服」や「自分らしさを表現できる服」を持つこと、という声が、確かにあると思う。

もっとあっていいスーツの選択肢

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スーツを買うときの選択肢が意外と少ないことに気づいたのはいつ頃だったろう。少なくとも筆者の場合は、大手量販店ぐらいしか選択肢がなかった。何十万円もするブランド物は手が出ないし、老舗オーダーメイドスーツ店は入りづらい。

初めてスーツを買いに行ったのは10代後半。理由は冠婚葬祭で必要になったから。向かったのは某大手量販店で、新しい服を買うというのに、あんまりワクワクしなかったことをよく覚えている。

学生の頃、働くときにスーツは絶対着たくないって思ってました。あ、いまはそうじゃないですよ(笑)。まあこれって割とみんな思っていることだと思うんですけど、だからこそスーツって伸びしろがたくさんあるんですよね。できれば着たくないものを毎日着たいものに変える。難しいことですが、それってかなりワクワクするチャレンジですよね。

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できれば着たくないスーツを毎日着たいスーツに変えることができれば、それはもう革命と呼んで差し支えないだろう。これが実現できれば、FABRIC TOKYOは紳士服の一大勢力として名乗りを挙げることになるはずだ。

しかもFABRIC TOKYOでそれを実現させるのであれば、誰もが幸せになれる仕組みを保持しつつの挑戦になる。もしかしたら、ファッション業界で一番の難題かもしれない。

そんな難題を前に、「ワクワクするチャレンジ」と笑顔で言った峯村さん。その顔には、「ぼくは誰も幸せにできていないんじゃないか?」と苦悩したいつかの面影はなかった。

FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)

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