子どもの服を選ぶ時、なぜだか、「ピンクのフリフリ」はちょっと嫌だった。筆者の子どもは、とりあえず病院では「女の子」って言われたけど、本当にそうかな?そんな思いもどこかにあってのことだった。
だから必然的に子どもの服は、黒とか紺とかグレーばかりになった。
しかし、そうすると、大抵男の子だと思われて、「なんだかなぁ」という気持ちになることも少なくなかった。
幼い彼女/彼は発せられるものが少ないから、どうしてもアイデンティティが服に依存してしまうのだ。ピンクっぽい服なら女の子、ブルーっぽいと男の子。でも、もしそうじゃなかったら?
「子どもの可能性は無限大」、性別は?
子どもの将来を考えるとき、多くの親がどんな分野で活躍するんだろう?、どんな職業につくんだろう?と、果てしない可能性にワクワクする。でもその「無限大」の未来は、多くの場合、性別で制限されているのだ。
気づいたら男の子は車や電車、野球が好きになって、女の子はキラキラ光る宝石や着せ替え人形、おままごとが好きになる。
そんなふうに性別はくっきり二分できるものとは限らないことを、私たちは知識として知っているけど、気づくと生まれて数秒後に医師に告げられた解剖学的な性別を子どもに押し付けてたりする。もちろん筆者もそんな親の一人だ。
当たり前のように、他人が誰かの性別を決めてしまう、その現実に一石を投じる言葉がある。それが、Theyby(ゼイビー)だ。
Theybyとは、「They(He/彼ともShe/彼女にもアイデンティティを見出さない性的マイノリティの人に使う三人称単数)」と「Baby(赤ちゃん)」を組み合わせた造語で、性自認前の乳幼児を対象にした呼称だ。このコンセプトに共感した親たちは、あえて、子どもに性を与えないで育児を行なっているそう。
Theybyの実践方法として、子どもの名前を中性的なものにしたり、彼らについて話すときに「They」を使ったりする方法がある。そして、最も象徴的な事例がカナダで生まれた「性別不明」の赤ちゃん、Searyl(シーリル)ちゃんの例だ。
Searylちゃんの親であるKori Doty(コーリ・ドーティ)さんは、自身が性を自認していない「ノンバイナリー」であることから、Searylちゃん本人が性を自認するまでは性決定すべきでないと主張し、それが認められ、世界で初めて、Unknown(性別不明)を表す「U」という文字が保険証に記載された。
本当に子どもの可能性を無限大にするために、性という固定概念から解放する。Theybyは子どもの未来をより広く自由にする可能性に満ちている。
しかし、名前や、性別記載について変える、というのは、かなり手のかかる作業になる。そこで、気軽にTheybyを実践する方法として、洋服を変えるというのはどうだろう?
未来をもっと自由にする、ジェンダーニュートラルなキッズアパレルブランド
ジェンダーニュートラルな育児を手助けしてくれるファッションコレクションやブランドがこれまでにいくつか出ている。
例えば、大手アパレルメーカーのGAP社の傘下にあるバナナ・リパブリックは2015年にジェンダーニュートラルなベビー服のカプセルコレクション、「Banana Republic Mini」を販売した。
また、アメリカのキッズアパレルブランドJessy & Jackでは、全ての服がジェンダーニュートラルに作られているという。男の子も女の子も、そうじゃなくても着られる“ハンサムピンク”のように、色のイメージを取り払うことで「すべての色をすべての子どものものにすること」を目指すそうだ。
こうした企業や親たちの取り組みによって、すべての色がすべての子どものものになったら、なんだか、世界の色彩が豊かになるような気持ちになる。
子どもたちに本当の「無限大な夢」を与えるために
私たちは、つい、見えるものばかりにとらわれてしまうけれど、実際は、見えてるものだけが真実ではない。見ることのできない秘められた可能性に少しでも枝葉を伸ばすため、まずは性別という固定概念を取り去ってみよう。
Theybyの取り組みは子どもの可能性を広げるだけでなく、カナダのKoriさんのように、与えられた性と自認する性の違いに対する葛藤から子どもたちを解放することもできる。
気負わずに、まずは洋服から、変えてみよう。
※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。