オーストラリアで今月、「同性婚」の是非を問う国民投票が行われ、賛成が過半数を占めた。他方、現在の日本では同性パートナーシップ制度が存在する地域があるものの、「同性婚」は認められていないため、法的に同性の親を持つことはできない。
しかし、セクシュアルマイノリティは同性愛者だけではないし、オープンにしていなくても自分の親がセクシュアルマイノリティである可能性はある。では、そんな親たちが子どもにカミングアウトしたら、子どもにはどのような影響が及ぶのだろうか。
それは学者やアクティビスト、養子縁組の審判を行なう裁判官たちが長年考えてきた「親がセクシュアルマイノリティだと、子どもにどう影響するのか」という問いと同じだ。
ニューヨークのブルックリンを拠点にニューヨーク・タイムズやWIREDなどで活躍するフォトグラファーのGabriela Herman(ガブリエラ・ハーマン)は、そんな問いの答えを出すべく、セクシュアルマイノリティの親を持つ子どものフォトプロジェクト『The Kids: The Children of LGBTQ Parents』(ザ・キッズ:LGBTQの親を持つ子どもたち)を発表した。
彼女自身も高校生のときに実の母親がカミングアウトしたという経験を持ち、なんとその母親はマサチューセッツ州で初めて同性婚した人の1人なのだという。本記事では、そんな彼女のプロジェクトから抜粋した写真とエピソードを紹介する。
幼稚園に臨時で来ていた先生に私には父親がいると思われて、ケンカしたことがある。父の日のカードを作らなきゃいけなかったんだけど、「私に父さんはいない」って言って譲らなかった。でも彼女は信じてくれなかった。
隠そうとしたつもりはないんだけど、「母さんはセクシュアルマイノリティなんだ」って友だちに言ったことはない。そのおかげか、母さんも彼女のパートナーもすごくいい人だから、友だちは2人の性的指向よりも人柄に目を向けてくれた。
あれは80年代のこと。私の家族はリベラルだったにもかかわらず、(アメリカでは性転換がまだタブーの時代だったからか)性転換するっていうのはすごく変わったことに思えた…家族が分裂するような感じだった…あとで知ったけど性転換した彼女(父さん)は私たち家族といるときには完全に自分らしくいられなかったみたい…
彼女たち(両親)がどれほど素晴らしいのかだんだんわかってきて、私にのしかかっていたプレッシャーが消えていった。それで彼女たちを守らなきゃって思うようになった。
今回紹介したような、戸惑いながらも親を否定することはなかったというケースばかりではないのかもしれないが、親という多くの人にとって身近な存在だからこそ、性自認や性的指向ではなく人として暖かく接することができるのではないだろうか。
個人レベルのエピソードを共有していくことが、多くの人にとって性自認や性的指向などの多様性を身近に感じられるようにし、偏見をなくすことにもつながっていくのだろう。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。